"映画の夜に消える少女" 第11話
美代には、その横顔が以よりしだけ柔らかく見えた。
やがて映画が終わる。
灯がつく。
がちがる。
映写が止まる。
カタカタという音も消える。
けれど、そこで全てが終わるわけではなかった。
帰りで誰かが映画の面を話す。
翌、畑でまた話す。
見られなかったへ伝える。
昔の映像なら、そこに映っていたの名を教える。
「あのは、こんなだった」
「昔はよく笑った」
「若い頃はるのが速かった」
そんな言葉がなるたび、画面のの々はもう度き始めた。
美代にとって母のも、そうだった。
くなったは戻らない。
7歳のに失ったを取り戻すこともできない。
それでも、母がきていた事実まで消えるわけではなかった。
い浴で笑っていた。
友にからかわれて顔を隠した。
転んだ子どもを見れば、撮でもっていった。
笑うにはし首をへ傾けた。
美代は、その全部を覚えていた。
そして自分が笑う、ふと首がへ傾くことに気づくたび、あの夜の弥平の言葉をいした。
――それ、おも同じだな。
昭32のでは、1本の映画を見るために々が同じ講堂へ集まった。
今のように、好きなに好きな映像を見ることなどできなかった。
だからこそ1本のフィルムを、のが緒に見た。
同じ面で笑い、同じ面に驚き、映が終わってからもその話をした。
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映写から伸びる細いは、い都会やらないを見せてくれるだけではなかった。
には、過ぎてしまったを連れてくる。
もう度と会えないを、ほんの数秒だけ目ので笑わせる。
目の見えないには、誰かの言葉がスクリーンになる。
記憶しか残っていないには、その記憶を聞く誰かが観客になる。
美代が毎弥平へ届けていた映画と、弥平が美代へ返したの記憶。
形は違っても、きっと同じものだった。
誰かが見たものを、誰かへ渡す。
誰かが覚えていることを、次のへ伝える。
そうして物語は残っていく。
講堂のい幕からが消えても。
古いフィルムが箱へ戻されても。
がこの世からいなくなっても。
覚えているがいる限り、そのは完全には止まらない。
美代ののでは、はいつまでも神社の段をりていた。
友に何か言われて顔を隠し、次の瞬にはこちらを向いて笑う。
そして、その笑顔を見るたびに、美代もし首をへ傾けて笑った。
まるで20の母と、同じスクリーンのにいるように。
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