"夫の娘は、私にだけ謝った" 第10話
『べるのが遅かったって』
「それ、好きなところ?」
『私も聞きました』
隆司は、恵美が何でもゆっくりべるだったことをいした。ケーキつに30分くかかり、隆司が先にべ終わっても気にせず話し続けていたらしい。
それからしずつ、記憶がてきた。
ると黙ること。
のが好きだったこと。
美容師になるは学の先になりたかったこと。
いでも必ず瓶へ飾るだったこと。
綾はそれを聞きながら、初めて「自分の母が父にされた代」をったという。
『母、捨てられただけじゃなかったんだなっていました』
その言葉に、真由美はしばらく何も言えなかった。
恵美はい、隆司に捨てられた女性だった。
綾は、父親に捨てられた娘だった。
隆司は、自分の父親にを奪われた息子だった。
真由美自も、はらない娘に夫を奪われる妻だとっていた。
誰もが、自分を説するためのい物語を持っていた。
けれど実際のは、それほど簡単ではなかった。
「綾さん」
『はい』
「お母さんのこと、これからもっと聞いたらいいよ」
『誰に?』
「隆司にも。お母さんの昔の友達にも。ってるがいるうちに」
綾はし黙り、
『そうします』
と答えた。
話を切ったあと、真由美は写真を封筒へ戻さなかった。
しばらくテーブルの端へ置いておくことにした。
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自分のに、元夫の昔の恋の写真がある。
しなら、とても奇妙なことにえただろう。
今は、それほど変だとはじなかった。
さらに半。
里奈が妊娠した。
族のグループメッセージへ、
《今、病院で確認できました》
という報告が届いた、真由美は図館の休憩にいた。
すぐに話をかけようとして、やめた。
まず夫婦でゆっくり話したいかもしれない。
里奈自が話したくなったに聞けばいい。
以なら、予定、病院、体調、仕事をどうするのかと、次々質問していたかもしれない。
真由美は、
《おめでとう。体を事にね。また話したくなったら話して》
とだけ送った。
数分。
里奈から話が来た。
『お母さん』
「何?」
『何で質問しないの?』
真由美は笑った。
「聞いてほしい?」
『ちょっとは聞いてよ』
結局、その夜は1く話した。
仕事を続けたいこと。
産の保育園。
夫との事分担。
。
嬉しさ。
全部。
真由美はほとんど見を言わずに聞いた。
最に里奈が、
『お母さん、最聞くのになったね』
と言った。
「昔はだった?」
『かなり』
「失礼ね」
で笑った。
話を切る直。
里奈が言った。
『綾さんにも、妊娠したこと言ったよ』
「そう」
『んでくれた』
しを置いて。
『お父さんにも』
「うん」
『泣いたらしい』
真由美はわず笑った。
「本じゃなくて聞いたの?」
『お兄ちゃんから』
族の報は、相変わらず妙な経で回っていた。
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それでもいい。
誰かがにいなくても、関係は続いていく。
里奈の子どもがまれたのは、その翌だった。
女の子だった。
真由美が病院へくと、夫婦と杏、隆司、そして綾まで来ていた。里奈自が「来られるは来て」と連絡したらしい。
隆司はさな孫を抱きながら、何度も、
「軽いな」
と言った。
「児なんだから当たりでしょう」
真由美が言うと、
「落としそうで怖いんだよ」
と返した。
昔と変わらない会話だった。
でも。
以と同じ夫婦ではない。
綾がしれたところから赤ん坊を見ていた。
里奈が招きした。
「綾さんも抱いて」
「私?」
「おばさんでしょう」
綾が目を丸くした。
「私、おばさんなの?」
「嫌?」
「いや……急に現実が」
皆が笑った。
綾は恐る恐る赤ん坊を抱いた。
その横で。
隆司が何か言おうとした。
「首をちゃんと……」
途で止まった。
真由美が見た。
隆司はし笑い、
「いや、いい」
と言った。
綾が聞く。
「何?」
「自分で分かるだろ」
「分からなかったら聞く」
「じゃあ聞かれたら言う」
真由美は、その会話を聞いて笑った。
61歳で婚を言いしたの隆司なら、きっと全部先回りして教えただろう。
父親として。
族として。
自分が正しいとうことを。
今は。
し待てるようになった。
は、60歳を過ぎても変わるらしい。
完全には変わらない。
相変わらず余計なことも言う。
それでも。
しずつ。
帰り。
病院の玄関で、隆司が真由美へ声をかけた。
「真由美」
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