"0円の注文帳" 第9話
1階の角に、域民が単位で利用できる共同厨を作る計画があるという。齢者向けの配や子ども堂、週末だけを試したい若者にも貸しす予定で、管理組ではその所に「こもれび」という名を残せないかと考えていた。
「そのものを残してほしいという話ではありません。名だけでも、この町にあったものを次へ繋げられたらといまして」
直子は図面を眺めた。
数ヶなら、断っていたとう。
母のを美談にして残されることにも抵抗があった。枝は派なこともしたが、族に違ったこともしたであり、その複雑さをらないまま「町を支えた優しい弁当のおばちゃん」にされることが嫌だった。
「し考えさせてもらってもいいですか」
直子が答えると、田島はそうにした。
「もちろんです」
「ただつだけ。もし名を使うなら、母が町のを助けたような説にはしないでください」
田島は首を傾げた。
直子は古い注文帳を冊持ってきた。
「母が誰かに弁当を渡したもあれば、母が誰かに助けてもらったもあります。お互いに来ることを返していただったので、母だけを派なにすると、たぶん本も嫌がります」
隆子が横からを挟んだ。
「嫌がるどころかるね。『私で来るわけないだろ』って」
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皆が笑った。
田島は帳面をしばらく眺めたあと、「分かりました」と頷いた。
「それなら、そういう所にします」
田島が帰ったあと、直子はし議な気持ちになった。
を残したいとはわない。
母の板を守りたいともわない。
それでも、この所で43続いていたの繋がりまで、建物と緒になくなる必はないのかもしれなかった。
午2を過ぎた頃、業者が古い蔵庫を運びした。
そのろを掃除していた節子が、壁との隙に落ちていたさな鍵を見つけた。
「これ何の鍵?」
直子には見覚えがなかった。
隆子も首を振った。
鍵には古い製の札がついており、母の字で《奥》とかれている。
「奥って、どこよ」
の奥には倉庫とさな休憩しかない。
しばらく探していると、休憩の押し入れの袋に、さなの庫があることに気づいた。昔からそこにあったはずなのに、直子はの現を入れる庫だとい、度もけようとしたことがなかった。
鍵はった。
にが入っているわけではなかった。
古い通帳が冊。
学ノートが冊。
そして、《直子へ これはではありません》とかれた封筒がつ入っていた。
「またお母さん?」
直子が呟くと、節子が苦笑した。
「んでからよく喋るだね」
「きてるに喋ればよかったのに」
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その言葉に、誰も反論しなかった。
直子はそのでは封筒をかなかった。
夕方、全員が帰り、のがになってから、母が何も使っていた丸子へ腰をろした。
封筒をける。
に入っていたのは、枚の説きだった。
《この通帳のおについて》
直子は通帳をいた。
昭の終わり頃に作られた古い普通預座で、最初のページにはわずかな残しかなかった。ところが平成6頃から、毎3,000円、5,000円、いには1万円ずつ入されている。
母の字で、摘欄へさく数字がかれていた。
《3》
《8》
《15》
数字はしずつ増えた。
平成10。
43。
平成15。
71。
平成21。
102。
そして平成27。
《128万4,600》
そこで数字は止まっていた。
直子は呼吸を忘れた。
20歳の。
母が「直子学」という名目で貯めていた額。
128万4,600円。
まったく同じだった。
母のを読む。
《あなたの学のために貯めていた128万4,600円を、私は自分の判断で別のことに使いました》
《あのは、もう学へけないのだから使っても同じだといました。今になれば、そういう問題ではなかったと分かります》
直子はページをめくった。
《あなたが22歳のから、しずつ戻しました。全部戻すのに20以かかりました》
《返せたから許してほしいというではありません》
次の文章を読んだ、直子はくけなくなった。
《おは返せても、20歳のあなたには返せません》
母は、その文のに続けていた。
《だから、このをあなたに渡すのが怖くなりました。渡したら、私が「これで借りは返した」
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