みかん小説
本棚

"68歳の誕生日、残高は0円だった" 第5話

このまま放置すると入院が必になります』

ドクターは調で言った。

『入院になれば費用はもっとかかります。エアマットは今すぐ必です』

千代子がそので総を呼ぼうとすると、ドクターはげて制止した。

『ご主は、ちょっと今は呼ばなくていいです』

ドクターはい声で言った。

その言い方に、千代子は何かをじた。

ドクターはずっとこのに往診に来ている。

このの異常な空気を、彼はっているのだ。

往診が終わった、千代子はずっとそのことを考えていた。

20万円。私には今、1円もない。

夜がけ、朝のが差し込んできた。

翌朝、千代子は台所にって朝の準備をした。

彼女は何度もでおを数えた。

財布のに残っているのは、銭をわせても1800円程度だ。

から渡される費は、先分の残りがほんのわずかある。

でもそれは今費のために必で、の医療費に使えるようなものではない。

斎からてきたのは、千代子が噌汁を作り終えた頃だった。

彼はパジャマのまま卓に座り、聞を広げた。

千代子は黙って朝した。

噌汁、焼き魚、漬物。

変わらない卓だった。

聞を読みながら箸をかし、千代子のことをほとんど見なかった。

千代子は向かいに座り、お茶をんでからいた。

広告

「あなた、お母さんのずれのことなんだけど」

千代子が言うと、総聞をげて嫌そうな目を向けた。

「また同じ話か」

千代子は声を落ち着けようとしながら言った。

「先がまた言っていた。入院になるにエアマットを入れなければいけないって」

千代子は夫の顔を見た。

「20万円かかるって」

聞をろして、テーブルに置いた。

「ドクター部は専だろう」

は偉そうに言った。

「しかし医者というのは常に最限のオプションを提案する。それがビジネスモデルだからだ」

彼は酷な言葉を吐いた。

「92歳の母親に20万円の設備投資が必かどうか、私は疑問だ」

千代子は目を見いた。

「設備投資って、お母さんは痛がっているのよ」

は嘲笑うように言った。

「経済理性の話をしている」

彼は千代子を指差した。

論で物事を判断するのは計管理の失敗だ」

彼は言葉を続けた。

「おはバイトで稼いで、そのおの使い方すら分かっていなかった」

は胸を張った。

「私が元管理しているのはそういう理由からだ」

彼はたく言い放った。

で20万円をすと言うなら、その根拠を財務な言葉で説してみろ」

千代子は箸を置いた。

財務な言葉で。彼はいつもそう言う。

で話すな、数字で話せと。

でも千代子が数字を持ってくれば、今度はその数字のを理解しているのかと返してくる。

広告

どんな言葉を使っても、最終には同じ所に戻ってくる。

あなたは無で私は賢いという結論に。

「お母さんが痛がっているのは事実です」

千代子は真っ直ぐに夫を見て言った。

「それだけです」

を鳴らし、また聞を持ちげた。

「介護の質がいからずれになる。これはおの仕事の質の問題だ」

彼は聞の裏側から言った。

「設備で補おうとするのは本末転倒だ」

千代子は、それ以何も言わなかった。

が終わり、総斎に戻っていった。

千代子は台所で器を洗いながら、静かに決した。

もう自分で考えていても何も変わらない。

どこかに助けを求めるしかない。

でもどこに?

弁護士は費用がかかる。

に相談すれば、いずれ総に入るかもしれない。

娘のさやかに連絡することは、まだためらいがあった。

さやかには京での活がある。配をかけたくなかった。

でも、今はそれを言っていられない状況になっていた。

千代子がいついたのは、区役所の福祉窓だった。

所のが区役所に相談したら、介護用品の補助がたと言っていた。

細かいことは分からないが、とにかくってみようとった。

がかかるわけでもない。ただ話を聞いてもらうだけでもいい。

千代子は総に声をかけず、こっそりとコートをに取った。

奥の部が静かに寝息をてているのを確認した。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: