"「母に腎臓をくれ」と泣いた夫――手術直前、私は提供を取り消した" 第8話
「はい。お義母さんのために、しっかりと体調管理をしていますから」
私はくをげ、たい病をにした。
病院の廊を歩きながら、私はバッグのにある名刺を探った。
先、弁護士の先から渡された調査員の名刺だ。
私は気のない階段の踊りにき、スマートフォンを取りした。
探偵の番号を入力する指は、もうしも迷っていなかった。
数回のコール音の、落ち着いたい男性の声が話から聞こえた。
「はい。探偵事務所の鈴です」
私は名乗った。
「先、弁護士の先からご紹介いただいた佐藤と申します」
私の声は、病院の静かな階段にたく響いた。
「ああ、佐藤さんですね。先からお話は伺っています。すぐにを始できますよ」
私は昨見つけたレストランのレシートのこと、夫のパターンをに伝えた。
「分かりました。ご主が相の女性と会っている現を押さえます。術のまでに必ず決定な証拠をにわせます」
鈴という調査員は力い声でそう約束してくれた。
「お願いします。術のに、どうしても彼らの計画の全てをりたいのです」
話を切った、私はたいコンクリートの壁に寄りかかった。
きく息を吐きすと、しだけ胸のつかえが取れたような気がした。
これでもう引き返すことはできない。
広告
夫と義母、そして見らぬ。
彼らが私をただのカプセルとして扱い、私のまで奪おうとしているなら。
私はそのカプセルを自らので砕き、彼らのの全てを終わらせてやる。
ただ耐えて泣くだけの妻は、もうこの世界にはしない。
しかしこの数、調査員の鈴さんから届いた茶封筒によって。
私は彼らのさらに恐ろしい計画の全貌をることになるのだ。
その夜、鈴さんから送られてきた1枚の写真を見た瞬、私の全の血が凍りついた。
術の夜、のは気なほど静かだった。
夫の浩司は「の術に備えて今はく帰るから」と朝は言っていた。
しかし夕方になって、「急な仕事のトラブルで遅くなる。先に休んでいてくれ」といメッセージが届いたきりだ。
おそらく今夜も、あの美穂という若い女性と緒にいるのだろう。
私は1、誰もいないリビングのダイニングテーブルに座っていた。
目のには夕方に調査員の鈴さんから速達で届いた、通の分い茶封筒が置かれている。
で触れると、そのみだけでにどれほどの事実が詰まっているのかが伝わってきた。
私はハサミを取りし、封筒の端をゆっくりと切り落とした。
からてきたのは、数枚の鮮な写真とUSBメモリ、そして数枚の報告だった。
広告
報告の1番にクリップで留められていた1枚の写真。
それを見た瞬、私の指先は氷のようにたくなった。
写真に映っていたのは、夫と美穂の姿だ。
所は見らぬレストランやホテルではない。
彼らがっていたのは、今私がいるこの。
き父が残してくれた、実ののだったのだ。
昼のるい差しの、夫と美穂は産業者らしきスーツの男性と緒にっていた。
夫は私のの壁を指差し、美穂は笑顔で何度も頷いている。
報告には鈴さんのいメモが添えられていた。
『ご主は産業者にこのの売却査定を依頼していました。妻の入院に話をめたいと話していたとのことです』
彼らは私が義母のために腎臓を提供する術台に乗っているに、私のを査定し、売りばす準備をしていたのだ。
私が退院してに戻る頃には、全てが終わっているように。
りよりも先に、の欲というものの底れぬ恐ろしさに私は言葉を失った。
夫は私を完全にただの「物」として扱っている。
臓器を取りしを奪い、用が済めば捨てる。
そこに25連れ添った妻へのなど片もなかった。
私は震えるを抑えながら、次の報告に目を落とした。
そこには鈴さんが喫茶で録音に成功したという、2の会話のき起こしが記録されていた。
文字の列を追うごとに、私の胸の奥にたい刃がゆっくりと突き刺さっていく。
広告
おすすめ作品
-
完結第12話
ゆで卵ひとつで嫁をやめた朝
夜勤明けの朝9時、16時間働いて帰宅した千明の前に置かれたのは、冷たいゆで卵が1つだけだった。 食卓には夫と義母のための朝食が並んでいる。炊きたてのご飯、味噌汁、焼き魚、小鉢。けれど、千明の分だけはなかった。 「食べられるだけ感謝しろ」 義母のその一言で、千明の中で8年間張りつめていたものが静かに切れる。 同居する義母の生活費、光熱費、食費、固定資産税まで支え続けてきたのは誰だったのか。夫は本当に何も知らなかったのか。そして、毎月の明細に隠れていた“もう一つの家族”とは――。 家を出て3日後、義母からの着信は100件に達した。 たった1つのゆで卵から始まった決別が、8年間隠されてきた家族の金と嘘を暴いていく。嫁姑|絶縁1.9萬字5 80 -
完結第26話
父子関係否定の白い封筒
ある日。 3歳の娘・唯の写真を見た義母が、冷たく言った。 「直樹には、全然似ていないわね」 やがて疑いは、美咲の“浮気”へ向かっていく。 そして義母は、唯にこう囁いた。 「大きくなるためのおまじないよ」 綿棒で口の中をこすり、息子・直樹の歯ブラシまで使って、勝手にDNA鑑定を依頼していたのだ。 数日後の日曜日。 夕食の席に白い封筒が置かれる。 結果は―― 「父子関係否定」 勝ち誇る義母。 しかし直樹は紙を見ても、美咲を責めなかった。 「結果は合ってるよ。俺は最初から知ってる」 なぜ夫は、娘と血が繋がっていないことを知っていたのか。 そして義母が暴いてしまった、息子が最も隠したかった秘密とは――。嫁姑3.9萬字5 119 -
完結第6話
帰宅した夜、夫の嘘を知った
里帰り出産を終え、生後2ヶ月の息子を抱いてようやく自宅へ戻った美咲。夫・直人との3人暮らしが始まると思っていたその夜、隣人が突然玄関を叩いた。「毎晩毎晩、夜中までいい加減にしてください」。さらに「ご主人には前にも2回注意しました」と告げられ、美咲は耳を疑う。この2ヶ月、美咲は一度も家に帰っていない。では、隣人が何度も見かけた“妻らしき女性”は誰だったのか。問い詰められた直人は「会社の後輩が1度泊まっただけ」と説明するが、翌朝、隣人の証言によってその嘘も崩れ始める。出産のため家を離れていた2ヶ月間、自分の家庭で何が起きていたのか――美咲は静かに真実を確かめ始める。嫁姑|夫婦|不倫8.8千字5 1174 -
完結第11話
追い出された私が離婚届を渡した日、夫の人生は崩れ始めた
新築の我が家に突然押しかけてきた義両親一家。 七人もの親族に家を占領され、家事も生活費もすべて押し付けられる日々。さらに夫・進は「養ってやっている」と私を見下し、ついには「お前は赤の他人だ」と言い放った。 限界を迎えた私は、静かに離婚届を差し出す。 しかし、彼らはまだ知らなかった―― 私が本当に失うものなど何もないことを。 そして、夫が隠していた重大な秘密と、一族を待ち受ける衝撃の結末を……。 これは、踏みにじられた妻が、自分の人生を取り戻すまでの逆転劇。兄弟姉妹|嫁姑1.7萬字5 335 -
完結第13話
優しい彼の家族計画
父の死後、支えになってくれた男性・健司と出会う。 彼は優しく、私の悲しみを理解してくれる人だと思っていた。 しかしある日、健司は泣きながら頼んできた。 「姉が夫の暴力から逃げてきた。少しだけ家に置いてほしい」 私は母と相談し、幼い娘を連れた彼の姉を受け入れる。 だが、それは始まりにすぎなかった。 姉は家事も生活費も負担せず、冷蔵庫を勝手に使い、家のことを調べ始める。 そして健司は突然言った。 「姉も家族になる。結婚したら、この家で一緒に暮らそう」 違和感を覚えた私は、姉の過去を調べ始める。 そこで知ったのは―― 彼女はDV被害者ではなかった。 以前にも同じ方法で他人の家に入り込み、生活を支配していたのだ。 さらに健司も、姉を助けるためではなく、最初から私の家を利用する目的で近づいていた。 信じていた優しさは、すべて計算だった。 家を奪われかけた私は、母とともに証拠を集め、法的手段へ進む。 「人を助けたい」という善意につけ込んだ家族の嘘。 失ったものを取り戻すため、私は本当の敵と向き合うことになる――。嫁姑2.0萬字5 737 -
完結第12話
DNA鑑定が暴いた元夫の大きな間違い
出産直後、山野リサは義母から「生まれた娘は本当に息子の子なのか」と身に覚えのない不貞を疑われ、さらに夫・ただしからも信頼を裏切る言葉を浴びせられる。DNA鑑定で親子関係が証明されても、二人は過ちを認めず、リサと幼い娘カナを家から追い出してしまう。 絶望の中、実家へ戻ったリサは両親の支えを受け、母として娘を守る決意を固める。努力を重ねてキャリアを築き、カナと共に幸せな人生を歩んでいた。 8年後、華やかな企業パーティーで再会したのは、落ちぶれた元夫と元義母だった。一方、成長したカナは優秀な少女へと成長し、リサには新たな人生を共に歩む大切な存在がいた。 かつて母娘を捨てた二人は後悔し、許しを求める。しかし、リサは過去に向き合い、毅然と決別する。 愛する娘を守り抜いた一人の母が、傷を乗り越え、本当の家族と幸せを手に入れる再生の物語。嫁姑|真相1.8萬字5 307 -
完結第16話
閉ざされた玄関の暗証番号
田園調布の豪邸で暮らす田中勇気と妻・桜。勇気は一人暮らしになった母・澄子を思い、妹の弓とともに同居を始める。しかし、その優しさは次第に家族の境界線を曖昧にしていった。 勇気が海外出張中、桜は高熱で倒れながらも義母の来客対応を強いられる。初めて「できません」と拒んだ彼女に、澄子は怒りを募らせ、桜本人の意思を無視して荷物をまとめ、家から追い出してしまう。 夫に心配をかけまいと黙って耐える桜。しかし異変を感じた勇気は急いで帰国し、隠されていた真実を知る。 妻を守れなかった自分の過ち、そして母が家族への感謝を「支配する権利」と勘違いしていたことに気づいた勇気は、家族の在り方を見直す決断をする。 本当の家族とは何か。愛情と依存の違いを描く、再生と絆の物語。嫁姑|第二の人生|修羅場2.4萬字5 228 -
完結第15話
消えた実印
嫁が実印を隠した本当の理由。 姑が泥棒だと思った相手は、家を守るために動いていた。 70歳の誕生日を前に、仏壇から消えた大切な実印。 前日に家へ来ていたのは、長男の嫁・香織だけだった。 家の売却を調べていた嫁。 勝手に印鑑を持ち出した嫁。 文江は、すべてを裏切りだと思っていた。 しかし、弁護士から届いた一通の書類によって、隠されていた真実が明らかになる。 母の家を売ろうとしていた本当の人物は誰なのか。 そして、嫁が命をかけて守ろうとしていたものとは――。嫁姑|親不孝2.3萬字5 661 -
完結第12話
朝5時の鬼電話
朝5時。 橋本日向のスマートフォンに、義母・京子から鬼のような電話がかかってきた。 「息子と0歳児の娘を放置して朝帰り? あなた、母親失格よ」 しかし日向には、何の覚えもなかった。 生後6か月の娘を育てながら、毎日夫の弁当を作る彼女に、夜遊びする時間など存在しない。 それなのに近所では、 「幼い子供を置いて遊び歩く妻」 という噂が広がっていた。 夫・大輝は妻を信じ、真相を確かめるため実家へ向かう。 そこで見つけたのは―― 日向と同じ服。 日向と同じバッグ。 そして、自分たちの写真を改ざんした証拠。 すべての裏にいたのは、夫の妹・明里だった。 なぜ彼女は義姉になりすまし、人生を壊そうとしたのか。 兄への歪んだ執着。 家族だから許されると思い込んだ狂気。 朝5時の一本の電話から始まった騒動は、やがて夫婦が本当に守るべきものを明らかにしていく。 愛情と執着を履き違えた家族の嘘が、静かな日常を崩していく――。嫁姑1.8萬字5 114 -
完結第13話
実印を押さない母
3年前、「半年だけ」という約束で始まった息子一家との同居。 夫を亡くし、一人暮らしだった67歳の佐伯佳代子は、息子夫婦と孫たちを自宅に迎え入れた。最初は賑やかで温かな暮らしだったが、いつの間にか食事、洗濯、孫の送迎、生活費の負担まで、すべてが佳代子の“当然の役目”になっていく。 そんなある日、息子が何気ない口調で切り出した。 「母さん、この家さ。そろそろ俺の名義にしない?」 家族だから。どうせ将来は相続するから。リフォームのためだから。 そう説明されながらも、佳代子の胸には小さな違和感が残る。そして偶然見つけた一枚の書類には、名義変更後の家の売却と、佳代子を高齢者住宅へ移す計画が書かれていた。 家族のために黙ってきた母が、初めて自分の人生を選び直す。 名義変更の日、佳代子が判子を押したのは、家を渡す書類ではなかった――。嫁姑|親子関係|金銭問題2.0萬字5 131