みかん小説
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"温泉旅行を贈った夫の本当の目的" 第17話

「取引止……!?」

博幸さんの顔から、完全に血の気が引いた。

が社に数億円規模の損害を与えるリスクをじさせた責任は、万に値する」

が無表に言い放ち、元の類に万で署名した。

「本付をもって、博幸を懲戒解雇処分とする。退職は就業規則に基づき全額。さらに、過にわたる正経費の横領分、計万円の即全額返還を請求する。期までに返還なきは、直ちに刑事告訴へ移する」

「懲戒解雇……経費返還……!? 社、待ってください! 俺は、この会社のために骨を埋める覚悟で働いてきたんです! 族もも失った俺に、そんな払えるわけがありません!」

博幸さんはに両膝をつき、額を絨毯に擦りつけて号泣した。だが、かつて彼におべっかを使っていた役員たちも、誰として目をわせようとはしなかった。

警備員のによって腕を引かれ、通用からりしきるへと引きずりされた、博幸さんがかけて築きげた「エリート商社マン」という虚飾の板は、に無残に踏みにじられていた。

会社を放りされた博幸さんが、に濡れそぼりながら向かったのは、さおりが暮らす都内のデザイナーズマンションだった。

財布のには、昨夜の銭の残りと、実の母親から無理やり振り込ませた数万円しか残っていない。

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着の着のままでオートロックのエントランスに辿り着いた彼は、震える指で部番号を何度も押し続けた。

「さおり! さおり、頼む、けてくれ! 俺だ、博幸だ!」

インターホンの受話器から返ってきたのは、舌打ちの音と、氷のように淡な女の声だった。

『……何の用よ。しつこいわね』

「頼むからに入れてくれ! 会社をクビになったんだ! 恵美子のせいで全部失った! でも、俺たちにはハワイのがあるだろ? で力をわせてやり直そう!」

インターホンの向こうで、さおりは吹きすように嘲笑った。

『ハワイ? あんた本気で言ってたの? 湧いてんじゃない?』

「え……?」

『私がなんであんたみたいな太りの冴えない男の相をしてたとってんの? よ、! 奥さんの遺産と退職をごっそり巻きげて、ハワイのコンドミニアムを買ってくれるっていうから付きってあげてたの! 文無しの無職ジジイに、何の価値があるのよ』

「さおり……そんな……! 俺たちはっていたじゃないか! 俺はおのためにカードも使わせて、贅沢させてやっただろ!」

『あれ、全部あのおばさんのカードだったんでしょ? 支払いが止まったせいで、私のカードまで信用報に傷がついたのよ! こっちこそ迷惑だわ!』

ガチャリとエントランスの自ドアがき、から姿を現したのは、きなキャリーケースを引いたさおりと、そのろにつ屈な体格の若い男だった。

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「さおり……その男は誰だ!?」

「私の本当の彼氏。あんたから巻きげた遣いで、このとずっと遊んでたのよ。じゃあね、負け組のホームレスさん。度と私のに現れないで」

「待て! 返せ! 俺がおに貢いだ計もバッグも、全部返せ!!」

博幸さんがすがりつこうとした瞬、若い男の太い腕が博幸さんの胸倉を突きばした。

ドサリと、博幸さんはたいアスファルトのたまりに背から叩きつけられた。がスーツを黒く染め、撥ねたが彼の顔を汚していく。

さおりと若い男は、まみれになっていつくばる博幸さんを瞥もすることなく、横付けされたタクシーに乗り込み、嘲笑を残してっていった。

「う……うわああああっ!!」

、博幸さんはを叩きながら、獣のような慟哭をげた。

かつて彼が「ちょろい女」「最のATM」と嘲笑った妻の無償のを自ら投げ捨てた結果、彼の元に残ったのは、からの徹底な裏切りと、底なしの孤独だけだった。

くあてを完全に失った博幸さんは、うの体で郊にある実へと逃げ込んだ。

しかし、実の玄関で彼を待ち受けていたのは、温かい迎えではなく、激した兄と、泣き腫らした目でうつむく老母の徹な拒絶だった。

すでに神崎法律事務所から実宛てにも、博幸さんの為の全容と、横領に伴う賠償責任についての通が送達されていたのだ。

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