"清掃員が書いた設計図" 第4話
ようやくボールペンを置いた。
が張っていた。
目も痛い。
それでも、答えはた。
加の処理温度をわずかに変更し、昇温速度を段階に調する。
さらに相変態が集する区で保持を延すれば、内部応力を分散できる。
これなら割れない。
確信があった。
しかし。
ゆいはノートを持って夫のところへけなかった。
――卒の清掃員が、企業の研究所の設計を違いだと言う。
像しただけで怖くなった。
自分が笑われるだけならいい。
だが、夫まで余計な恥をかくかもしれない。
「こんな子を雇うからだ」と言われるかもしれない。
ゆいは悩んだ末、作業台のへノートを置いた。
名もかなかった。
翌朝。
従業員のがそれを見つけた。
「なんだ、これ」
ページをめくる。
びっしりかれた数式を見るなり顔をしかめた。
「誰がこんな落きしたんだ?」
別の従業員が覗き込む。
「昨最まで残ってたの、清掃員じゃないか?」
「あいつが?」
笑い声が起きた。
「卒がこんなの分かるわけないだろ」
「どっかの本でも写したんじゃないか」
ノートは作業台の引きしへ放り込まれた。
ゆいはしれたところで雑巾を絞っていた。
全部聞こえていた。
それでも何も言わなかった。
ただ、いつもよりく顔を伏せた。
そのの夕方。
全員が帰った。
夫が、作業台の引きしをけた。
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目は別の具を探すことだった。
そこで、古いノートが目に入った。
「ああ、これか……」
昼、従業員たちが笑っていたもの。
何となくに取った。
ページをく。
夫は学者ではない。
複雑な数式など読めなかった。
けれど、40以、職のを見てきた。
雑にいたものと、本気で考え抜いていたものの違いくらい分かる。
何度もき直された跡。
横にさく記された条件。
計算の途で数字を消し、別の式へ繋げた痕跡。
それは落きではなかった。
「……ゆいちゃん」
夫は呟いた。
こので、夜遅くまでで残っているをっていた。
ノートを閉じる。
すぐ問い詰めようとはしなかった。
ただ胸のに引っかかるものを抱えたまま、そのはへ帰った。
数が過ぎた。
部品は相変わらず割れた。
納期まで10。
材料費も尽きかけていた。
従業員たちは昼休みになっても会話をしなくなった。
そして午。
に黒いセダンが止まった。
りてきたのは、元請け企業の設計部・岡部だった。
そのろには部が2。
黒いスーツ。
磨かれた革靴。
古びたのでは、違いなほどった姿だった。
夫が入までる。
「岡部部」
岡部は挨拶もせず、封筒を差しした。
「契約違反についての通です」
その。
夫たちは、自分たちがもう崖っぷちではなく、片を踏みしていることを初めてった。
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岡部が作業台へ投げた封筒のには、正式な請求が入っていた。
2000万円。
夫は数字を何度も見た。
何度見ても変わらない。
「そんな……」
を売っても、借入を返せばほとんど残らない。
これを払えば廃業どころではない。
夫自の活まで崩れる。
「納品良率100%」
岡部は淡に告げた。
「当社が被った損害を考えれば、この程度で済んでいるだけありがたいとってください」
夫は請求を握った。
「私たちは、指定された図面通りに加しています」
「まだ言うんですか?」
岡部が遮った。
「図面が悪いと?」
「同じ箇所に亀裂が続けています。加条件だけの問題ではない能性が――」
「夫さん」
岡部の目が細くなった。
「うちの研究所を馬鹿にしているんですか?」
が静まり返る。
「京学、京都学、。博士号を持った研究員が何いるとっているんです?」
「……」
「そのたちが検証した設計ですよ」
岡部は周囲を見回した。
古い械。
油汚れの残った。
使い込まれた具。
「失礼ですが、そちらは5しか残っていない町でしょう」
その言葉に、従業員のが拳を握った。
だが夫が目で制した。
言い返して契約を完全に切られれば終わりだ。
「自分たちの技術を認めるところから始めた方がいいですよ」
岡部は吐き捨てるように言った。
夫の肩が落ちた。
父から受け継いだ。
何も磨いてきた技術。
それらを全部、学歴も設備も規模も違う相から「レベル」
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