"父の葬儀の日_夫は愛人を車に乗せて去った" 第5話
浩司は突然、
「親父さんの実印、由美が預かったほうがいいんじゃない?」
と言った。
「どうして?」
「認症になったら面倒だろ」
父に認症の診断はなかった。
物忘れはしあったが、通帳も薬も自分で確認していた。
それでも浩司は、
「めに理したほうがいい」
と繰り返した。
由美はその。
夫が将来を考えてくれているとった。
全部逆だった。
由美はノートにいた。
父の預残を聞いた。
権利を聞いた。
実印の話をした。
を売ればいいと言った。
系列にすると。
浩司の会社の資繰りが悪化した期となっていた。
偶然ではなかった。
由美はその夜、森田へメールした。
『今まで浩司から聞かれたことを、いせる範囲でまとめました』
森田からすぐ返信が来た。
『切な記録です。ただし、今すぐ本に見せる必はありません。由美さんが何をっているかを、こちらから教える必もありません』
その文を読んだ。
由美は初めて気づいた。
今までの自分は。
聞かれたら答える。
頼まれたらす。
られたら謝る。
それが夫婦だとっていた。
でも。
答えないこともできる。
らないふりをすることも。
自分が何をっているかを。
自分で管理していい。
父が残した「嫌だと言える余」は。
だけの話ではなかった。
第7章 婆婆の「夫婦なんだから」
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3。
義母の幸子が父のへ来た。
74歳。浩司を1息子として育て、昔から息子の成功を自していた。
「由美さん、話があるの」
座るなり言った。
「浩司の会社、変なんですって」
「そうみたいですね」
「あなた、ってたの?」
「し」
幸子はため息をつく。
「こういうこそ夫婦で助けわないと」
由美は黙って聞いた。
「お父様もくなって、財産は由美さんが継ぐんでしょう?」
来た。
「まだ続きです」
「でも、とは残るんでしょ?」
「はい」
「だったら」
幸子はし声を落とした。
「会社を助けるために使うことも考えたら?」
由美はしばらく幸子を見た。
「お義母さん」
「何?」
「父が、夜に39度のをした、覚えてますか」
幸子は戸惑った。
「らないわ」
「そうですよね」
「何の話?」
「私、あの夜1でタクシー呼んで、父を病院へ連れていきました」
「浩司は?」
「寝てました。翌朝いからって」
幸子は何も言わない。
「父の介護用品のおがりないも、浩司はしてくれませんでした」
「会社が苦しかったんでしょう」
「そうですね」
由美は静かに聞いた。
「その、お義母さんは浩司に1度でも『お父さんを伝ってあげなさい』って言いましたか?」
幸子のが止まった。
「私は今まで、お義母さんからその言葉を1度も聞いてません」
「でも会社が苦しくなったら、父のおをせと言うんですね」
「そんな言い方」
「夫婦なんだから?」
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幸子は答えられなかった。
第8章 美穗からの話
その夜。
らない番号から話が来た。
「佐藤さんですか」
若い女性の声。
「はい」
「美穗です」
由美は瞬黙った。
「何でしょう」
「社の会社の件で、お話したくて」
葬儀の。
助席に座っていた女。
由美をの駅に残したまま、夫とった女。
「会社、今かなり厳しいんです」
「そうですか」
「社から、お父様の相続が終われば資の目処がつと聞いてました」
由美は笑いそうになった。
そこまで共していたのか。
「それで?」
「奥様が通帳とか類をさないせいで続きがまないって」
「浩司がそう言ったんですか」
「はい」
美穗の声には、妻に対する慮より苛ちがあった。
「会社が潰れたら社員も困ります。奥様にも責任あるといますよ」
由美は窓のを見た。
昨の自分なら、言い返せなかったかもしれない。
でも今は違った。
「美穗さん」
「はい」
「あなたが買おうとしているマンションの、どこからす予定なんですか」
話の向こうが静かになった。
田の資料にあった。
美穗名義で内覧していた築マンション。
申込として200万円がく予定だった形跡。
会社座から美穗の管理する仮払座へ、自然な送申請も残っていた。
「何の話ですか」
「分からないなら丈夫です」
「ちょっと待ってください」
「私に会社の責任を聞くに、ご自分のおの流れを確認したほうがいいといます」
由美は話を切った。
は震えていた。
でも。
切った。
しだけ息がしやすくなった。
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