みかん小説
本棚

"「住所は教えない」と言った息子へ" 第4話

私の胸ので、押し殺してきたりのが、静かに、しかし確実に積みなっていった。 最初のうちは、母としての困惑としみに耐え、ただ涙をみ込んでいた。しかし、度なる侮辱と搾取をにして、私のは「これはあまりにも理尽ではないか」という、激しい憤りへと変貌していったのである。

は、私のがどれほど傷つき、血を流しているのかを省みることなど切なく、ただな援助だけを貪欲に求め続けた。そしてその方で、私の母としての尊厳を根底から否定するような言葉を平然と吐き捨てる。 そんな耐え難い矛盾の連続をにして、私は自らの忍耐の限界がすぐそこまでづいているのを、はっきりと自覚していた。

あるの午、鳴り止んだ受話器を固く握りしめたまま、私は静寂な部で、静に自らの胸に問いかけた。

(私は、これ以どれほど耐え続けなければならないのだろうか)

胸の奥底で渦巻いていた混沌としたいは、やがて純度のい激しいりへと昇華し、そして最には、

「必ず、この理尽な搾取に自らので決着をつけなければならない」

という、何ものにも揺るがない徹な決へと形を変えていったのである。

あるれたの午、何気なくスマートフォンを操作していた私は、偶然にも息子の設しているSNSのアカウントを見つけした。

広告

画面に表示されたタイムラインを目見た瞬、私の呼吸が止まった。 そこには、息子夫婦と代さんの両親が、仲睦まじく肩を並べて写っている豪奢な写真が何枚も投稿されていたのである。

級ホテルのわれる所で、派な円卓を囲み、全員が満面の笑顔でシャンパングラスを掲げて乾杯している姿。息子のすぐ横には、着飾った代さんの母親と父親が、まるで主役であるかのように誇らしげに座っていた。 そして、その写真のには、による次のようなコメントが添えられていたのだ。

好きな最のお母さんと緒に! いつも本当にありがとう!』

私は息を呑み、指先が凍りついたようにかなくなった。 その「お母さん」という親に満ちた言葉が、私ではなく、らかに代さんの母親を指していることは、誰の目にもだった。 かつて息子から「母さん」と呼ばれ、頼りにされ、その活を命がけで支えてきたはずの私の居所には、今や何わぬ顔で義母が鎮座している。

その景を突きつけられた瞬、私の胸の奥くで、何もかけて築きげてきた切な何かが、音をてて完全に崩壊していくのをじた。

という途方もない歳をかけて注ぎ続けた無償のも、にして差しした退職も、々の送迎や事の労力も、すべてが泡のように儚く、無残にかき消されたのだ。

広告

(こんなことのために……私は自分のを削ってきたというの……?)

でそう呟きながらも、私は爪がのひらにい込むほど拳を握りしめ、必に表面静さを保とうとした。

しかし、画面を指先でスクロールするごとに、容赦なく突きつけられる現実は、私の傷をさらにく、残酷に抉っていった。 豪華なレストランでかれた孫の誕会の様子、級温泉旅館への族旅先での記写真。そのには常に義母がおり、彼女を囲んで息子と孫が満面の笑みを浮かべている。 その投稿の数々のどこを探しても、私のの痕跡など微も残されていなかった。彼らは自分たちの華やかな世界から、私というを徹底に、完全に排除していたのである。

そして数、偶然にもにしてしまったある会話が、私の胸に最にして決定撃を加えることとなった。

用事があって息子の自宅のくを通りかかった際、あるいは話の切り忘れの隙から漏れ聞こえてきたのか――が親しい友話で談笑している々しい声が、私のへとび込んできたのだ。

「……ああ、実の母親? あれはさ、づるとしてさせるためには必だけど、緒にむなんて冗談じゃないよ。絶対に考えられないね。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: