"帰宅した夜、夫の嘘を知った" 第1話
美咲が2ヶの息子・悠真を抱いて自宅へ戻ったのは、午3をし過ぎた頃だった。
里帰り産を終え、実で過ごしたのは約2ヶ。32歳で初めての産を経験し、退院も2おきの授乳と寝が続いた。母に助けてもらいながら、ようやく体がし戻ってきたところだった。
玄関をけると、夫の直が笑顔で迎えた。
「おかえり。荷物、持つよ」
35歳の直とは結婚して4。仕事は営業部の主任で、帰宅が遅いはかったが、美咲は夫を疑ったことがなかった。
「悠真、きくなったな」
直はぎこちないつきで息子を抱き、何度も顔をのぞき込んだ。
そのの夕も直が用した。スーパーで買った刺と惣菜だったが、美咲には分だった。2ヶぶりに夫婦で同じ卓を囲み、隣には眠っている息子がいる。
「やっと3で暮らせるね」
美咲が言うと、直はし遅れて、
「そうだな」
と笑った。
ほんの瞬のだったので、美咲は気にしなかった。
夜11を過ぎ、悠真を寝かしつけた、美咲は久しぶりに自宅の寝へ入った。シーツは洗われ、部も片づいている。直なりに準備してくれたのだとった。
「2ヶも1にしてごめんね」
美咲がそう言うと、直は苦笑した。
「何で謝るんだよ。産してたんだから」
その言葉に、美咲はしした。
自分は考えすぎていたのかもしれない。
広告
夫婦の活はここからまた始まる。そうった、そのだった。
ドンドンドン。
玄関の扉が激しく叩かれた。
悠真が泣きした。
「何?」
美咲が驚いてちがると、直の顔が瞬固まった。
「俺がる」
しかし美咲も泣く悠真を抱いたまま玄関へ向かった。
扉をけると、隣にむ吉田理惠がっていた。45歳。普段は会えば挨拶をする程度で、った顔を見るのは初めてだった。
「さん、本当にいい加減にしてください」
いきなりそう言われ、美咲は戸惑った。
「え?」
「毎晩毎晩、夜まであんなきな声をされて、こっちは眠れないんです」
美咲はが分からず、直を見る。
直は何も言わない。
理惠はさらに言った。
「週末なんてけ方まででしょう? にもご主に2回言いましたよね。さいお子さんがいるのに、しは周りのことも考えてください」
理惠は苛ったまま続けた。
「最初に注した、ご主、笑って『すみません、久しぶりだったもので』って言ったじゃないですか。だから私も夫婦のことにをすのは悪いとって、それ以言わなかったんです。でも先週も午2過ぎまで続いたから、もうできなくて」
「久しぶりだったもので」
その言葉だけが、美咲のに残った。
直と夫婦として最に緒に過ごしたのは、産のため実へ戻る。
広告
なくとも2ヶ以だった。しかも妊娠期に入ってからは体調も定で、そんな言葉を隣に言われるような活ではなかった。
美咲は泣いている悠真を抱き直した。
「すみません……でも、何のことでしょうか」
「何のことって、あなたたち夫婦のことでしょう?」
美咲は数秒、何も言えなかった。
そして、ゆっくり答えた。
「でも私……今、2ヶぶりに帰ってきたばかりですけど」
理惠の顔が変わった。
直の表も、その瞬だけはっきり固まった。
第1章 「じゃあ、あの女のは誰?」
理惠は美咲と直の顔を交互に見た。
「今……帰ってきたんですか?」
「はい。産で実に2ヶいました」
理惠は言葉を失った。
直が急にを挟んだ。
「吉田さん、たぶん何か勘違いしてますよ。友達が来てんでたことはありましたけど」
「友達?」
理惠の眉がいた。
「じゃあ、あの髪のい女のは誰なんですか?」
美咲の臓がきくねた。
直がすぐに言った。
「会社の輩です。何かで来たことがあって」
「何か?」
理惠はらかに納得していなかった。
「私、何度も見てますよ。夜に来て、朝ていくところ」
玄関の空気が変わった。
美咲は声がなかった。
直は苛ったように言った。
「吉田さん、もう遅いんで。その話、にしてもらえませんか」
理惠も、ようやく美咲の顔を見て自分が何を言ってしまったのか気づいたらしい。
「……ごめんなさい。私、てっきり奥さんだとって」
そう言ってをげ、隣へ戻った。
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
父の葬儀の日_夫は愛人を車に乗せて去った
48歳の由美は、3年間ほぼ1人で父を介護し、78歳の父を見送った。ところが葬儀の帰り、20年連れ添った夫・浩司は、愛人と思われる女性を助手席に乗せたまま、喪服姿の由美を雨の駅前で車から降ろす。「俺だって1日付き合って疲れてるんだ」。由美は泣かず、父が亡くなる2日前に渡してくれた古い革鞄を開いた。中にあったのは、1通の手紙、弁護士の名刺、そして夫の会社に関する資料。手紙の最初には、「浩司君に、私の通帳も印鑑も渡してはいけない」と書かれていた。なぜ父は、娘の夫をそこまで警戒していたのか。由美は父が最後に残した手がかりを追い始める。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場|不倫1.5萬字5 24 -
完結第13話
判を押さなかった妻
65歳の佳代は、38年間連れ添った夫・修司から突然、離婚届と一枚の写真を差し出される。 写真に写っていたのは、10歳になる男の子。夫が11年前から外で関係を続けていた女性との子どもだった。 「離婚して、残りの人生は好きに生きたい」 そう言いながら修司は、離婚後も佳代に家に残り、食事や洗濯、薬の管理まで続けるよう当然のように求めてくる。 しかし佳代は、すぐには判を押さなかった。 悲しくて離婚できなかったわけではない。夫が隠してきた金の流れ、削られていた義母の施設費、そして“新しい人生”の裏にある都合のいい計画を、すべて明らかにするためだった。 38年間尽くしてきた妻が、最後に守ろうとしたものとは――。人生逆転|夫婦|熟年離婚1.9萬字5 415 -
完結第13話
「田舎者」と見下した婚約者を実家へ招いたら、態度が一変した
地味で素朴なまゆは、恋人・光希から突然プロポーズされる。 しかし彼と女社長の母は、結婚相手を「家政婦」として値踏みし、田舎育ちのまゆを見下していた。そんな二人を実家へ招待すると、専属運転手、大豪邸、ワインセラー、ヘリポートまで現れ態度が一変。 だが、本当の審査はここからだった――。人生逆転|夫婦1.9萬字5 181 -
完結第14話
消えたアナウンサー
6年前、人気キャスターの水野紗季は突然姿を消した。残された車、動かない銀行口座、使われていないパスポート。そして失踪当時、彼女は妊娠32週だった。時が流れたある夜、同僚の高橋真紀のもとに海外から1枚の写真が届く。欧州の人体標本展に展示されていたのは、30代前半、妊娠32週と記された女性の標本。さらに写真の隅には〈MA-214〉という謎の管理番号が写っていた。偶然にしては一致しすぎている。真紀が標本の出所を追い始めると、6年前に紗季が調べていた別の妊婦失踪事件、病院、献体記録、そして消された取材素材が次々につながり始める。ガラスケースの中の女性は、本当に水野紗季なのか――。ミステリー|行方不明|不倫2.1萬字5 10 -
完結第20話
温泉旅行を贈った夫の本当の目的
結婚32年、家族のために働き続けた恵美子。ある日、夫から突然贈られた高級温泉旅行に喜ぶが、忘れたスマホを取りに戻ったことで、夫と若い愛人の恐ろしい本音を聞いてしまう。 「退職金も土地も奪って、最後は追い出せばいい」 しかし二人は知らなかった。 “何も知らない従順な妻”と見下した恵美子が、32年間の医療事務経験で培った知識と証拠収集力を武器に、すでに完璧な反撃を始めていたことを――。 愛も金も家も失うのは、一体誰なのか。夫婦|修羅場3.0萬字5 502 -
完結第19話
「孤児の貧乏女」と捨てた妻の本当の正体
「孤児院育ちの貧乏女」と蔑まれ、15年連れ添った夫・拓也に愛人と共に追い出された美桜。だが彼らは知らなかった――彼女の正体が、日本最大級の九条財閥の令嬢であることを。 離婚届に判を押した翌朝、500億円の契約解除、横領、裏切り、そして恐るべき犯罪計画まで次々と発覚。勝ち組を気取っていた夫たちの人生は、一夜にして崩壊する。 最後に笑うのは誰なのか――壮絶な逆転復讐劇が始まる。夫婦|不倫2.9萬字5 703 -
完結第13話
エレベーターの7時間
5月7日。 東京の大型デパートで突然の停電が発生した。 妊娠6か月の雪は、8人の乗客とともにエレベーターへ閉じ込められる。 救助が来るまでの7時間、彼女は自分の命よりも先に、高齢者や子供たちを守り続けた。 しかし、扉が開いた瞬間―― 救助隊長である夫・明が最初に抱き上げたのは、妻ではなく元恋人の桜だった。 「私と赤ちゃんは、もう彼を待たない」 意識を失う直前、雪が救助隊員へ託した結婚指輪と最後の言葉。 その日から、夫婦の関係は完全に崩れ始める。 なぜ明は、命の危険にある妊娠中の妻より、別の女性を選んだのか。 そして、10年間信じ続けていた桜との“過去”には、誰も知らない秘密が隠されていた。 救助記録と証言が明らかにした真実。 それは、雪が失ったのは夫だけではなく―― 自分を守るはずだった家族そのものだった。夫婦2.0萬字5 184 -
完結第11話
追い出された私が離婚届を渡した日、夫の人生は崩れ始めた
新築の我が家に突然押しかけてきた義両親一家。 七人もの親族に家を占領され、家事も生活費もすべて押し付けられる日々。さらに夫・進は「養ってやっている」と私を見下し、ついには「お前は赤の他人だ」と言い放った。 限界を迎えた私は、静かに離婚届を差し出す。 しかし、彼らはまだ知らなかった―― 私が本当に失うものなど何もないことを。 そして、夫が隠していた重大な秘密と、一族を待ち受ける衝撃の結末を……。 これは、踏みにじられた妻が、自分の人生を取り戻すまでの逆転劇。兄弟姉妹|嫁姑1.7萬字5 276