みかん小説
本棚

"サービスエリアで消えた三人" 第2話

と話していた。

 編集された映像だけを見れば、疑う方が残酷にえた。

 佐倉は再を止め、の目撃証言覧を机に広げた。

 当、サービスエリアには「恵美らしき女性と子供を見た」という証言が件寄せられている。だが、改めて原調を読み直すと、確信の度いは驚くほどかった。

「似たような連れを見た気がする」

「女のが男の子を叱っていた」

「赤い着の女の子なら見た」

「黒っぽいワンボックスに乗った親子がいた」

 ところがテレビで族写真が繰り返し放送されたの追加聴取では、その部が「たぶんこのだった」「この子に違いないとう」という表現に変わっていた。

 記憶がから固くなっている。

 佐倉はそのことに、経って初めて気づいた。

 自分たちも当、写真をにして何百に同じ質問をした。

「このを見ませんでしたか」

 それは捜査として当然の為だったが、その問い方そのものが、々の曖昧な記憶に輪郭を与えた能性はあった。

章 倉庫の女

 篠原理は現、横浜内のさな産管理会社で事務員をしていた。歳をにした彼女は、佐倉が名刺を差ししただけで表くした。

「宮本さんの件ですね」

 名に言われ、佐倉は答えずに黒い旅鞄の写真を机へ置いた。

広告

「この鞄に見覚えはありますか」

「ありません」

 返事はかった。

 佐倉は次に、鞄から見つかった財布と子供の靴の写真を並べた。理は財布には目を止めなかったが、黒い鞄の角に付いた属製の古いネームホルダーを見たとき、指先がわずかにいた。

 沈黙が秒ほど続いた、理は写真から線をした。

「……それ、てきたんですか」

 佐倉は質問には答えなかった。

「どうして、この鞄をっているんです」

 理は唇を結び、そのの事聴取では何も話さなかった。

 しかし翌朝、自分から県警に話をかけてきた。

 、理に父親から相続した貸倉庫を管理していた。宮本修とは取引先を通じてい、事件のほどから関係を持った。修は妻とはうまくいっていない、いずれ婚すると話していたが、その約束が果たされないまま、理の方から別れを切りしたという。

「奥さんとお子さんがいなくなったの夜、ニュースを見てりました。次のの夕方、修さんが突然来ました」

 修は黒い旅鞄を持っていた。

「数だけ預かってくれ。絶対にを見るな、と言われました。私は嫌だと言いましたが、あのは普通じゃなかった。顔が悪くて、も震えていました」

について何か言っていましたか」

「仕事の類だと。

広告

それ以は聞くなと言われました」

 修は倉庫の奥へ入り、自分で板の部をして鞄を隠した。理所まで正確には見ていなかったが、翌、修から封筒を渡された。には万円が入っていた。

止め料だとったんですか」

「そのは、借か何かの類だといました。修さんのが厳しいことはっていましたから。でも数、テレビで奥さんの財布が見つかっていないとって、怖くなりました」

「それでも警察には言わなかった」

 理黙っていた。

「言えば、私と修さんのことも全部分かる。あの頃、私は再婚する話がありました。自分の活を壊したくなかった。それだけです」

 佐倉は責める言葉をみ込んだ。、誰もが自分の活を守るためにしずつ何かを見ないことにしたのだとすれば、そのさな沈黙がをどれほどくへ押しやったのか、まだ計算できなかった。

 なのは、理の告によってつの提が崩れたことだった。

 妻子を失った翌、宮本修は妻の財布と子供の靴が入った鞄を、かつてのの倉庫に隠していた。

章 片方の靴

 鞄から見つかった子供用スニーカーは、輝が旅に履いていたものと同型だった。母親の恵美がに購入した記録も残っていたが、は現物が見つかっていなかったため、捜査では「失踪に履いていた」

と推定されていたにすぎない。

 靴底の溝には、乾いたの粒子が固着していた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: