"届かなかった母の手紙" 第5話
母はきている。
毎も送ってくる。
けれど4、度もをくれなかった。
病気になっても返事すらなかった。
そのことをどう説すればいいのか分からなかった。
しばらくして、芳子はさな声で言った。
「私、母はいないとってるから」
隆夫はそれ以聞かなかった。
芳子も話さなかった。
本当は、そんなふうに言い切るたび胸が痛んだ。
母を嫌いになったわけではない。
忘れたわけでもない。
むしろ忘れられないからこそ、いないとわなければ苦しかった。
結婚について具体な話がみ始めた頃、寮をる準備もしずつ始まった。
芳子は自分が過ごした4を振り返るようになった。
15歳だった自分。
初めての仕事。
初めての料。
で寝込んだ。
を待ち続けた曜。
「本芳子」と呼ばれることのなかった郵便の。
それらは全て、母へのりと緒に記憶へ残っていた。
そんなあるの夕方だった。
仕事を終えた芳子が寮へ戻ると、玄関くで寮母が待っていた。
「芳子ちゃん」
「はい」
「あなたに会いたいってが来てるよ」
「私に?」
芳子は首を傾げた。
隆夫なら寮の決まりをっている。突然来るようなではない。
故郷から訪ねてくる友もいなかった。
「誰ですか?」
「田から来たらしいよ」
その言で、芳子のが止まった。
母。
最初に浮かんだのは、その顔だった。
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けれど、すぐに打ち消した。
母が突然京まで来るはずがない。
玄関へ向かうと、そこには60歳を過ぎた男が座っていた。
膝のに古い箱を載せている。
顔を見た瞬、芳子は記憶をたどった。
子どもの頃からっているだった。
のさな郵便局で働いていた佐々である。
「佐々さん……?」
男は顔をげた。
「きくなったなあ、芳ちゃん」
懐かしい田の言葉がへ入った。
それだけで、芳子の胸が瞬揺れた。
しかし佐々の膝にある箱を見た途端、構えた。
「どうしたんですか」
佐々は箱を両で持ちげた。
「これな、お母さんから預かってきた」
芳子の表が固まった。
「いりません」
即座に答えた。
佐々は何も言わなかった。
「今さら何なんですか」
自分でも抑えられないほど、声がくなった。
「4ですよ」
佐々は黙って聞いていた。
「4、回もをくれなかったんですよ。私が病気になっただって、報がったのに返事もなかった」
「芳ちゃん」
「おは送ってきました。ってます。でも私はおが欲しかったんじゃない」
言葉が止まらなくなった。
4、胸の奥に押し込めていたものが気にてきた。
「枚でよかったんです。元気かって、それだけいてくれればよかった」
佐々はしばらく芳子を見ていた。
それから膝のの箱へを置いた。
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「だから、これを見てほしいんだ」
「いりません」
「まあ、けてみなさい」
佐々はゆっくり蓋をけた。
芳子の言葉が止まった。
箱のには、何枚もの葉がぎっしりと詰められていた。
芳子は箱のを見つめたままかなかった。
番にある葉は、黄ばんでいた。
そのにも葉。
さらにそのにも。
数枚どころではなかった。
何枚もある。
「何ですか、これ」
やっとた声は、自分でも分かるほど震えていた。
佐々は答えず、番の葉を取った。
切は貼られていない。
宛名も完全にはかれていなかった。
表ではなく、裏側に、震えるような平仮名があった。
「よしこへ」
たった4文字。
文字のきさは揃っていない。
「よ」はし傾き、「し」と「こ」のも自然に空いていた。
芳子はその字を見た瞬、息を止めた。
母の字だった。
ではない。
けれど、にいた頃、袋の端などへかれていた自分の名と同じ癖があった。
「母ちゃんが……?」
佐々が静かに頷いた。
「そうだ」
芳子は葉へを伸ばしかけ、途で止めた。
「どうして……これ、全部?」
佐々は箱をそっと芳子のへ置いた。
「いたんだよ。おのお母さんが」
「でも、届いてない」
「送らなかったからな」
「何で?」
芳子の声に、再びりが混じった。
こんなにいていたのなら、なぜ1枚も送らなかったのか。
佐々はし俯き、昔をいすようにゆっくり話し始めた。
「芳ちゃん、お母さんが字をあまりけなかったのはってたか」
芳子は答えなかった。
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