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"「母に腎臓をくれ」と泣いた夫――手術直前、私は提供を取り消した" 第12話

そして探偵から渡された、夫と倫の証拠写真。

さらに私の実を勝に売却しようとしているの調査報告

私は父の名かれたの権利の写しを、指先で静かになぞった。

この類の束が、私のこれからのを守るためのしい命だった。

「佐藤さん、お着替えは済みましたか?」

ドアの向こうから護師さんの声がした。

「すみません。し緊張していて、あと5分だけ1にしてもらえませんか?」

私が落ち着いた声で答えると、護師さんは優しく言って音をざけていった。

「無理もないですよね。ゆっくりで丈夫ですよ」

私はドアにしだけづき、廊の様子にを澄ませた。

のすぐは、へと向かうための広い待スペースになっている。

そこには子に乗った義母と夫の浩司、そして先ほど病院に到着したばかりの夫の妹である恵子の声が聞こえてきた。

「お母さん、いよいよだね。これでやっとあの面倒な事制限からも解放されるわね」

恵子の声は弾んでいた。

彼女もまた、親族会議のには逃げ回っていたくせに、私がドナーになると決まった途端に態度を変えた1だ。

「そうね。かったわ。由美さんの作るいご飯、本当にまずくて吐きそうだったのよ」

義母は声を潜めることもなく、笑いながらそう答えた。

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「あの子の取り柄なんて健康な体くらいしかないんだから。これくらい当然よね」

「でもさ、浩司ちゃん。由美さんが急に逃げしたりしなくてよかったね」

恵子の言葉に、夫の浩司がで笑う音が聞こえた。

「あいつが逃げるわけないだろう。俺が『君だけが頼りだ』ってげたら泣いてんでいたんだから。あいつは昔から族って言葉にい単純な女なんだよ」

「お兄ちゃんも悪いね。でも、これで予定通りむんでしょう?」

「あいつがで麻酔で眠っているに連絡を入れる。来週にはあのの正式な査定がるはずだ。駅に建つ築マンションが俺たちのしいになるんだ」

「由美さん、を取られたらどうするの?」

「術で体がっているに、慰謝料代わりにをもらうって丸め込むさ。文句を言ったら、母さんの莫な治療費を請求してやる」

夫たちの会話はあまりにも無防備で酷だった。

私がドアの向こうで全てを聞いているともらずに。

私はドアのノブにをかけ、そのたい属の触を確かめた。

りでが震えることはもうない。

彼らが気になればなるほど、で待ち受ける絶望がくなるだけだ。

それは私にとって、静かな満でもあった。

が勝ったとい込んでいるこの瞬にこそ、私の復讐は完成にづいているのだ。

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「そういえば浩司、美穂さんはどうしたの?」

義母がさな声で夫に尋ねた。

「あそこの角の自販にいるよ。に入るのを見届けたら、俺たちのマンションに帰って待っているって」

「そう、本当にできたお嬢さんね。あの子がく正式なうちの嫁になってくれたらいいのに」

私はスマートフォンを取りし、画面をタップした。

カメラを起し、ほんのしだけいたドアの隙から廊の様子を伺った。

夫の線の先、廊の奥のにピンクのカーディガンを着た美穂の姿があった。

彼女は夫に向かってさくを振っている。

夫もまた、誰にも見られないように顎を引いてさく頷き返した。

私はその決定な瞬を、無音カメラでしっかりと撮した。

これで今この病院にが同席していたという、言い逃れのできない証拠がつ増えた。

シャッターを切るたびに、私ので25続いてきた『由美』という妻の役割が静かにんでいくのをじた。

145分、廊し騒がしくなった。

術を担当する医師たちと、病院の倫理委員会のスタッフが到着したようだ。

体移植では、術直にドナーとレシピエントの最終確認がわれる。

しでも同審な点や制があれば、医師の判断で術を即座に止めることができる極めて続きだ。

「浩司さん、子さん、準備はよろしいですか?」

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