"「母に腎臓をくれ」と泣いた夫――手術直前、私は提供を取り消した" 第17話
ましてや今この病院に彼女が来ていることなど、絶対に気づかれているはずがない。
彼らの完璧な自信が音をてて崩れ始めた瞬だった。
エレベーターの扉が静かにいた。
ここから先は、彼らが決して逃げすことのできない完全な密での裁きが始まる。
私が廊の奥を指差した瞬、空気が凍りついた。
全員の線が、自販売のに集した。
そこには、隠れきれずに震えている、ピンクのカーディガンを着た女性の姿があった。
の美穂だ。
「あの方も、この話しいには欠かせない物です」
私が静かにそう言うと、くにいた護師さんが様子を見に歩きした。
「あの、すみません。こちらへ来ていただけますか?」
護師さんに優しく促され、美穂はおずおずと私たちのに姿を現した。
彼女の顔は青ざめ、すがるような目で夫の浩司を見つめている。
しかし夫は歯をいしばったまま、彼女と目をわせようとしなかった。
「浩司君……」
美穂がさな声で呼びかけた。
その親しげな呼び方に、妹の恵子が怪訝な顔をした。
「お兄ちゃん、この誰なの?なんでの名で呼んでるの?」
恵子の問いに、夫はや汗を流しながら黙り込んでしまった。
子の義母も気まずそうに線を泳がせている。
「詳しいお話は会議で伺いましょう」
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倫理委員会のスタッフが徹な声でそのを収めた。
私たちはエレベーターに乗り、3階へと移した。
案内されたのは、族会議として使われている広い特別病だった。
部の央にはきな机があり、無質なパイプ子が並べられている。
い消毒液の匂いが、この部の緊張をさらにめていた。
医師と倫理委員会のスタッフが机の片側に並んで座った。
その向かい側に、夫、義母、恵子が横列に座った。
私は彼らと向かいうように、1で席に着いた。
まるで裁判の被告と原告のようだ。
私は黒いバッグを膝のに置き、そのが来るのを静かに待った。
「では佐藤さん、先ほどの言葉のを説していただけますか?」
担当の医師が元のカルテを閉じながらをいた。
「まず、そちらの女性はどなたですか?ご親族ではないようですが」
医師の鋭い線が美穂に向けられた。
美穂はビクッと肩を揺らし、夫の袖をさく引っ張った。
夫は慌てて咳払いをして姿勢を正した。
「先、彼女は私の会社の部です。今は母の見いに来てくれただけなんです」
夫はなるべく誠実そうな声を作って答えた。
「妻は最、術のプレッシャーでひどく神経質になっていまして。私が若い部と話しているのを見て浮気だと勘違いしているんです」
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夫のその言葉に、美穂も慌てて頷いた。
「そうです。私はただお世話になっている先輩のお母様が配で……」
2の息のった嘘に、子の義母もすぐに乗っかった。
「先、この子の言う通りです。わざわざお見いに来てくれた優しいお嬢さんをだなんて。この嫁はがおかしいんですよ」
義母は私を指差し、げさにため息をついて見せた。
私は反論しなかった。
ただたい机のに両を置き、3の顔を交互に見つめた。
彼らは必に『おかしな妻の妄』というストーリーを作りげようとしている。
私がここで鳴り散らせば彼らのう壺だ。
「ほら、やっぱり緒定だ」と言われて終わるだけだ。
だから私はどこまでも静に、事実だけを突きつける。
「会社の部の方ですか?」
私が静かにをくと、部は再び静まり返った。
「それならなぜ、庭でお義母さんは彼女のを握っていたのですか?」
私の問いに、義母の肩がピクリといた。
「なぜお義母さんは、彼女に『本当の娘になってくれたらよかった』と言ったのですか?」
「そ、それはただの世話よ!」
義母は声を荒げ、必にごまかそうとした。
「優しい言葉をかけてくれたから、お世辞で言っただけじゃないの!」
「そうですか。ではなぜあなたは、私の実のを売る話をしていたのですか?」
私がその言葉をにした瞬、夫が子から腰を浮かせた。
「でたらめを言うな!誰がそんな話をしたって言うんだ!」
夫は机をドンと叩き、私を威圧しようとした。
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