"消された母の名前" 第2話
それでも、《分かってる。だから言ってる》という母の言葉が気になった。
そのの午、里美は押し入れのから、父が残した類を理した。保険、、の権利証、古い確定申告。段ボールの底に、母名義の通帳が3冊入っていた。
冊には、奇妙な振り込みが記録されていた。
毎25。
5万円。
受取は《カワシマ ナオコ》。
振り込みは、父がくなった2まで20以続いていた。
直子は、くなっていない。
なくとも、父と母はそう信じていた。
さらに通帳のから、施設の領収がてきた。
《社会福祉法 若葉の郷》
支払は清子。
利用者名は川島直子。
里美は領収を持って居へった。
「お母さん」
清子はテレビを見ていた。
「直子さん、きてるの?」
領収を見せる。
清子の顔から血の気が引いた。
「どこにあったの」
「お父さんの類の」
「勝に見るな!」
清子は領収を奪い取ろうとした。
里美がを引く。
「くなったって言ったでしょう」
「んだのよ」
「毎5万円送ってたが?」
「私にとってはんだの」
「どういう?」
清子は答えず、里美のから領収を奪った。を細かく破り、台所のごみ箱へ捨てる。
「直子には会わないで」
「所も施設名も分かったのよ」
「会ったら、このには戻ってこなくていい」
清子は震える声で言った。
「どうして、そこまで言うの?」
清子は娘を見た。
広告
りではなかった。
恐怖だった。
「あなたが直子に会えば、全部なくなるから」
「何が?」
母は答えなかった。
ただ、里美の顔を見つめていた。
まるで53隠してきた何かが、今にも娘の顔から現れるのを恐れているようだった。
若葉の郷は、実からで2ほどれた部にあった。
里美はすぐには訪ねなかった。施設へ話をかけ、川島直子という女性が入居しているか確認しようとしたが、個報を理由に答えてもらえなかった。
「ご親族でしたら、ご本との関係が分かる類をご用ください」
職員に言われた。
里美は戸籍を取ることにした。
母の妹なら、祖父母の戸籍をたどればを確認できる。
役所の窓で必な類を請求し、そので内容を見た。
祖父・篤蔵と祖母・ハルのには、2の娘がいる。
女・清子。
次女・直子。
直子の欄には、197210に婚姻した記録があった。相は川島良平。その、京へ転籍している。
の記録はない。
母は嘘をついていた。
さらに里美は、自分自の戸籍を見た。
父・孝雄。
母・清子。
昭48114まれ。
これまでっていた通りだった。
ただし、届の提は29。
まれてから26だった。
当の届は原則14以内に提する。何らかの事があったのだろうが、これまで聞いたことはない。
広告
戸籍の欄には、さな訂正の記録もあった。
《昭49320 母の氏名に関する記載訂正》
詳しい内容は、その戸籍だけでは分からなかった。
里美は窓の職員へ尋ねた。
「母親の名が、度違っていたということですか」
職員は慎に類を確認した。
「訂正の届については、保期や保管状況によって確認できないがあります。ただ、庭裁判所の許を得て訂正された能性があります」
「どういう理由で?」
「ここでは分かりません」
へ戻ると、清子は庭でをむしっていた。
「戸籍を取った」
里美が言うと、母はを止めた。
「私の届、すのが遅かったのね」
「昔は、そういうこともあったのよ」
「母親の名も訂正されてる」
清子はちがり、のついた袋をした。
「役所の違い」
「庭裁判所まで使って直した能性があるって」
「昔のことよ。今さら何になるの」
「私のことだから聞いてるの」
「あなたは私の娘。それでいいでしょう」
言葉は確だった。
だが、「それが事実だ」とは言わなかった。
「直子さんは、私と関係があるの?」
清子は黙った。
里美の胸ので、考えたくなかった疑いが形になっていった。
直子が母親ではないか。
清子が、自分を直子と呼んだ。
届の母親名が訂正されている。
父母は直子へ毎を送っていた。
つながりすぎている。
「私、直子さんの子なの?」
清子は、里美の頬を叩いた。
乾いた音が庭へ響いた。
母に叩かれたのは、子どもの頃以来だった。
清子自も驚いたように、自分のを見た。
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
元夫の再婚式に招かれた私には、秘密がある
離婚から五か月後、元夫が若い再婚相手を連れ、結婚式の招待状を届けに来た。だが由美が抱く生後二か月の男児を見た瞬間、元夫の笑顔は凍りつく。 由美は離婚時、すでに妊娠していた。さらに彼女の手元には、元夫の裏切りと消えた夫婦の財産を示す証拠も残されていた。 捨てられた妻が過去を暴くだけでなく、息子とともに自分の人生と安心して帰れる家を取り戻す再生の物語。夫婦|親子関係|不倫2.6万字5 3 -
完結第23話
母の小さな食卓
三年ぶりに実家へ帰った直人は、母の誕生日の食卓に、ご飯と味噌汁、漬物しかないことに驚く。冷蔵庫もほぼ空なのに、玄関には弟へ渡す高価なりんごが三箱も積まれていた。 さらに母の通帳には、弟へ毎月八万円を送った記録が残されていた。弟ばかりを優先する母への古い不満がよみがえるが、その金は、直人が失業した三年前から、息子・悠人の学費として渡されていたものだった。裡の顔|親子関係|修羅場2.8万字5 827 -
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 2 -
完結第10話
13年前に消えた娘が、元隣人のSNSにいた
2009年、自宅から忽然と消えた四歳の娘・くるみ。母のえみは、娘の部屋を十三年間そのまま残し、帰りを待ち続けていた。 失踪から十三年後、元隣人のSNSに十七歳の少女が写る。成長した娘に似た顔、同じ三日月形のあざ、そして少女の名前も「くるみ」だった。ミステリー|夫婦|真実|真相|親子関係1.6万字5 3 -
完結第20話
路線バスで来た父を笑った婚約者一家の誤算
娘の顔合わせに路線バスで訪れた庄三は、相手の両親から「車も持てない乞食」と嘲笑される。婚約者まで黙って見ていたため、庄三はわずか五分で破談を告げた。 しかし庄三の正体は、県下一の交通グループを一台の中古バスから築いた創業者。翌日、社運を懸けた大型工事のコンペ会場で、相手親子は上座に座る庄三と再会する。職場逆転|人生逆転|第二の人生|金銭問題2.6万字5 100 -
完結第15話
白米だけの夕飯を出されたので、家を出ました
年度末の仕事を終えて帰宅した麻子を待っていたのは、冷めた白米だけの夕食。夫と義母は特上寿司を食べながら、「反省したらおかずを出す」と笑った。 「外で牛丼でも食べてきたら?」という夫に、麻子は静かに「分かりました」と答える。しかし彼女は半年前から新居や弁護士の手配を進め、大切な荷物も運び終えていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|修羅場2.0万字5 130 -
完結第20話
妻の予定表に書かれた「最終日」
妻の予定表に記された、結婚記念日の「最終日」。夫は離婚を疑うが、その言葉には、十四年間積み重なった妻の孤独が隠されていた。 毎年同じレストランに二人分の席を予約し、来ない夫を一人で待ち続けていた妻。彼女は今年を最後に、待つことをやめようとしていた。夫婦|真相|第二の人生2.8万字5 70 -
完結第12話
母に贈った家を狙う親戚夫婦
母への恩返しに建てた家へ帰ると、親戚夫婦が勝手に住み着き、食卓を囲んでいた。しかも二人は近所に「自分たちの新居だ」と触れ回り、家まで奪おうとしていた。 裕子は怒鳴らず、警備会社への一本の電話をきっかけに、入退室記録、録音、登記、映像を着実に集めていく。 これは家を取り戻すだけでなく、断れずに生きてきた母が初めて「ここは私の家です」と声を上げる物語。静かな反撃と、母娘が本当の安心を取り戻す再生の一篇。裡切られた|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|修羅場1.8万字5 1743 -
完結第12話
二十六年目の告白
余命わずかな夫・浩司は、妻ゆみに衝撃の告白をする。二十六年前、ゆみが産んだ息子と愛人の子を、病院で密かにすり替えたというのだ。 だが、ゆみはすべてを知っていた。夫の行動を目撃し、名札を元へ戻していたため、浩司が愛人の子だと信じて溺愛してきた誠は、紛れもなくゆみの実子だった。夫婦|真相|親子関係|修羅場|不倫1.7万字5 1292