"届かなかった母の手紙" 第3話
「京に着きました」
「はきいです」
「が痛いけど頑張っています」
そんなことを、さな字で便箋へいた。
母からの返事を待った。
来なかった。
次のには、寮の様子をいた。
同の女たちのこと。
の堂で初めてべた料理のこと。
京には夜になってもるい所がたくさんあること。
それでも返事はなかった。
3通目をいた、芳子は最にしきな字でいた。
「母ちゃんも元気ですか。たまにはをください」
だが、それにも返事はなかった。
正がづくと、寮のは故郷から届いた荷物でにぎやかになった。
餅。
漬物。
菓子。
乾物。
編みのもの。
族からの。
皆がしずつ持ち寄って分けった。
「芳ちゃんもべなよ」
そう言われるたび、芳子はるく笑った。
「うちは貧乏だから、送る物なんてないんだよ」
冗談のように言えば、周囲もそれ以気にしなかった。
本当は物など欲しくなかった。
餅も。
菓子も。
しいもいらない。
ただ1枚、
「元気か」
それだけいた葉が欲しかった。
がけてもは来なかった。
昭37の。
京ではたいが吹くが続き、芳子はと寮を往復するだけの毎を送っていた。
その頃、邪をこじらせた。
最初は喉が痛い程度だった。
忙しい期だったこともあり、芳子は休まず働いていた。だがある朝、作業に急に目のが暗くなり、同僚に支えられた。
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を測るとだった。
芳子はの医務へ運ばれ、そのまま3寝込むことになった。
体がく、関節が痛んだ。
医務のい井を見ながら、芳子は何度も母をいした。
子どもの頃にをした、ハルは夜通し濡れた拭いを額へ載せてくれた。
「むか」
「寒くないか」
何度もそう聞いてくれた。
今は誰もいない。
もちろん寮母も護をしてくれた。
同の仲も、交代で様子を見に来た。
それでも母とは違った。
芳子のがなかなかがらないのを配した寮母は、田のへ報を打った。
「お母さんにもらせておいたからね」
その言葉を聞いた、芳子の胸にさな期待がまれた。
今度こそ何か来る。
病気になったとれば、さすがにをくれるはずだ。
報かもしれない。
それとも話をかけてくるかもしれない。
芳子は待った。
1。
2。
3。
ががり、起きがれるようになっても、何の連絡もなかった。
「田から何か来てませんか」
芳子はとうとう寮母へ尋ねた。
寮母は申し訳なさそうに首を横に振った。
「まだ何もないねえ」
その瞬、芳子ので何かが切れた。
しいというより、たくなった。
もう期待するのをやめよう。
母は自分のことなど気にしていない。
京へした点で、役目は終わったとっているのかもしれない。
「もういい」
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布団ので芳子はさく呟いた。
「私のことなんか、どうでもいいんだ」
それから、芳子は自分からもをかなくなった。
最初はだった。
母がかないのなら、自分もかない。
けれどが経つと、は寂しさを覆い隠すためのものになった。
周囲には平気な顔をした。
「実にかないの?」
同の女に聞かれたも、芳子は肩をすくめた。
「くことないもん」
本当は、きたいことはいくらでもあった。
仕事で褒められたこと。
しい靴を買ったこと。
京で初めて映画を見たこと。
寮でできた友達のこと。
そして何より、
「母ちゃん、どうして返事をくれないの」
そうきたかった。
けれど、その文だけはどうしてもけなかった。
になり、芳子が京へてから1が過ぎようとしていた。
の活は、いつのにか常になっていた。朝6に起き、布団を畳み、作業に着替え、同じを歩いてへ向かう。
芳子はもう、扱いされることもなくなっていた。
仕事を覚えれば、体のつらさは軽くなった。
けれど母への気持ちは、軽くならなかった。
をかなくなってからも、曜になると寮の玄関を気にしてしまう。
名が呼ばれるはずはない。
そういながら、だけは寮母の声を追っていた。
そんなある、芳子は寮母の部へ呼ばれた。
仕事に関する簡単な確認だった。
用事を済ませて退しようとした、机の端に何枚かの類がねてあるのが目に入った。
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