みかん小説
本棚

"「母に腎臓をくれ」と泣いた夫――手術直前、私は提供を取り消した" 第19話

「浩司さん」

私の静かな呼びかけに、夫の鳴り声がピタリと止まった。

「写真が成だというのなら、これから流す声も私が成して作ったものなのでしょうか?」

私がスマートフォンの再ボタンに指を乗せた瞬、夫の顔かららしいが全て消えった。

彼はようやく気づいたのだ。

自分がこの数ヶ、私ののひらので踊らされていたことに。

そして私から全てを奪おうとしたその所で、自分自が全てを失う運命にあることに。

私がスマートフォンの画面をタップすると、静まり返った病にくぐもった音声が流れ始めた。

し雑音は混じっていたが、その声の主が誰なのかはこのにいる全員に瞬で分かった。

術が終わったらすぐに実の権利探させる。あいつがベッドで寝込んでいるにな』

スピーカーから響いたのは、違いなく夫の浩司の声だった。

夫は子に座ったまま、まるでに打たれたように直している。

くあのを売って、私たちのおにしましょうね。お義母さんも待ってるわ』

美穂の甘ったるい声が続く。

先ほどまでただのお見いだと嘘をついていた彼女の言葉に、倫理委員会のスタッフが眉をひそめた。

『ああ、分かってる。母さんも美穂と緒にむのを楽しみにしているからな。

広告

ドナーなんてただの部品だ。使い終わったらさっさと切れを渡して捨てるさ』

そこで音声はプツリと途切れた。

は息をする音すら聞こえないほどの沈黙に包まれた。

言い逃れなど絶対に能なほど鮮な録音である。

つい数、この病院の階段の踊りで交わされたばかりの会話。

その事実が、彼らの全ての嘘を々に打ち砕いた。

「お兄ちゃん……」

静寂を破ったのは、妹の恵子の震える声だった。

「お兄ちゃん、これ、本当にお義姉さんのを奪うつもりだったの?」

恵子は信じられないものを見る目で兄を見つめた。

夫はを半きにしたまま、うわ言のように首を横に振っている。

「違う……これはその……」

言葉が続かない。

どんな言い訳も通用しないことを、彼自番よく分かっているからだ。

倫理委員会のスタッフが々しい声でいた。

「浩司さん、先ほどの音声はあなたがこの女性と話していたもので違いありませんね」

夫は答えることができず、ただ虚ろな目で机ののスマートフォンを見つめていた。

「ドナーをただの部品と呼び、に財産を奪う計画をてていた。これは倫理に到底許されるものではありません」

担当の医師もりを滲ませた声で言った。

「私たちは尊い命を救うために全力を尽くしています。

広告

しかし、あなた方はその医療を財産奪の具として利用しようとした」

医師の厳しい宣告に、美穂は両で顔を覆いしゃくりげて泣き始めた。

しかしその涙は反省から来るものではない。

自分の計画が完全にバレて窮たされたことへの、保の涙だ。

その子の義母が狂ったように叫びした。

「私はらない!浩司が勝にやったことよ!」

義母は自分の息子を指差し、全ての責任を押し付けようとした。

「私はこの女のことなんて、本当にただの部だと……」

「お義母さん」

私は静かに義母の言葉を遮った。

庭であなたは、この方のを撫でていましたね」

義母の喉がヒュッと鳴った。

「『あの気の利かないたい女の腎臓をもらうなんて本当は嫌だった』。そう言って3で笑いっていたではありませんか?」

「そ、それは……」

「それに私がいないに、私の部の引きしから通帳や権利を探そうとしていたこともっています。夫だけでなく、あなたも共犯です」

義母は完全に言葉を失い、子のさく震え始めた。

自分の命を救うはずだった嫁を裏切り、その結果として自分の首を絞めた。

その残酷な現実にようやく気づいたのだろう。

私は机のに置いていたい封筒から、最の1枚を取りした。

弁護士の先緒に作成した正式な類だ。

私はそれを、倫理委員会のスタッフのに静かに差しした。

「先方。私はこれまで純粋に族を救いたいといういで、厳しい検査や事制限に耐えてきました」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: