"最後の迷子放送" 第6話
「あなたのためをって言ってるのよ!」
澄の声がきくなった。京子も負けずにちがった。
「それが嫌なの!」
い沈黙のあと、京子は自分の部へ入り、用してあった鞄を持って戻ってきた。その鞄を見た瞬、澄は娘が今夜をるつもりだったのだと初めてった。
「待ちなさい。どこへくの」
「しばらく友達のところ。結婚の続きが終わったら、俊夫さんとへく」
「そんな勝なこと……」
澄は玄関まで追いかけた。しかし京子は靴を履き、戸をけたところで度だけ振り返った。
「もう迎えに来なくていいから」
戸が閉まったあとも、澄はしばらく玄関にっていた。追いかければにったかもしれないし、「ごめん」と言言えば、娘はち止まったかもしれない。けれど澄にもがあり、何より娘から投げつけられた言葉が胸に刺さり、をかすことができなかった。
翌、京子は勤めていた丸百貨を退職した。俊夫と簡素な式を挙げ、そのままへ移ったことを、澄がったのはしばらく経ってからだった。所をいたが度だけ届いたが、澄はすぐに返事をくことができなかった。
何をけばよいか分からなかったのである。「元気で」とけば、あまりにもたい気がした。「帰ってきなさい」とけば、また同じことを繰り返すようにえた。
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迷っているうちに週がかになり、結局返事をさないまま、だけを箪笥の引きしへしまった。
半、澄がようやくをいたには、宛先で戻ってきた。俊夫が転勤し、所が変わっていたのである。共通のを通して「夫婦で元気にしているらしい」と聞くことはできたが、しい所までっている者はいなかった。
代はまだ、携帯話も子メールもない。話番号が変わり、所が分からなくなれば、度途切れた関係をもう度つなぐのは今よりずっと難しかった。もちろん本気で探せば方法はあったのかもしれないが、母娘のには互いのと悔があり、どちらからも歩を踏みせなかった。
翌のある第1曜、澄はで丸百貨へかけた。
特に買いたい物があったわけではない。気づけば幼い京子と何度も歩いた売りを巡り、堂のまでき、最に案内所のくでを止めていた。
そこで、幼いの迷子放送をいした。
「京ちゃん。京ちゃん。お母さまが1階案内所でお待ちです」
あの声を聞いて、5歳の京子は泣きながら戻ってきた。
澄はしばらく案内所のにったあと、い切って係員へ尋ねた。
「変なお願いだとは分かっているんですけど……度だけ、娘の名を呼んでいただけませんか」
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最初、係員は戸惑った。けれど事を聞いた当の主任が、昔の迷子記録まで覚えていたため、「今だけなら」と許した。
午3、館内へ声が流れた。
「京ちゃん。京ちゃん。お母さまが1階案内所でお待ちです」
もちろん京子は来なかった。
それでも澄は10分待った。
そして翌も、また来た。
最初の頃、百貨側も毎放送を続けるつもりはなかったという。けれど澄は第1曜になると必ず現れ、放送が終われば10分だけ待ち、それ以迷惑をかけることなく帰っていった。買い物客のないに度だけ流すい呼びしだったこともあり、いつしか案内係ので暗黙の解になっていった。
が過ぎるにつれ、事をる員は減っていった。若い社員にとっては「毎第1曜に来る議な婦」でしかなく、そのたびベテランが「昔からの方だから」と説した。澄自も詳しい事を話すことはなく、決まったに来て、決まった言葉を頼み、決まった子へ座った。
昭44、45、46。丸百貨は改装を繰り返し、エスカレーターが増え、売りの照もるくなった。堂にはのメニューが増え、遊園にはしい乗り物が入ったが、毎第1曜の午3だけは、昔と同じ名が館内へ流れた。
「京ちゃん。京ちゃん。お母さまが1階案内所でお待ちです」
澄が本当に娘が現れるとっていたのか、誰にも分からなかった。
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