みかん小説
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"温泉旅行を贈った夫の本当の目的" 第19話

私はち止まり、元で額をに擦りつける元夫を、静かに見ろした。

その瞳には、りも憎しみも、そして同欠片すら残っていなかった。ただ、病院の受付で期限切れの無効な保険証を差しされたと同じ、事務で透徹さだけがあった。

さん。状酌量の余はありません。あなたは私を『畜』と呼び、『最のATM』として搾取し尽くそうとした。その過誤請求のツケは、あなたがきている限り、あなた自の肉体と労働で清算し続けなさい」

「恵美子……!」

「私ののカルテから、あなたの名は永久に削除されました。度と私の界に入らないでください」

私は度も振り返ることなく、志乃さんと共にの柔らかな差しが差し込む通りへと歩みした。

から聞こえていた男の惨めなすすり泣きは、都会の喧騒のへと完全に掻き消されていった。

博幸さんとの完全なる決別から、が経過した。

の爽やかな朝。の空から差し込む黄の柔らかな陽が、リビングの窓辺に飾られた純のカラーとの薔薇のびらを優しく照らしていた。

私のしいまいは、駅から徒歩分、入れのき届いた層マンションの最階の角部だ。

。目覚まし計のベルに脅かされることもなく、自然な体のリズムで目覚めた私は、肌触りの良いリネンのローブを羽織り、清潔なキッチンへとった。

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かつてのように、朝び起きて族の朝段弁当を作り、夫の嫌を伺いながら慌ただしく鍋をかき混ぜていた々は、まるで世の記憶のようにじられる。

今の私は、自分のためだけに、お気に入りの挽きミルで煎りの珈琲豆をゆっくりと挽く。

カリカリとよい音をてて砕ける豆の触。ペーパーフィルターにを移し、細のケトルから静かに湯を落とすと、部いっぱいに芳醇でばしいアロマが満ちていく。

マイセンのアンティークカップに注がれたの液体をに含む。いコクと澄んだ苦が、腑へと染み渡っていく。

「……美しい」

声にして微笑んだ。

誰の顔を窺う必もない。誰からも蔑まれることも、努力を当たりのように消費されることもない。自分が稼いだおで、自分の好きな具を揃え、自分がべたいものを、自分のペースでわう。

この静寂と絶対こそが、私がの過酷な自己犠牲と戦いの末に勝ち取った、何者にも侵されない「真の報酬」だった。

半。私は紺のパンツスーツにを包み、勤め慣れた総病院の正面玄関をくぐった。

の騒、病院側は私のの功績と卓越した管理能力を極めてく評価し、私を「医事課・統括課兼コンプライアンス推

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へと昇格させた。

、おはようございます!」 「おはようございます。昨規入院患者様の包括医療費支払い制度(DPC)の点検データ、完璧にがっていましたよ。素らしい際ね」

輩の医療事務員たちが、尊敬と信頼に満ちた笑顔で私を取り囲む。

かつて博幸さんは、私の仕事を「代遅れの事務職」「ただの受付のおばさん」と嘲笑った。しかし現実は違った。

医療制度が度化し、法改正が目まぐるしくむ現代において、医療関の適正な経営と患者の権利を守る医療事務のプロフェッショナルは、域医療の台骨そのものなのだ。

私は今、院内の若スタッフの育成に力を注ぎながら、複雑な診療報酬の適正化や、患者様向けの医療費相談窓のリーダーとして、充実した毎を送っている。

「恵美子先、あなたがいるから、私たち医師もして治療に専できますよ」

気難しいことで名だった科部のドクターからも、今ではの専職として対等な敬を払われている。

社会に必とされ、自分の能力が正当に評価され、謝の言葉が循環する世界。

畜扱いされていたあの暗黒のを抜けし、私は自分のでしっかりとを踏みしめ、自らの尊厳を完全に取り戻していた。

あるの夕暮れ。仕事を終えた私は、駅の老舗百貨で、今夜の自分のための極の赤ワインとチーズを選び、優雅な取りで通りを歩いていた。

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