みかん小説
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"赤ん坊を背負った応募者" 第11話

文子は腕を組んだまま、その様子をじっと見つめていた。

最初は図面の完成度を確認するための静な線であった。

しかしが経つにつれて、文子の目は図面ではなく別の所に引きつけられていった。

線を引くに、鉛をわずかに傾ける独特の角度。

差し指と指のに鉛を挟む細かい指の位置。

曲線を引くに、無識に首を内側に曲げる癖。

そして、く集するたびに無識に唇を軽く噛む癖まで。

そのつが、文子の記憶の奥くに眠っていた誰かの姿を呼び起こした。

の頃、画用を広げて鉛を握っていた夫の

まさにそのであった。

世界の誰にも教わっていない夫だけの特の癖が、目のの青からきと伝わってきたのである。

文子の胸が激しく鳴り始め、目の奥がツンとくなった。

文子はで繰り返した。

「だめだ。静にならなければ」

文子は自分に言い聞かせた。

「ただ似ているだけだ」

しかし臓は、の言うことを聞かなかった。

隣にっていた役員の1が、優のドローイングにした。

役員はい声で囁いた。

「素らしいですね」

役員は図面を見つめた。

「あのスピードでフリーハンドのドローイングをこの精度でこなすとは。設計チームでもなかなかできることではありませんよ」

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別の役員がそれに答えた。

「学歴が全てではないことを証する青ですね」

役員は嘆の息を漏らした。

「このような実践覚は、現で10は経験を積まないとにつきません」

文子は腕を組んだまま、優のドローイングを見ろした。

線を引く独特の角度と鉛を握る細かい指の位置を、注く観察していた。

まさにそのであった。

文子の目が、優の指輪に釘付けになった。

文子は息が止まった。

指輪の表面は化で摩耗し、沢が失われていた。

しかし、縁に沿って精巧に刻まれた特の模様は、も消しることはできなかった。

灯のを受けてきらめくその独特のギザギザ模様。

それが、文子の瞳にはっきりと映った。

文子は瞬を鈍器で殴られたかのようであった。

の血が逆流するほどのきな衝撃を受けた。

文子は微かに震える自分のを、ゆっくりと持ちげた。

25、1たりとも、1度もしたことのない自分の薬指。

そこには、全く同じ指輪がはめられていた。

ギザギザ模様のの縁取り。

世界に2つしかしないペアリングである。

の指にはめられている指輪は、文子の指輪と完璧な対をなしていた。

25に世界に2つだけ特注した、まさにそのペアリングであった。

25、崖ので夫のたい遺体を収容した、薬指から跡形もなく消えていた指輪。

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転落の衝撃で失われたと警察が結論付けた、まさにその指輪である。

その指輪が今、目のに座っている30歳の青の、ひび割れてタコのできた指にはめられていたのである。

文子のでパズルが組みわさり始めた。

夫にそっくりな顔。

2だけの設計哲学を込めた図面。

を握る夫だけの癖。

そして、この世に2つしかない指輪。

偶然が4度なれば、それはもはや偶然ではなかった。

文子の唇が微かに震えた。

喉の奥からいものが込みげてきたが、声にはならなかった。

251度も崩れることのなかった鉄壁に々が入り、々になっていく。

文子のから、自分でも気づかないうちにかすれたうめき声が漏れた。

「そんなはずはない……」

文子は信じられないという顔をした。

「これは……」

その声はあまりにさく、隣に座っていた役員にも聞こえなかった。

しかし文子の全は、すでに嵐のに投げ込まれていた。

両目からい涙がポロポロと流れ落ちた。

指先がたく痺れ、から力が抜け始めた。

同席していた役員の1が異変に気づいた。

役員は用く尋ねた。

「会丈夫ですか?」

役員は配そうに文子の顔を覗き込んだ。

「顔が優れませんが」

文子は答えなかった。

いや、答えることができなかったのである。

目のがぼやけてかすんでいたからだ。

文子はもはや理性を保つことができず、よろめきながら席から勢いよくがった。

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