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"「孤児の貧乏女」と捨てた妻の本当の正体" 第9話

に倒れ込んだ由が、すがるように拓也のズボンの裾を掴む。しかし、拓也はそのを蹴りばすように振り払った。

「ふざけるな! 誰が横領犯の棒女なんかと結婚するもんか! おみたいなクズのせいで、俺の完璧ながめちゃくちゃだ!」

フロアので、醜く責任を擦り付けい、互いを汚く罵倒しう拓也と由。さっきまでの「勝ち組」の余裕など、もはや見るもなかった。

私はそのあまりにも見苦しい様を、氷のような目で見ろしていた。

「本当に見苦しいわね。でも、問題はまだ終わっていないわよ」

私のたい声が響くと、揉みいになりかけていたきがピタリと止まった。

「拓也、あなたが由に騙されていたというのは、半分だけ正解よ」

「え……?」

私が柴田に目配せをすると、初老の執事は静かに頷き、再びいた。

「拓也様。由様が横領した額は、総額で約億円にのぼります。しかし、彼女がにつけているブランド品や指輪の購入履歴を全てしても、千万円にしかなりません。では、残りの千万円は体どこへ消えたとおいですか?」

拓也が呆然として由を見る。由の顔はのように真っになり、ガタガタと全を震わせながら両で顔を覆っていた。

「そ、それは……」

「由様はその横領したおで、都内の級タワーマンションのと、数千万円の輸入スポーツカーを購入されていました。

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ある“物”に貢ぐために」

「み、貢ぐ……? 誰にだ……!?」

拓也の声がかすれる。自分の部でありでもある女が、自分のらないところでを貢いでいた男の。柴田は、まるで臓に氷の刃を突きてるように、無慈な事実を告げた。

「今から、その物をここへお呼びしております」

静まり返ったフロアに、エレベーターの到着音がたく鳴り響いた。ゆっくりと属の扉。そこからチャラチャラとした音を響かせて姿を現した若い男の顔を見た瞬、拓也は「あ……」と抜けな声を漏らし、目を剥いて完全にそのに崩れ落ちたのだった。

エレベーターの属の扉の向こうから姿を現したのは、派髪に、全ハイブランドのロゴが散りばめられたを着崩した半の若い男だった。そのには、のキーがジャラジャラと握られている。

その男の顔を見た瞬、拓也の全からスッと血の気が引き、喉の奥から「ヒッ」と奇妙な音が漏れた。

「しょ……章……!? なんで、おがここにいるんだ……!?」

章と呼ばれた若い男は、にへたり込む拓也を見ろし、ニヤリと品な笑いを浮かべた。

「おっ、久しぶりじゃん、アニキ。なんだよそのけない姿。企業の部様が、べたにいつくばって何やってんの?」

「あ、兄貴だと……!?」

が驚愕の声をあげる。

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このチャラチャラとした若い男は、拓也が「あんな奴は族の恥だ」と吐き捨て、数から完全に縁を切っていたはずの実の弟、章だったのだ。

状況が全くみ込めていない章は、拓也を無して由の方へとスタスタと歩み寄った。

「由ちゃん、遅いじゃん。今はこれからハワイ旅くんでしょう? ファーストクラスのチケットも取ってあるんだからさ、こうぜ」

は顔を真っ青にして、章から逃げるようにずさりを始めた。

拓也のは、完全にパニック状態に陥っていた。なぜ自分が見していた実の弟と、自分のである由いなのか。そして、なぜ章が自分のでも買えないような級品をにつけ、ハワイ旅などと言っているのか。

パニックで言葉を失う拓也に代わり、執事の柴田が徹な声でその答えを突きつけた。

「お分かりになりませんか、拓也様。由様が横領した千万円のき先は、全てそこにいる実の弟様の懐でございます。級タワーマンションも、そのスポーツカーも、由様が会社ので章様に貢いだものなのです」

「み、貢いだ……!?」

拓也のが半きになり、抜けな声が漏れる。

「つまり、由様がからしていたのは、若くて見栄えのいい弟の章様。あなたとの倫関係は、ただ単に経費の決済印を押させるための、都のいいカモとして利用していただけに過ぎないのですよ」

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