"判を押さなかった妻" 第4話
テレビの実況だけがリビングに響いた。修司はリモコンをに取って音量をしげたが、私を見ることはなかった。
「千佳さんの部でしょう?」
修司はようやくこちらを向いた。
「のものを勝に調べるな」
「のものではないでしょう。夫婦で貯めてきたおからているんだから」
「俺が働いて稼いだだ」
その言葉を聞いた瞬、38の暮らしが気に別の形に見えた。
私も結婚20は働いていた。宅購入のには私の独代の貯も入れたし、そのは修司の母親を支えるために退職した。それなのに彼のでは、座へ入ってきた料だけが「自分の」で、私が無償で担ってきた18には額がついていなかった。
「そう。あなたはそうっていたのね」
私はそれだけ答えた。
修司は何か言い返そうとしたが、私はもう台所へ戻っていた。鳴りう必はなかったし、今ここで勝ち負けを決める必もなかった。
私に必なのは、修司自が作った数字を最まで確認することだった。
その夜、私は再び類箱をいた。
そして、今度はがのそのものについて資料を確認した。
私たちが暮らすを購入したのは25だった。郊にある築数の古い戸建てだったが、庭があり、駅まで徒歩15分というが気に入って購入した。
広告
のうち約700万円は、私が結婚から貯めていたと、結婚に働いて貯めた分からしている。
当の私は経理の仕事を続けており、修司より収入はなかったものの正社員として働いていた。宅ローンについてもで返していく提だったため、の持ち分は修司だけではなく私にも設定されていた。数にローンを完済したあとも、その名義は変えていない。
修司はそのことを忘れているようだった。
翌の朝で、彼は当然のように「婚したも佳代はここにんでいい」と言った。自分は千佳と暮らすつもりなのでを売ってもいいが、私がで暮らしたいなら「しばらく使わせてやる」というぶりだった。
「それから、このは古いから定期にを通した方がいい。俺の荷物もし置いておくし、郵便物が来たらまとめておいてくれ」
私は噌汁をみながら聞いていた。
「千佳は料理があまり得じゃないから、凍できるものをし作っておいてくれると助かる。週に1回くらい俺が取りに来る。それと薬も今まで通り曜に分けておいてくれ」
私はさすがに聞き違いかとった。
「婚したあとも?」
「やってきたことだろ。急に全部変える必ないじゃないか」
修司は本気だった。
さらに、ワイシャツについてもアイロンをかけておいてほしいと言いした。
広告
千佳は会社勤めがく、事はあまりしないらしいという説までつけたあと、「おはこういうこと慣れてるんだから、したじゃないだろ」と言った。
私は箸を置いた。
「あなたは千佳さんと暮らして、私はここに残って、あなたの事と洗濯と薬の準備を続ける。それがあなたの考えている婚の活なの?」
「別に毎来いとは言ってない。俺だってのはあるから、おを追いす気はないって話だ」
の。
修司はその言葉を、自分がかなり譲歩している証拠のように使った。
「それと、所には余計なことを言うなよ。隠し子だ何だと噂になったら俺もがある。のことはので処理するものだから」
その瞬、私はようやく理解した。
修司ののでは、婚によって妻というだけをし、38私が提供してきた能はそのまま残せることになっている。私は彼にとってを共にするのではなく、事、洗濯、計管理、介護、健康管理を静かに処理してくれる仕組みだった。
だからこそ、彼はと息子を作っても、私を完全に放すことは考えていない。
しい庭へ持っていきたいのは楽しさや若さだけで、面倒な部分は古い妻に残す。
「分かったわ」
私が答えると、修司は満したように頷いた。
「静になれば分かるとってたよ」
私は何も訂正しなかった。
そのの午、私はで法律事務所を訪ねた。
広告
おすすめ作品
-
完結第6話
帰宅した夜、夫の嘘を知った
里帰り出産を終え、生後2ヶ月の息子を抱いてようやく自宅へ戻った美咲。夫・直人との3人暮らしが始まると思っていたその夜、隣人が突然玄関を叩いた。「毎晩毎晩、夜中までいい加減にしてください」。さらに「ご主人には前にも2回注意しました」と告げられ、美咲は耳を疑う。この2ヶ月、美咲は一度も家に帰っていない。では、隣人が何度も見かけた“妻らしき女性”は誰だったのか。問い詰められた直人は「会社の後輩が1度泊まっただけ」と説明するが、翌朝、隣人の証言によってその嘘も崩れ始める。出産のため家を離れていた2ヶ月間、自分の家庭で何が起きていたのか――美咲は静かに真実を確かめ始める。嫁姑|夫婦|不倫8.8千字5 1 -
完結第13話
消された母の名前
父の三回忌を終えた夜、53歳の里美は、認知症の兆しがある母・清子から、突然知らない名前で呼ばれる。 「直子、今度こそ逃げないで」 直子とは誰なのか。なぜ母は、娘である自分を妹の名で呼んだのか。 不審に思った里美が戸籍や父の遺した書類を調べ始めると、自分の出生届に残された不自然な訂正、20年以上続いていた謎の送金、そして施設で暮らす一人の女性の存在が浮かび上がる。 母が53年間守り続けたものは、愛だったのか、嘘だったのか。 隠された12通の手紙と、海辺の古い写真が、里美の知らなかった「本当の家族」を少しずつ明らかにしていく――。人生逆転|第二の人生|親子関係2.0萬字5 56 -
完結第13話
「田舎者」と見下した婚約者を実家へ招いたら、態度が一変した
地味で素朴なまゆは、恋人・光希から突然プロポーズされる。 しかし彼と女社長の母は、結婚相手を「家政婦」として値踏みし、田舎育ちのまゆを見下していた。そんな二人を実家へ招待すると、専属運転手、大豪邸、ワインセラー、ヘリポートまで現れ態度が一変。 だが、本当の審査はここからだった――。人生逆転|夫婦1.9萬字5 22 -
完結第10話
「俺の子じゃない」と言った夫へ、99.999%の鑑定結果を見せた日
命懸けで娘を産んだサツキに、夫・慶一が放ったのは「俺の子じゃない。DNA鑑定しろ」という非情な一言。さらに義母と義妹まで押しかけ、浮気女と決めつけ300万円の慰謝料を要求する。 しかしサツキは静かに一枚のDNA鑑定書を差し出した。 親子関係99.999%――そして次に彼女がテーブルへ並べたのは、夫が決して知られたくなかった“大量の写真”だった。 本当に裏切っていたのは、一体誰なのか――。人生逆転|真実1.6萬字5 81 -
完結第20話
温泉旅行を贈った夫の本当の目的
結婚32年、家族のために働き続けた恵美子。ある日、夫から突然贈られた高級温泉旅行に喜ぶが、忘れたスマホを取りに戻ったことで、夫と若い愛人の恐ろしい本音を聞いてしまう。 「退職金も土地も奪って、最後は追い出せばいい」 しかし二人は知らなかった。 “何も知らない従順な妻”と見下した恵美子が、32年間の医療事務経験で培った知識と証拠収集力を武器に、すでに完璧な反撃を始めていたことを――。 愛も金も家も失うのは、一体誰なのか。夫婦|修羅場3.0萬字5 341 -
完結第19話
「孤児の貧乏女」と捨てた妻の本当の正体
「孤児院育ちの貧乏女」と蔑まれ、15年連れ添った夫・拓也に愛人と共に追い出された美桜。だが彼らは知らなかった――彼女の正体が、日本最大級の九条財閥の令嬢であることを。 離婚届に判を押した翌朝、500億円の契約解除、横領、裏切り、そして恐るべき犯罪計画まで次々と発覚。勝ち組を気取っていた夫たちの人生は、一夜にして崩壊する。 最後に笑うのは誰なのか――壮絶な逆転復讐劇が始まる。夫婦|不倫2.9萬字5 425 -
完結第13話
エレベーターの7時間
5月7日。 東京の大型デパートで突然の停電が発生した。 妊娠6か月の雪は、8人の乗客とともにエレベーターへ閉じ込められる。 救助が来るまでの7時間、彼女は自分の命よりも先に、高齢者や子供たちを守り続けた。 しかし、扉が開いた瞬間―― 救助隊長である夫・明が最初に抱き上げたのは、妻ではなく元恋人の桜だった。 「私と赤ちゃんは、もう彼を待たない」 意識を失う直前、雪が救助隊員へ託した結婚指輪と最後の言葉。 その日から、夫婦の関係は完全に崩れ始める。 なぜ明は、命の危険にある妊娠中の妻より、別の女性を選んだのか。 そして、10年間信じ続けていた桜との“過去”には、誰も知らない秘密が隠されていた。 救助記録と証言が明らかにした真実。 それは、雪が失ったのは夫だけではなく―― 自分を守るはずだった家族そのものだった。夫婦2.0萬字5 156 -
完結第14話
一杯の鍋が変えた人生
柏優太は、職場でのパワハラが原因で心を壊し、半年間ほとんど誰とも話さず部屋に閉じこもっていた。 そんなある日、隣に引っ越してきた母子3人の姿を見かける。 「何も買えなくてごめんね」と泣く母親と、空腹を我慢する子供たち。 過去に大切な友人を救えなかった後悔を抱えていた優太は、思わず声をかける。 「よかったら……うちで鍋しませんか」 一杯の鍋をきっかけに、孤独だった男と傷ついた母子の人生が少しずつ変わり始める。 しかし、温かな時間の裏には、母親が隠していた過去と、子供たちを取り戻そうとする元夫の存在があった。 誰かを救おうとした優太が、実は自分自身も救われていた――。 小さな優しさから始まった、再生と家族の物語。人生逆転|第二の人生|親子関係2.2萬字5 293 -
完結第11話
一つの証拠が暴いた8年間の嘘
八年前、誰にも期待されず、孤独な海外勤務へ送られた男――朝倉洋一。 灼熱のインドで技術を磨き、ただひたすら努力を重ねた彼は、八年ぶりに日本へ帰還する。 しかし、待っていたのは栄光ではなく、同僚からの侮辱と冷たい視線だった。 そんな彼の前に現れたのは、かつて突然姿を消した初恋の女性・七瀬美咲。 「契約の鬼」と恐れられる彼女が、なぜ一介の技術者である朝倉だけを選んだのか――。 やがて社内で発生した機密情報流出事件。 犯人に仕立てられ、すべてを失いかけた朝倉を救ったのは、遠い異国で築いた一つの友情だった。 裏切り、嫉妬、そして八年越しの想い。 忘れられた男の本当の価値が、今、世界を変える。因果応報|人生逆転1.7萬字5 296