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"判を押さなかった妻" 第11話

千佳は黙って頷いた。

そのの夜、修司は帰ってこなかった。

私はで夕べながら、夫の「しい」を止めているのは本当に私なのだろうかと考えた。

答えは、もう分かっていた。

私は止めていない。

修司が10積みげた嘘が、ようやくつずつ彼自へ戻ってきているだけだった。

婚の条件が具体になったのは、最初の夜から2かほど経った頃だった。修司と私、それぞれの代理を通じて財産関係を理し、をどうするか、預貯をどのように分けるか、婚姻関係を壊したことについてどこまで責任を認めるかを話しった。最初の頃は「俺のだ」と主張していた修司も、資料が揃うにつれて同じ言葉を繰り返さなくなった。

私はを残すことを希望した。

理由はへの執着ではなかった。このには私自の持ち分があり、65歳になった今からたに賃貸宅を探すより活の基盤としてだったからだ。修司側の持ち分についてはの財産との調を含め、専を通して現実な方法を検討した。

修司は最初、「俺がていくのに、何で佳代がを取るんだ」と満をにした。

私は答えた。

「私が取るんじゃない。38の財産を理しているだけでしょう」

そこには、夫の母・澄への支を減らしていた問題もあった。

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修司は施設を訪れ、自分から母親へ謝ったらしい。澄がどこまで理解したかは分からないが、私が会いにった、「修司が珍しく泣いたのよ」と笑っていた。

「何て言ってました?」

「自分は馬鹿だったって」

はそう言ってから、私のを握った。

「佳代さん、もうあの子の世話しなくていいからね。私の世話までしてくれて、分よ」

私はそので初めて涙がた。

裏切りをった夜にも泣かなかったのに、92歳の義母からそう言われると、張っていたものが緩んだ。

私は澄を嫌いではなかった。

会があれば顔を見に来たいと伝えると、「嫁じゃなくなっても佳代さんは佳代さんでしょう」と笑った。その言葉がありがたく、同し寂しかった。

へ戻ると、修司が卓に座っていた。

彼のには、2かに見た婚届が置かれていた。

「条件は、これでいい」

修司は言った。

のような命令調ではなかった。

話しいの結果、財産については双方が資料を確認したうえで理し、私はでの活を続ける。修司は私に事や健康管理を求めないことを確にし、婚関係を続けていたことについても定の責任を認める形になった。

千佳とは別居したままだという。

緒には暮らさないことになった」

修司はさな声で言った。

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「悠斗とは会う。父親としてできることはする。でも千佳とは……もう、みたいには無理みたいだ」

私は何も言わなかった。

「おが壊したとってた」

修司が続けた。

「最初はな。おが判を押さないから全部まないって、本気でってた」

私は子に座った。

「今は?」

修司はく息を吐いた。

「俺が最初から壊してたんだろうな」

その言葉を聞いても、勝ったという気持ちはなかった。

ただ、ようやくここまで来たのだとった。

修司は婚届の横へ印鑑を置いた。

「今なら押してくれるのか?」

私はしばらくそのを見つめた。

2か、修司は同じ所へ同じを置き、「おの役目は終わった」と言った。私はあのすでに婚を決めていたが、もしそので判を押していたら、修司が考えた条件をそのまま受け入れ、自分の38まで「終わった役目」として片づけていたかもしれない。

私は婚を拒んでいたのではない。

自分のを、夫の都のいい始末にされることを拒んでいた。

つだけ、覚えておいて」

私は修司を見た。

「私が判を押さなかったのは、あなたをまだしていたからじゃない。になるのが怖かったからでもない」

修司は黙って聞いていた。

「何も理せずに、私へ全部押しつけて、あなただけしいくのを認めなかっただけ。あなたが作った問題は、あなた自にもきちんと持っていってもらいたかった」

修司はゆっくり頷いた。

「分かった」

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