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"赤ん坊を背負った応募者" 第10話

しかし差しだけは揺らがなかった。

く腰を折って挨拶をした。

「田です」

は真っ直ぐに顔をげた。

「このような会をいただき、ありがとうございます」

文子はその挨拶を受ける瞬、胸ので再びドキドキと鼓するじた。

しかし文子は歯をいしばってを抑えた。

今はに流されるではなかった。

この青の才能が単なる偶然の致なのか、それとも本物の才性なのか。

それを静に見極めなければならなかった。

文子はたい仮面をつけたまま、顎で向かいの子を指し示した。

は背が起きないように、背筋を伸ばしたまま子の端にそっと腰かけた。

膝のに古い類鞄を置き、震える両を太ももので固く握った。

文子は机のに、優が提した図面を広げた。

昨夜、涙の跡が滲んでいたあの図面であった。

文子は図面の特定の箇所を指で指し示し、鋭い質問を投げかけた。

「田君」

文子は図面を見つめた。

「君が描いたこのの構造設定は非常に独創だ」

文子は顔をげた。

「だが、つ聞きたい」

文子は鋭い目を向けた。

「この商業区のビルと繋がる側セクションの空構造を見ると、の突がそのまま流れ込むリスクがある」

文子の声はくはっきりとしていた。

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反論を許さない厳しいみがあった。

「この部分に関する構造な補策や、君なりの具体な解決策があるなら、今説してみなさい」

同席していた役員2が、ありげな線を交わした。

経験も学歴もない無名の青に、会が直接技術な質問を投げかけること自体が異例のことであったからだ。

は乾いた唾をみ込んだ。

臓が狂ったように鳴った。

しかし、この質問に対する答えはすでににあった。

何回も現に吹かれながら、体で覚えた答えであった。

は背筋を伸ばし、はっきりと答えた。

「はい、会

は図面の部を指差した。

「その部分は、側のの突を防ぎつつ、には自然な気流を取り込むことができる、流線型の仕切り壁構造を導入すれば解決できます」

振り振りを交えた。

仕切り壁にわせて設計すれば、突は自然に迂回させつつ、は建物の奥まで引き込むことが能です」

の声は最初はし震えていたが、説むにつれて次第に力くなっていった。

目に自信が満ち、肩が張った。

自分が最も得とすることについて話す、この青は全くの別になった。

文子の差しが微かに揺らいだ。

同席していた役員たちも首を傾げながら、互いに顔を見わせた。

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淀みなくてくる青の答えは、教科で暗記した理論ではなかった。

差しを全で受け止めながら体得した、きた識であった。

文子は関を顔にさず、さらに段と鋭い求をした。

で言うのは簡単だが、実際の実現はまた別だろう」

文子はを差しした。

「端に理解できるように、こので直接図面に補のドローイングをして見せなさい」

これは事実の試験であった。

先だけでそれらしく見せかけているのか、本当に実力があるのか。

それを瞬で見極める過酷な検証であった。

はしばらく呼吸をえた。

そして頷くと、古い鞄から鉛を1本取りした。

消しゴムがすり減って属の枠だけが残っている鉛だ。

軸の端には歯型ででこぼこになった跡がある。

この1本の鉛で、夜を徹して何百枚もの図面を描いてきた。

の全財産であった。

は図面のをかがめ、全体を眺めた。

そして、鉛の先をに置いた。

カリカリとすり減った芯が、図面のを迷うことなくっていった。

定規も使わずに引く線であったが、しのブレもなく精密で正確であった。

で理論として学んだつきではない。

も厳しい現で汗を流し、何千回も図面を修正してきた実践のみ。

それが鉛の先に込められていた。

仕切り壁がきとき、が壁を伝って流れていく様子が目のに見えるようであった。

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