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"「母に腎臓をくれ」と泣いた夫――手術直前、私は提供を取り消した" 第5話

そして、慌てて引きしを閉めた。

「あ、いいや。会社で使う印鑑が見当たらなくて。気にしないで寝てていいよ」

そのの夫の顔は、ひどく引きつっていた。

普段、のものを探すは必ず私に聞いてくる夫が、その夜は違ったのだ。

夫が探していたのは、印鑑などではない。

私名義のの権利と、私の実印だったのだ。

私はに持っていた雑巾をく、本当にく握りしめた。

雑巾からたい滴が滴り、フローリングのに落ちた。

シャワールームの方からが止まる音が聞こえた。

夫がてくる。

私は慌ててを拭き取り、タブレットの画面が暗くなるのを確認した。

そして、何事もなかったかのように廊へとた。

髪をタオルで拭きながらてきた夫に、私は台所から声をかけた。

「おがり、たい麦茶む?」

私の声は、自分でも驚くほど平坦で落ち着いていた。

夫は無防備な笑顔で「ああ、もらうよ」と答えた。

私はグラスに麦茶を注ぎ、夫に渡した。

グラスの表面には、たい滴がっている。

夫が麦茶をんだのを見計らって、私は静かに言った。

「そういえば、斎のタブレット画面がっていたわよ」

その瞬、夫の喉がゴクリと鳴った。

彼はグラスを持ったまま、完全にきを止めた。

「えっ……見たのか?」

夫の声はく、微かに震えていた。

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「ううん。何か届いたみたいだったけど、すぐに画面が暗くなったから」

私がそう言って微笑むと、夫は骨に堵の息を吐きした。

「そうか。仕事のメールだろう。俺はちょっと斎で仕事の確認をしてくる」

夫は麦茶のグラスをテーブルに置き、逃げるように斎へ向かった。

私はその背を見つめながら、たいが胸を満たしていくのをじた。

あんなにも分かりやすく揺するなんて。

夫は私を本当に何も気づかない愚かな妻だとっているのだ。

私はテーブルに残されたグラスを片付けながら、さな満じていた。

彼らの嘘には、必ずどこかに綻びがある。

、私はさらにさな違を見つけた。

義母の部に洗濯したタオルを届けにったのことだ。

義母はベッドのに座り、何かの雑誌をに読んでいた。

私が部に入ったことに気づくと、義母は慌ててその雑誌を布団のに隠したのだ。

「お義母さん、タオルを置いておきますね。体調はどうですか?」

私が声をかけると、義母は自然にるい声で答えた。

「ええ、しだるいけれど丈夫よ。由美さんは無理しないでね」

普段なら「お茶がぬるい」だの「タオルの畳み方が悪い」だの文句を言う義母。

その義母が私を気遣うような言葉をにした。

しかし、その目は私を族として見てはいなかった。

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まるで価な部品を提供するだけの、便利な具を見ているような目だ。

「あなたは自分の体を切にしてちょうだい。術までは邪を引かないようにね」

その言葉の裏には、「私の腎臓を傷つけないで」という本音が透けて見えた。

私は布団の端からしだけ見えている雑誌の表に目をやった。

そこには『シニアも、最設備を備えた築マンション特集』という文字がかれていた。

全てが本の線で繋がった。

義母も夫の計画を全てっているのだ。

むしろ義母が主導して、夫とあの美穂という女を押ししているのかもしれない。

私から腎臓を取りし、元気になったは私のを売って3しいマンションにむ。

邪魔になった私にはわずかな切れを渡して婚届けを突きつける。

それが彼らが描いているの未来なのだろう。

私は義母にくお辞儀をして、部た。

た瞬、私のは自然と仏壇のあるへと向かっていた。

仏壇の真んには、穏やかに微笑む父の遺がある。

「お父さん」

私はさな声で呼びかけた。

「お父さんが残してくれたを、あのたちは奪おうとしています。でも絶対に渡しません」

私はお線をつけ、静かにわせた。

彼らが私から全てを奪おうとしているなら、私は彼らが番欲しがっているものを永に入らないようにするだけだ。

そして彼らの番の希望である腎臓も、直に戻してあげる。

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