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"「母に腎臓をくれ」と泣いた夫――手術直前、私は提供を取り消した" 第10話

「由美、もう起きてたのか。いじゃないか」

焦る夫の声に、私はいつも通りの従順な妻の顔を作って微笑んだ。

ここから先は、彼らが決して予できない残酷な現実が始まるのだ。

の空気はひどくく、息苦しいものだった。

子からベッドに戻った義母は、無言で布団を引きげた。

夫の浩司は私の線から逃げるように窓のを眺めている。

の患者さんは気まずそうにベッドのカーテンを閉めてしまった。

に当たりすぎたかな」

夫はわざとらしく咳払いをして、沈黙をごまかそうとした。

私は丸子に座ったまま、義母の枕元にあるピンクのカーディガンを見つめた。

先ほど庭で、あの若い女美穂が義母の肩に優しくかけていたものだ。

「お義母さん、そのカーディガンとても素敵ですね」

私が静かにそう言うと、義母の肩がビクッとねた。

「ああ、これね、病院の売で浩司に買ってもらったのよ。し肌寒かったから」

義母は目を泳がせながらな嘘をついた。

私はゆっくりとがり、義母のベッドにづいた。

そしてカーディガンの袖にそっと指を触れた。

「そうですか。でも病院の売で売っているものにしては随分らしいデザインですね」

私はそこで言葉を区切り、夫の顔を真っ直ぐに見つめた。

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「それに、とても甘い若い女性のの匂いがします」

その瞬、夫の顔からスッと血の気が引くのが分かった。

義母もハッと息を呑んでカーディガンを引き寄せた。

「そ、それはすれ違った護師さんのが移ったんじゃないか」

夫は引きつった笑いを浮かべ、慌ててカーディガンを袋に押し込んだ。

「最の若い護師はなんかをつけてけしからんな」

夫の苦しい言い訳に、私はそれ以追及しなかった。

「そうかもしれませんね。病院には々な入りしますから」

私が静かに微笑むと、夫は骨に堵の息を吐きした。

が嘘をねる姿を見るのは、いのほか滑稽なものだった。

彼らは自分たちの嘘が完璧だと信じ込んでいるのだ。

私が何もらない、ただの都の良い妻だと疑っていない。

計の針は午1を指していた。

に入るまであと1ほどだ。

沈黙が続く病で、義母が嫌そうな声でいた。

「由美さん、あなたちゃんと体調は管理できているんでしょうね」

義母は私を睨みつけ、苛ったようにシーツを握った。

「万が、あなたの数値が悪くて今術が延期にでもなったらどうしてくれるの?」

義母は文句を言い続けた。

「私は刻もくこんな退屈な病院からたいのよ」

自分の命を救ってくれる相に対する言葉とは到底えない。

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そこには私への謝やいやりは微もなかった。

「私の体はあなたがきるための都の良い部品ではありませんよ」

私が静かに、けれどはっきりとそう言うと、病の空気が再び凍りついた。

夫が慌てて振り返り、声を荒げた。

「由美、なんてこと言うんだ!」

夫は義母を庇った。

「母さんはなんだよ。で神経質になっているだけじゃないか」

夫は私をたい目で見ろした。

「ドナーになる君がそんなたい言い方をするなんて信じられないな」

まるで私がひどい嫁であるかのような態度だ。

私はバッグの持ちく握りしめ、静かに言葉をみ込んだ。

部品。

先ほど庭で、夫と美穂が笑いながら話していた言葉だ。

『あいつは母さんを助けるためのただの部品だよ』

夫は美穂のを握りながら、はっきりとそう言っていた。

25、私がこの族に尽くしてきた結果がただの『部品』だったのだ。

私は呼吸をして表を消した。

「すみません。私もで緊張しているみたいです」

私がげると、義母はフンとを鳴らしてそっぽを向いた。

その、夫のスマートフォンのバイブレーションが鳴った。

画面を見た夫の顔が瞬だけパッとるくなった。

「あ、会社からだ。急ぎの件みたいだからちょっと廊話にてくるよ」

夫はそう言って逃げるように病ていった。

会社からの話ではないことは、私には痛いほど分かっていた。

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