みかん小説
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"清掃員が書いた設計図" 第6話

ゆいは言い返さなかった。

自分で数値を確認し、自分で温度計を見た。

なら自分ので作業した。

やがて。

最初の部品が処理炉からてきた。

全員が黙った。

ゆいは耐袋をつけ、部品を受け取る。

、作業台へ置いた。

鏡を当てる。

表面をゆっくり追う。

いつも亀裂がていた箇所。

ない。

反対側。

ない。

さらに位置を変えて調べる。

ない。

ひび割れが本もなかった。

ゆいは何も言わなかった。

ただ、部品を作業台に置いた。

「見てください」

づく。

鏡をに取った。

「……ない」

別のも見る。

「嘘だろ」

「本当に割れてない」

「寸法は?」

ノギスと測定器を使う。

許容範囲内。

しかも精度はこれまでの試作品よりかった。

にざわめきが起きた。

「できた……?」

「本当に?」

徹夜しても解決できなかった。

それが、清掃員として入ってきた21歳の女の指示で、度目から成功した。

ゆいは次の程へ向かおうとした。

その背へ声がんだ。

「佐藤さん」

ゆいが止まる。

このへ来てから初めてだった。

「清掃員」ではなく。

名字で呼ばれた。

振り返る。

先ほどまで満を言っていた職が、気まずそうな顔で部品を持っていた。

「この……どうすればいい?」

ゆいは瞬、言葉がなかった。

そしてさく笑った。

「次は同じ条件で3個作って、再現性を確認します」

「分かった」

夫はれた所から、その景を見ていた。

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目尻のしわがくなる。

父から受け継いだは、まだ終わっていない。

そして、それを救おうとしているのは。

から何度も払いを受けた女だった。

最初の1個だけなら偶然かもしれない。

だからゆいはばなかった。

同じ条件で3個。

さらに5個。

誤差。

表面粗さ。

処理の変形量。

ひとつずつ確認した。

すべて格。

良率は気に0%になった。

に、久しぶりに活気が戻った。

「次の材料入れるぞ」

「温度、ゆいちゃんに確認して」

「佐藤さん、この数値でいい?」

まで、ゆいの名すら呼ばなかったたちが次々と声をかける。

もちろん、全員がすぐに態度を変えたわけではなかった。

技術者として働いてきた誇りがある。

自分より何歳も若く、しかも清掃員として入ってきた女性から教えられることに戸惑いもあった。

ゆいもそれを分かっていた。

だから偉そうにはしなかった。

「ここを変えてください」

ではなく、

「もしよければ、ここを0.2だけ調してもらえますか」

そう頼んだ。

の経験が必な部分では、素直に聞いた。

「この械は、どの速度が定しますか?」

「古いからな。仕様通りじゃ駄目なんだ」

「教えてください」

理論だけではかない。

実際の械には癖がある。

ゆいは6、本から学んできた。

今度は職たちから、かれていないことを吸収していった。

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には、職たちの見方も完全に変わった。

「ゆいちゃん、これ見てくれ」

「先、こっちも頼む」

「先はやめてください」

ゆいが困ったように笑う。

その笑顔を見て、夫は胸がくなった。

ここへ来たばかりの頃。

ゆいはいつも怯えるように俯いていた。

何を頼まれても、

「すみません」

と言った。

は違う。

の目を見て話すようになった。

しかし。

が本当に助かったわけではない。

夫の机には、まだ2000万円の違約請求がある。

元請け側は、部品の良原因をこのの技術だと判断している。

今回成功品を納品できても、

「勝に設計条件を変えた」

と言われれば、契約違反を取り消してもらえない能性もあった。

何より。

設計そのものに誤りがあることを証しなければならない。

ゆいも分かっていた。

その夜。

再び、作業台へ座った。

今度は程の補正ではない。

元請けの設計が誤っていることを、誰が見ても反論できない形にまとめる。

そのための報告を作り始めた。

夫が缶コーヒーを本持ってきた。

みな」

「ありがとうございます」

ゆいは受け取った。

夫は隣へ座った。

「無理するなよ」

丈夫です」

「おさん、昔からこうだったのか?」

ゆいはし笑った。

「何がですか?」

「分からないものを、分かるまでやる」

ゆいは缶コーヒーを見つめた。

「それしか方法がなかったので」

けなかった。

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