"「母に腎臓をくれ」と泣いた夫――手術直前、私は提供を取り消した" 第2話
夫の声は弾んでいた。
「あいつの実のを売らせれば、美穂の居もすぐ買えるしね」
夫のその言葉を聞いた瞬、私は自分の呼吸が完全に止まるのをじた。
の裏から、スッと血の気が引いていくのが分かった。
腎臓をもらうのは、彼らにとってただの通過点に過ぎなかった。
彼らの本当の目は、私がき父から相続し、切に守ってきた実のだったのだ。
私から健康な臓器を奪い、親が残した財産を奪い、用済みになれば捨てる。
それが、25連れ添った夫と、介護を続けてきた義母がした酷な答えだった。
私は柱のにち尽くした。
楽しげに笑いう3の声を聞き続けた。
普通なら、ここにびしていって泣き叫び、夫の胸を叩いていたかもしれない。
周りの目も気にせず、裏切りを問い詰めていたかもしれない。
でも、私はそうしなかった。
私は静かに呼吸をし、乱れた息をえた。
肩から提げたバッグのにある、通のい茶封筒。
そのみが、今の私を支える唯の方だった。
今ここで騒ぎてても、彼らは平然と言い逃れをするだろう。
「ただの友だ」と嘘をつく。
私を精神に定なドナーとして扱い、術をしようとするはずだ。
そんな簡単な終わらせ方は絶対に許さない。
私から全てを奪おうとしたたちには、それ相応の美しい台を用してあげなければならない。
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私は音をてないように引き返し、再び病へと戻った。
同の患者さんは眠ってしまったのか。
カーテンの向こうから、静かな寝息が聞こえてくる。
私は窓際の丸子に座り、ただ静かにそのを待った。
計の針が、ゆっくりとんでいく。
15分ほど経った頃、廊から楽しげな音と話し声がづいてきた。
「あそこのケーキ、母さんが退院したら3でこうね」
夫の声だ。
「そうね。楽しみだわ。く元気にならないとね」
義母の声だ。
病のドアがき、夫が子を押しながら入ってきた。
そのろには誰もいなかった。
あの美穂という女性は、私が来るに慌てて帰らせたのだろう。
子の義母と、夫の浩司。
2は部で静かに座っている私の姿を見た瞬、ピタリときを止めた。
まるで幽霊でも見たかのようだった。
「ゆ、由美。もう起きてたのか。いじゃないか」
夫の声は、らかにずっていた。
義母も先ほどまでの笑顔が瞬で消えった。
気まずそうに線を泳がせている。
私はゆっくりとちがった。
2の顔を交互に見つめた。
そして、できるだけ穏やかな、いつも通りの従順な妻の顔を作って微笑んだ。
「ええ、しめに着いてしまったの」
私は義母を見た。
「お義母さん、顔が良さそうでしました。お散歩楽しんできたみたいですね」
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私がそう言うと、夫はあからさまにホッとした表を浮かべた。
そして、きく息を吐いた。
私が何もらない、愚かで従順な妻だと信じきっているのだ。
「ああ。し庭の空気を吸わせていたんだ」
夫は作り笑いを浮かべた。
「由美もいよいよ午からだが、体調はどうだ?」
夫はわざとらしく、私の肩にを置いた。
そのの温もりが、今はただひたすらに気持ち悪く、吐き気がした。
私は夫の目を見た。
「丈夫よ。お義母さんのために私、頑張りますから」
私ははっきりとそう答えた。
義母はフイッと顔を背けた。
「よろしく頼むわね」
さな声でつぶやいた。
彼らは完全に勝ったつもりでいる。
私の体から腎臓を取りし、そのは財産を奪う。
そして、若いとしい活を始める。
その完璧なシナリオが、自分たちのい通りにんでいると信じて疑っていない。
私はバッグを膝のに引き寄せた。
そのにある茶封筒を、そっと指先で撫でた。
このの夫と義母は、まだる由もなかった。
その封筒のに、私と義母の臓器提供同をに戻す撤回通が入っていること。
そして、夫の貞為を証する決定な証拠が入っていること。
さらに数。
医師や親族が全員集まる術ので、彼らの描いた完璧なシナリオが音をてて崩れることを。
病の丸子に座りながら、私は静かに目を閉じた。
計の秒針の音だけが、の奥でたく響いている。
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