みかん小説
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"判を押さなかった妻" 第12話

私は引きしから自分の印鑑を取りした。

38宅ローン、保険、介護、税、さまざまな類へ押してきた印鑑だった。何度も族のために使ってきたものを、そのは初めて自分自のために使う。

「押すわ」

修司が顔をげた。

私は続けた。

「あなたのためじゃない。私のために」

印鑑がへ触れ、さな音をてた。

その瞬、修司のしいが始まったのではなかった。

私の38に、ようやくつの区切りがついた。

修司がたのは、婚届を提してから約2週だった。荷物の理にはがかかるとっていたが、実際に持っていくものは類、本、仕事関係の類、趣具などで、スーツケースと段ボール数箱に収まった。38も暮らしたの荷物としては驚くほどなく見えた。

の修司なら、に私へ「何を持っていけばいい」と尋ねただろう。薬を忘れないよう私がケースへ分け、着の枚数を確認し、必類をファイルに入れていたかもしれない。しかし今回は、私は度も荷造りにさなかった。

修司は何度か忘れ物をした。

保険証券を箱に入れ忘れ、翌朝自分で取りに戻った。常用薬の残りがないことにも発直に気づき、病院へ話をしていた。

それでも私は何もしなかった。

彼は困りながら、自分でつずつ片づけた。

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それでいいのだとった。

修司が移った先は、千佳のマンションではなかった。くにさな賃貸宅を借り、そこから週に何度か顧問の仕事へ通いながら活をて直すことにしたらしい。悠斗とは定期に会うことになり、父親としての責任は今も続けると聞いた。

千佳との関係が最終にどうなるかはらない。

私にはもう関係のないことだった。

ただ、修司がある暮らしってったよりがかかるな」と話で漏らしたは、しだけ笑しかった。

気代も費も、にいるは全然考えたことなかった」

「そうでしょうね」

私は答えた。

「38、考えていたが別にいたから」

修司はしばらく黙ったあと、「そうだったな」と言った。

なら皮肉だとったかもしれない。

今は、らなかった。

婚して半が過ぎる頃には、私の活もきく変わった。

まず、使っていなかったさな部を自分のために片づけた。修司が類や古いゴルフ用品を置いていた部理し、机をつ置き、本棚を壁際へ並べた。

18まで使っていた卓も、そこに置いた。

数字のキーはすり減っていたが、まだいた。

私はに頼まれ、さなの帳簿理を週に2だけ伝うようになった。65歳から再び経理の仕事をするとはっていなかったが、久しぶりに伝票を理し、数字がきれいにった瞬議なくらい嬉しかった。

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収入はくない。

けれど、自分で働いて得たが自分の座へ入る覚を、私はずいぶんく忘れていた。

の施設にも度ほど顔をした。

ある、私が持っていった羊羹をべながら、澄が尋ねた。

になって寂しくない?」

私はし考えた。

「寂しいもありますよ」

38緒にいたが突然いなくなれば、何もじないわけではない。朝、習慣で分の湯を沸かしかけることもあったし、スーパーで修司が好きだった魚をに取り、買う必がないことに気づくこともあった。

でも、それは戻りたいというではなかった。

い部分を緒に過ごしたがいなくなった寂しさと、そのともう度暮らしたいという気持ちは、同じではない。

「でもね、お義母さん」

私は答えた。

「寂しいより、静かだなっての方がいです」

は笑った。

「静かなのはいいわよ。を取ると特にね」

そのの帰り、私は久しぶりに例の温泉へ寄った。

を途で乗り換え、バスに揺られてさな町へ着くと、写真に写っていたアイスクリームはまだ営業していた。季節は初で、先には族連れが何組か並んでいた。

私はへ入らなかった。

あの写真をす必も、悠斗の姿を探す必もなかった。

ただ、、修司だけが所だった温泉を自分の目で見て、もうここにも支配されないのだと確かめたかった。

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