"閉じ込められた臨月の妻" 第5話
静かになった。
加奈は扉に両をついたまま、しばらくけなかった。
数に戻るのではない。
5泊7。
スマートフォンも持っていかれた。
から京錠。
妊娠38週。
腹ので、子供がくいた。
その、加奈は初めて理解した。
あの2は、本当に自分をここへ残して旅へったのだ。
そして同に、もう1つ理解した。
これは嫁姑の仲ではない。
族のき違いでもない。
自分と子供の全を、本気で脅かすたちだ。
今まで「揉めたくない」とみ込んできた言葉も、「したことじゃない」とさくしてきた違も、全部ここにつながっていた。
もしここをられたら、もうこの子をあのたちへづけない。
加奈は、サウナので初めてそう決めた。
最初の10分、加奈は何度も扉を叩いた。
「誰か! 助けてください!」
宅ではあるが、隣までは距がある。サウナは1階の奥にあり、洗面と浴を挟んでいる。へ声が届く能性はい。
スマートフォンはない。
もない。
トイレにもけない。
しかも、いつ陣痛が始まってもおかしくない。
加奈はベンチへ座り、呼吸した。
焦るな。
まず状況を理する。
源は切れている。温はくない。すぐにで倒れる状態ではない。
だが、閉じ込められること自体が危険だった。分が取れない。助けを呼べない。体調が変わっても誰にも伝えられない。
広告
「丈夫」
腹へを当てる。
「丈夫だからね」
自分に言っているのか、子供に言っているのか分からなかった。
30分ほど経った頃、腹の奥にい痛みが来た。
いつもの張りよりい。
加奈は唇を噛んだ。
「今じゃないよね……」
陣痛なのか。恐怖で腹が張っているだけなのか。
計もないので隔すら測れない。
痛みが引くまで呼吸をえ、壁へ目をやった。
縦に並んだヒノキのパネル。
ベンチの。
側。
その瞬、加奈の考が止まった。
見覚えがある。
いや。
見覚えどころではない。
この構造を、自分はっている。
婚、加奈は父の会社で級建築士として働いていた。
の頃から何度も図面を引き、宅向けモデルの全構改良にも関わった。
父から言われた言葉が蘇る。
「見た目より先に、逃げを作れ」
加奈はベンチから慎にりた。
38週の腹では、くへ屈むだけでも苦しい。
壁板の端へ指を入れる。
のさな隙。
記憶をたどる。
カバーをし持ちげる。
違う。
もうし。
指先にい触。
カチッ。
さな音がした。
細い械レバー。
加奈の目に涙が浮かんだ。
「あった……」
内部緊急解除。
操作すると、本体側のラッチが解放され、同に非常換気が作する。
いモーター音。
空気がく。
加奈は扉を押した。
数センチいた。
だが、から付けられた京錠の具が引っ掛かる。
広告
完全にはかない。
それでも隙はできた。
「いける」
側の補助具は、付けの簡易部品だった。サウナ本体の全構造を定したものではない。
加奈は扉を何度も押した。
腹が張る。
度休む。
痛みが引く。
もう度。
ガン。
枠に力がかかる。
ガン。
ネジが浮いた。
もう度押す。
具がれた。
扉がいた。
加奈は洗面へ転がるようにた。
にをつき、きく息を吸う。
「られた……」
その瞬。
元に温かい覚が広がった。
加奈はを見た。
破。
笑う余裕は消えた。
サウナの非常系統が作すると、設備側には全ログが残る。
このの器は設置会社の保守サービスへ接続されていた。隔操作はできないが、非常解除や異常止が作しただけは保守担当へ通される。
午027分。
法条設備の保守端末に、《宅用サウナ 緊急解除作》と表示された。
担当者は登録所を見てを止めた。
加奈の。
すぐに源次郎へ連絡した。
「社、加奈さんのの器で緊急解除がいてます」
源次郎は娘へ話した。
ない。
もう度。
ない。
匠は張だとっていた。
源次郎は会社をびした。
方、加奈はリビングまで歩いていた。
スマートフォンがない。
固定話も置いていない。
玄関をけようとするとかなかった。
から補助錠まで掛けられていた。
掃きし窓には防犯ロック。
普段ならする設備が、今は壁になっている。
腹の痛みはしずつくなっていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
家ごと消した母の反撃
七十一歳の美穂は、夫が入院している間、同居する長男夫婦から召使いのように扱われていた。生活費は一円も入れず、母の形見まで勝手に処分する二人。ある日、微熱で三分だけ横になった美穂に、長男嫁はワインを浴びせ、「帰るまでに掃除しておけ」と言い放つ。長男も笑うばかりだった。だが、黙って「はい」と答えた美穂には、二人の知らない計画があった。三日後、帰省先から戻った長男夫婦は、信じられない光景を目にする。嫁姑|親不孝|親子関係|金銭問題2.0万字5 980 -
完結第21話
車いすの恋人に請求された三万三千円の「迷惑料」
交通事故で車いす生活となった恋人・明菜と、もう一度穏やかな日常を取り戻そうとしていた聡。明菜の誕生日、二人は思い出のフレンチレストランを訪れる。しかし待っていたのは、食事時間の一方的な短縮と、三万三千円もの「迷惑料」だった。因果応報|人生逆転|真相|修羅場2.8万字5 755 -
完結第10話
すり替えた味噌汁
検事任官の最終面接を迎えた朝、神田玲奈は義母が自分の味噌汁に何かを混ぜる姿を目撃する。夫にも相談できないまま、玲奈は不審な味噌汁を密かに保管し、何食わぬ顔で食卓に戻った。同じ日、義妹の彩佳も三度目の教員採用試験に挑もうとしていた。玲奈が彩佳と味噌汁の椀を交換した瞬間、義母は血相を変えて叫び出す。嫁姑|第二の人生|金銭問題1.4万字5 60 -
完結第18話
「少しくらい困ればいい」母をSAに置き去りにした夫の本当の狙い
家族旅行の帰り道、夫の雅人は、足の悪い七十四歳の義母・澄江をサービスエリアに置き去りにした。「少しくらい困れば、次から早くなる」。息子まで夫に同調する中、妻は必死に母を捜す。ところが、母のバッグから見つかったのは、本人が知らない老人ホームの入居申込書だった。さらに、夫が管理していた母の預金、身に覚えのない介護記録、そして車内カメラに残された会話から、旅行そのものが仕組まれていた疑いが浮かび上がる。夫婦|親不孝|第二の人生|親子関係|金銭問題2.3万字5 1480 -
完結第20話
花嫁のいない結婚式
結婚式を翌日に控えた長谷川由衣は、胃痛を訴える婚約者・黒田瞬のために、心を込めて雑炊を作っていた。ところが彼の部屋の前で耳にしたのは、「あいつはただの身代わりだ」という残酷な本音。三年間の愛情も、婚約指輪も、純白のドレスも、すべて元婚約者の代わりだったと知った由衣は、誰にも告げず空港へ向かう。翌朝、二百人の招待客が待つ式場に花嫁は現れなかった。人生逆転|真実|裡の顔|第二の人生|修羅場2.9万字5 426 -
完結第10話
残高ゼロの通帳
経理主任として働く三十九歳のゆきは、同居する義母から突然、給与明細を突きつけられる。「月四十万円も稼いでいるなら、通帳は私が管理するわ」。勝手に給料の使い道を決められ、夫に助けを求めても返ってきたのは「母さんに任せれば楽だろ」という言葉だった。ついに「嫌なら出ていけ」と言い放たれたゆきは、抵抗するどころか、笑顔で通帳を差し出す。しかし、その夜、彼女は誰にも知られず一つの手続きを済ませていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|金銭問題1.5万字5 1244 -
完結第18話
誤爆LINEの夜
結婚六年目。妻の明子に勧められ、出張前夜をホテルで過ごすことにした直人。ところがチェックイン直後、妻から「今日旦那いないから、いつもみたいにイチャイチャしよ♡」というLINEが届く。慌てて削除されたメッセージに不信感を抱いた直人は、何も知らないふりをして自宅へ戻る。夫婦|裡の顔|修羅場|不倫2.0万字5 1266 -
完結第16話
四万円を断った朝
同僚に裏切られ、二千万円近い借金を背負った大橋拓人。再就職の面接へ向かう朝、雨の道路でパンクした車を見つけ、遅刻を覚悟でタイヤを交換する。女性から差し出された四万円を断り、代わりに面接先まで乗せてもらった拓人。しかし会社に到着すると、受付の社員たちが彼女に深々と頭を下げた。職場逆転|人生逆転|真相|修羅場2.5万字5 886 -
完結第18話
剣を捨てない花嫁
八歳の春、父から「今日からお前は息子だ」と告げられた澄は、道場の跡取りとして剣だけを教え込まれて育った。だが十九歳の秋、待望の弟が生まれると、父は突然、借金の肩代わりと引き換えに彼女を久世家へ嫁がせてしまう。女らしい振る舞いができず、屋敷の人々に笑われる澄。そんな彼女に夫の春臣だけは優しかった。ある月夜、春臣から差し出された木刀を握った瞬間、二人の間に隠されていた七年前の縁が明らかになる。そして澄は、自分の婚姻にまつわる思いがけない秘密へと近づいていく。時代|歴史|親子関係|修羅場1.8万字5 204