みかん小説
本棚

"孫の一言で知った息子の計画" 第2話

その純粋な瞳と配そうな声に触れ、私はハッとに返った。

「あ……ううん、なんでもないのよ、湊ちゃん。ちょっと目眩がしただけ。さあ、あっちのお菓子売りって、美しそうなビスケットを選びましょうね」

私は震える角を必に引きげ、引きつりそうになる顔になんとかいつもの穏やかな笑顔を作って見せた。 しかし、胸の奥くでは、正体の分からない底れぬが、黒く粘りつく巨な渦となって急速に広がっていくのを、どうしても抑え込むことができなかった。

買い物を終えて自宅のリビングに戻り、買ってきた材を蔵庫に収めながらも、ドラッグストアの棚に並んでいたあの青と箱の残像が、私の脳裏から秒たりともれようとしなかった。

、総病院の内科や救急病棟の現で数え切れないほどの患者さんを護してきた私には、あの眠導入剤が持つ真の危険性と、期連用による体への響が、痛いほど医学に理解できていた。 単なる眠改善のための頓であれば問題はない。しかし、誤った用法や目で使用された枢神経系を抑制し、記憶障害や認能の著しいを引き起こす劇薬へと変貌するのだ。

の支度をするため、まな板ので包丁をかしながら、私はここ数ヶに自分のに起きていた数々の「異変」

広告

を、つひとつ丹い返してみた。

(そういえば……ここ、夕を終えたに襲ってくるあの異常なまでの猛烈な眠気は何だったのかしら……)

卓を片付けようとがった瞬、まるで全体に鉛を詰め込まれたかのような激しい倦怠と朦朧とした識に襲われ、リビングのソファや寝のベッドへ倒れ込むようにして眠りに落ちてしまう夜が、らかに異常な頻度で続いていた。 最初は、「私も歳になったのだから、歳のせいで体力が落ちたのかしら」「昔の夜勤の無理が今になってているのかしら」と自分に言い聞かせ、加齢による理現象だと片付けようとしていた。 しかし、の臨経験を持つ元護師としての客観点で静に分析し直してみれば、あれは自然な眠気などでは断じてなく、らかな薬物性の急性鎮静症状そのものであった。

『お母さん、今お疲れ様でした。いお茶を淹れましたよ』

ふと、同居している息子の嫁、美咲の笑顔ときが、鮮な映像となって私の脳裏に蘇ってきた。 美咲は毎晩、夕の膳を片付ける直になると、決まって私専用の陶器のマグカップにだけ、湯気のつ緑茶を並々と注いで渡してくれていた。 「お母さんの健康のために、特別に濃く淹れたお茶ですからね」

広告

と、満面の笑みを浮かべながら。 彼女は必ず、自分たち夫婦がむ湯呑みとは別に、私専用のマグカップだけを台所の隅に置き、わざわざ背を向けて茶を注ぎ、優しく私の元へと運んで勧めてくれていたのだ。

(まさか……そんなはずはない……)

打ち消そうとする理性の声とは裏腹に、バラバラだった過の記憶の点と点が、徹な本の線となって本に繋がっていく戦慄の覚があった。 あの眠導入剤の錠剤は、末状に細かくすり潰せば、本茶のい苦りに完全に溶け込み、無無臭となってにした相に気づかれることはまずない。

私の記憶の奥底から、かつて病棟で受け持った、ある入院患者の老婦痛な訴えが、々しく蘇ってきた。 『護師さん、聞いてちょうだい……私、息子夫婦に毎晩、何かおかしな薬を盛られているような気がするのよ……』 当の私は、その訴えを聞きながらも、齢者にありがちな被害妄や認症の初期症状によるい込みではないかと疑い、真剣に受け止めることができなかった。 だが、今まさに同じ境遇の渦たされた私には、それが決しての妄や絵空事だとは到底えなくなっていた。

私はえ切って震えるでポケットからスマートフォンを取りし、画面の検索バーにあの眠導入剤の商品名と主成分を打ち込んだ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: