"最後の迷子放送" 第9話
案内所のまでりる勇気はなく、子ども売りのくで放送を待っていた。
そこで、昔から顔をる婦売りの員に声をかけられた。
「京子ちゃんじゃない?」
突然名を呼ばれ、京子は逃げることもできなかった。久しぶりの再会をんだ員は、しばらく話したあと何気なく言ったという。
「お母さん、今も来てるわよ。でも、あの放送は今で最になるらしいわね」
その言葉を聞いた瞬、京子の胸ので何かが変わった。
毎流れているとっていたから、来でもいいとえた。今戻れなくても、また次があると考えていた。けれど「今で最」と聞いた途端、これまで自分が当然のように残していた帰りが、本当に消えてしまう気がしたという。
「もう度と聞けないとったら……急に怖くなった」
京子はさく笑った。
「子どもの頃と同じだね。迷子になった、あの放送が聞こえてしたの。ずっと忘れてたのに、今聞いたら全部いした」
澄の目に涙が浮かんだ。しかし娘へ駆け寄って抱きしめることはしなかった。
以なら、そうしていたかもしれない。
けれど今度こそ、京子が自分からんでくるのを待とうとった。
澄はし迷ったあと、たった言だけ尋ねた。
「元気だった?」
何分ものりも悔も、尋ねたいこともあったはずだった。
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それでも最初にてきたのは、母親として最も単純な言葉だった。
京子はしばらく母の顔を見つめた。
「うん」
それだけだった。
けれど、その「うん」を聞いた瞬、澄の肩から力が抜けた。
母娘のにできた8いは、数分の会話だけで消えるものではなかった。澄には言わなければならない謝罪があり、京子にも話したいことがいくつもあった。それでもはそので全部を片づけようとはしなかった。
代わりに澄が尋ねた。
「何かべていかない?」
京子は瞬きょとんとしたあと、しだけ元を緩めた。
「まだ堂あるの?」
「あるわよ」
「じゃあ、こうかな」
は並んでエスカレーターへ向かった。
恵子は案内所から、そのろ姿を見送った。
歩きした母娘のには、まだわずかな距があった。
それでも京子は、もう帰らなかった。
丸百貨の堂は、午3を過ぎても族連れで賑わっていた。窓際の席では子どもが旗のったお子様ランチをべ、入くでは買い物袋をいくつも元へ置いた主婦たちが甘を楽しんでいた。澄と京子はの央よりし奥、昔からある窓側の掛けの席へ案内された。
メニューをいた澄は、ほとんど迷わず員へ言った。
「クリームソーダをつお願いします」
京子がわず笑った。
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「私、もう子どもじゃないんだけど」
「ってるわよ」
澄も笑った。
その笑い方が昔とほとんど変わっていないことに気づき、京子は目を伏せた。母とれて暮らしていたので、ずっと変わってしまったとっていたものが、実際には何もかも失われたわけではなかった。
運ばれてきたクリームソーダは、鮮やかな緑だった。には丸いバニラアイスが浮かび、赤いサクランボがつ添えられている。子どもの頃、京子は最までアイスを残しておく派で、澄は溶けてしまうから先にべなさいと何度も言った。
「まだ?」
澄が尋ねた。
「今は仙台。俊夫さんがまた転勤になったの」
「そう」
「元気だよ。相変わらず仕事ばっかりだけど」
「そう」
澄はそれ以夫のことを尋ねなかった。昔なら勤め先や収入、帰宅まで配して質問したかもしれないが、今は娘が話したいことだけを話せばよいとった。
京子のほうからしずつ況を話し始めた。で暮らしたこと、で何度も転んだこと、所のに助けてもらったこと、俊夫が邪をひいたにで病したこと。苦労はしたが、それでも自分で選んだを歩いてきたのだと、京子の言葉から澄にも伝わった。
「幸せなのね」
澄が言うと、京子はし考えてからうなずいた。
「うん。たぶんね」
「それならよかった」
その答えがあまりにもあっさりしていたため、京子は母を見つめた。
「それだけ?」
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