"清掃員が書いた設計図" 第3話
21歳になったゆいののには、学の学部で学ぶ内容をはるかに超える識が蓄積されていた。
度読んだ数式や図面を驚くほど正確に記憶し、複数の計算をので同に組みわせられる。
もし正式な検査を受けていれば、極めてい能指数を示しただろう。
だが、世が見たのはそこではなかった。
履歴。
学歴欄。
「学卒業」
そのだけだった。
20社以へ応募した。
類で落とされた。
ある会社では面接までったが、担当者から笑われた。
「独学で学?」
「はい」
「学にもかず?」
「はい」
「それで技術職を希望しているの?」
結果は当然のように採用だった。
次第にゆいは、自分の識について話さなくなった。
話せば笑われる。
証する会すら与えてもらえない。
そんな、夫だけが何も聞かずに言った。
「から来なさい」
だから、ゆいにとってあのは特別だった。
技術者として雇われたわけではない。
清掃員だった。
それでもいい。
働く所をくれた。
名を履歴だけで切り捨てなかった。
その恩を、いつか返したいとった。
そんな矢先。
にとって最ともいえるきな仕事が入ってきた。
元請けの企業から発注された、航空エンジン向けの精密部品だった。
使われるのは発の特殊。
寸法誤差は100分の1ミリ以内。
夫は5の従業員を集めた。
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「これを成功させれば、まだを続けられる」
皆の顔を見回す。
「失敗したら……たぶん、ここまでだ」
誰も冗談を言わなかった。
従業員たちも分かっていた。
材料費も気代もがっている。
元の資はほとんど残っていない。
夫は拳を握った。
「最のチャンスだ。みんな、頼む」
「はい」
「やりましょう」
従業員たちが答える。
ゆいはしれた所で雑巾を握ったまま、その言葉を聞いていた。
誰も会議へ呼ばなかった。
当然だった。
自分は清掃員なのだから。
ところが数。
最初の試作品が処理程を終えた、問題が起きた。
表面に細い亀裂がっていた。
条件を変えて作り直す。
また割れた。
具を変える。
材料の投入順を変える。
それでも同じだった。
毎回。
決まった位置から微細な亀裂が発する。
材料費だけが消えていく。
納期だけがづく。
から笑い声が消えた。
「やっぱり、うちの技術じゃ無理なんじゃないか」
ある従業員が、疲れ切った声で呟いた。
夫の表が固まった。
40守ってきた技術。
父から受け継いだ械。
それらが代遅れだと言われたような気がした。
だが反論できない。
部品は実際に割れていた。
その夜。
最のが帰るのを確認してから、ゆいは作業台へづいた。
そして初めて、元請け企業から送られてきた設計図面を広げた。
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何ページもある資料を枚ずつ追う。
材料特性。
加精度。
処理温度。
膨張係数。
許容応力。
ゆいの指が、つの数字で止まった。
もう度最初へ戻る。
計算する。
2回。
3回。
4回。
「……これだ」
ゆいの唇がわずかに震えた。
違っていたのはではない。
設計図面そのものだった。
元請け企業が採用していた応力計算は、般な属材料ならきな問題にならないものだった。
しかし今回使われている素材は、特定の温度域で組織変態を起こす。
そこで膨張率が非線形に変化する。
設計図では、その変化がほとんど考慮されていなかった。
単純な線形膨張を提に許容応力が計算されている。
だから加精度をどれだけげても、処理に内部応力が集する。
そして限界を超えた瞬、同じ所に亀裂が入る。
「どこで作っても割れる……」
ゆいは独り言を漏らした。
夫たちの技術が悪いのではない。
40続いた町が代遅れなのでもない。
元請け側の計算モデルが違っている。
ゆいは古い作業誌を冊取りした。
余っているページをく。
ボールペンを握った。
補正計算を始める。
温度変化に伴う材料相変態。
非線形膨張。
応力の再分配。
依性。
ひとつずつ式を組み直していった。
夜1。
2。
3。
には誰もいない。
くでトラックのる音がする。
ゆいは何度も計算をやり直した。
途で誤差がれば最初へ戻る。
コピー用の裏にも式をく。
そして朝4過ぎ。
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