"質屋に出された夫の時計" 第5話
なぜ計だけが質へ流れたのか。
千代はそののうちに松葉荘の帳簿を持ち帰らなかった。
信介がに置かなかった理由を考えると、ここに残した方が全だとった。
ただし必なページだけ、さなへき写した。
翌。
丸田組の同僚を訪ね、田所という名を尋ねた。
相の表が変わった。
「田所技師ですか」
「っているんですか」
「昔、丸田組にいたです」
数まで資材管理を担当していた技師。
品質を巡って層部と衝突し、会社を辞めたという。
「今は浦にいるはずです」
千代の推測は確信へづいた。
信介は田所に会おうとしていた。
会社のに正をるを作ろうとしていたのだ。
だが。
それでも最の疑問は残る。
震当。
信介は本当に建物のでくなったのか。
それとも、度はへ逃げたのか。
そして。
計を持っていた額に傷のある男は、信介の最をっているのではないか。
その男はどこにいる。
千代は伊勢へ通い、再び姿を見せたららせてほしいと頼んだ。
しかし男は現れなかった。
震災から2週が過ぎる頃には、町にもしずつ秩序が戻り始めていた。
焼け落ちた所には仮が建ち始め、方者を探すが寺や柱に貼られた。
千代も信介の特徴をいたを何枚も作った。
「桜井信介 38歳」
「丸田組勤務」
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「91より消息」
計のことまではかなかった。
誰が何の目で寄ってくるか分からなかったからだ。
方、松葉荘で見つけた帳簿については、田所へらせることにした。
浦までの交通はまだ定していなかった。
をき、事を説する。
数。
田所本が京へ来た。
50歳を過ぎた、痩せた男だった。
帳簿を見せると、く黙り込んだ。
「信介君、ここまで調べていたのか」
「夫から何か聞いていたんですか」
「しだけ」
8の終わり。
信介からが届いていた。
丸田組の資材調達に自然な点がある。
過に田所が疑っていたことと同じかもしれない。
度会いたい。
それだけだった。
「私は92に会う約束をしていました」
田所は目を伏せた。
「まさかに、あんなことになるとは」
「夫は何を見つけたんでしょう」
田所は帳簿をめくる。
「おそらく資材のすり替えです」
当、建築業界はきくいていた。
、倉庫、公共施設。
仕事は増えている。
方で材料費も騰し、利益を確保するため無理をする会社もあった。
丸田組では、正規品として仕入れた記録だけを残し、実際にはい規格品を部の現へ回していた能性がある。
「検査印までから押しているなら、現だけではできません」
田所はい声で言った。
「のが関わっています」
千代は震災当の朝をいした。
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「今夜はし遅くなる」
信介は最の確認をしようとしていたのかもしれない。
帳簿を持ちすに。
誰かへ問いただそうとしていたのかもしれない。
田所はページのつを指した。
そこには91の朝にかれたらしい文字があった。
「資材置 袋 再確認」
「袋?」
「かセメントでしょう」
千代の胸が鳴った。
計を質へ持ち込んだ男。
その袋にはいが付いていた。
信介の最と資材置き。
あの男は、やはり繋がっている。
田所は帳簿の写しを部預かることになった。
「信介君が何をしようとしていたのか、私も調べます」
「お願いします」
「ただ」
田所は千代を見た。
「奥さん。丸田組のには、この帳簿があることをまだ言わない方がいい」
「どうしてですか」
「信介君がではなく別の部へ隠していた理由を考えてください」
千代は黙った。
妻を巻き込みたくなかった。
それだけではないのかもしれない。
会社のに。
証拠を消したいとうがいた能性もある。
その夜。
千代はの戸締まりを何度も確認した。
それまで夫の失踪は、震災による劇だとっていた。
だが今は。
そのから信介が何か危険なものへづいていたことをってしまった。
震がなくても。
夫は無事では済まなかったかもしれない。
そんな考えまで浮かぶようになっていた。
震災から3週ほど経った朝。
千代のいるへ、の男が訪ねてきた。
戸で名を尋ねられた。
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