"7年目に開いた薬袋" 第4話
「ありがとうございます」
哲夫は礼を言うものの、ほとんどをつけないもあった。
佐藤医師も頻繁に訪ねていた。
「哲夫さん、体を壊してはいけません」
肩にを置き、静かに励ました。
「幸子さんが戻った、あなたまで倒れていたらしみますよ」
哲夫は涙を拭った。
「妻はきています。どこかできていると信じています」
「ええ」
「必ず帰ってくる。そのまで私は待ちます」
2かほど経った頃、佐々警部補は200万円についてしい考えを持った。
幸子は何かを買うためではなく、誰かへ渡すために現を用したのではないか。
しかも誰にもられたくない理由があった。
「奥様が誰かへおを渡そうとしていた能性はありませんか」
哲夫は首を横に振った。
「親戚にを貸す話もありませんでした。誰かに脅されている様子もなかった」
「最、悩んでいる様子は?」
「ありません」
佐々警部補は、幸子の交友関係をもう度調べた。
趣の集まりに頻繁に参加するではなかった。
仕事以で特別に親しいもくない。
毎ほとんど薬局と自宅を往復し、々薬を届けるため町内を自転で回る。
調べれば調べるほど、幸子が200万円を必とした理由は見えなくなった。
3か。
捜査体制は縮された。
佐々警部補も別の事件へ回されることになった。
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最にを訪ねた、哲夫は閉じた薬局ので1座っていた。
佐々警部補はくをげた。
「さん、捜査そのものが終わるわけではありません」
哲夫は無言で顔をげた。
「私はこの事件を忘れません。がかかっても、何かしい掛かりがれば必ず調べます」
「お願いします」
哲夫は子からち、佐々警部補へをげた。
「妻を見つけてください」
佐々警部補は、その言葉を胸に残したまま薬局をた。
商には、いつもの夕方が戻っていた。
買い物袋を持った主婦が歩き、自転に乗った学が通り過ぎ、先から夕飯の匂いが流れていた。
ただ1軒だけ、薬局のシャッターは閉じていた。
そこだけが止まったようだった。
佐々警部補は振り返った。
幸子はどこへったのか。
なぜ200万円を持ちしたのか。
なぜ誰にも見られず消えることができたのか。
答えのない疑問だけが残った。
昭48が終わり、昭49になった。
それでも幸子は帰らなかった。
哲夫は薬局を再しなかった。
「幸子がいない薬局なんてがありません」
所のに再を勧められても、そう答えた。
佐藤医院の処方箋は、隣町の薬局が受け付けるようになった。
便になったとじる民はかった。
特に齢者は、薬局のを通るたびを止めた。
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「幸子さんなら、こんなどうむかにいてくれたのに」
「話を聞いてもらうだけでしたなあ」
そんな声が残った。
哲夫は薬局の2階に1でみ続けた。
幸子のも、化粧品も、寝に置かれた物も片づけなかった。
「戻ってきた、何も変わっていないで迎えたい」
そう話していた。
佐藤医師も変わったように見えた。
以より表がくなり、診察に窓のを眺めることが増えた。
患者から「先、丈夫ですか」と尋ねられると、無理に笑った。
「丈夫です。ただ幸子さんのことを考えると、今でも信じられなくてね」
診療所では、佐藤医師が幸子について語る姿が何度も見られた。
「あんなに真面目な薬剤師はいませんでした」
「患者のことを第に考えるだった」
町の々は、その言葉に胸を打たれた。
医師もまた、幸子を失ったことに苦しんでいるのだとった。
半、1とが流れた。
事件が完全に忘れられたわけではない。
だがは毎しみだけを考えてきることはできなかった。
商ではしいがき、子供たちは成し、齢者のにはくなる者もいた。
昭50。
昭51。
昭52。
薬局だけは閉じたままだった。
シャッターには錆が浮き、板もしずつ褪せていった。
哲夫も老けた。
まだ50代半であるにもかかわらず、髪はくなり、背は丸くなった。
ほとんどせず、所のが料を持ってくると玄関先で受け取るだけだった。
「ありがとうございます」
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