"48歳の誕生日、母親をやめました" 第2話
彦が肉を頬張りながら言った。
「今の肉、ちょっとうまいな」
久美子はそれを聞いてし嬉しかった。
久美子は笑顔で答えた。
「今ね、ちょっといいお肉にしたのよ」
彦はテレビを見たまま、気のない返事をした。
「ふうん。毎晩これでいいよ」
会話はたったそれだけで終わった。
誰のからも、おめでとうという言葉はない。
ケーキの箱を持っている者も、1もいない。
期待した自分が馬鹿だったと、久美子は静かに目を伏せた。
せっかくのすき焼きのが、全く分からなかった。
夕が終わった。
彦は無言でちがり、ソファへ戻っていく。
自分の器を片付けることもなく、テレビの画面にだ。
健太はイヤホンをつけ、スマートフォンでゲームを始めた。
美結はスマホの画面を見つめ、友達と楽しそうにメッセージをしている。
忍は座ったまま、お茶のお代わりをじっと待っている。
テーブルのには、空になった鍋と汚れた皿のがある。
誰もかない。
誰も久美子を伝おうとはしない。
久美子は1で器をね、い取りで台所へ運んだ。
たいをして、油汚れのついた皿を洗い始める。
の音だけが、静かな台所に虚しく響いていた。
15、ずっとこうだった。
自分の誕も、切な結婚記も。
私がをして苦しくて寝込んでいるも、この族は私がくのをただ座って待っていた。
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は勝に回ると、本気でっているのだ。
洗い物をしながら、久美子はさくをいた。
「今お母さん、誕だったんだけど」
その声はの音に消えそうなくらい、さかった。
だがその言で、部の空気が変した。
彦が面倒臭そうにテレビから振り返った。
彦は眉をひそめて言った。
「そうだっけ?」
そのたった言が、鋭い刃物のように久美子のをえぐった。
健太がゲームの画面から目をさずに言う。
「先に言えばよかったじゃん」
美結もスマホをいじりながら、軽い調で答える。
「忘れてた」
忍はお茶をすすりながら、呆れたように言った。
「いいして誕でもあるまい。来やればいい」
久美子のが、ピタリと止まった。
20のが、瞬で崩れるのをじた。
私は体、何のためにきてきたのだろう。
毎朝4に起き、5つの弁当を作り続けてきた。
自分のことは全て回しにして、族の予定を優先した。
旅にもかず、趣も持たず、しいも買わなかった。
誰からも文句を言われないように、完璧にこなしてきた。
謝されないことには、もうとっくに慣れていた。
だが、まさかそのものを忘れられているとは、わなかった。
普通ならここで声でるのかもしれない。
泣き叫んで、たい族を責めるのが普通だろう。
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しかし久美子ののは、とても静かだった。
りもしみも、全く湧いてこなかった。
今までピンと張っていた緊張の糸が、音をてて切れたのだ。
久美子はゆっくりとの蛇を閉めた。
そして振り返って、族の方を向いた。
その顔には、穏やかで優しい微笑みが浮かんでいた。
久美子ははっきりとした声で、静かにそう宣言した。
「私、もう母親やめます」
数秒の沈黙の、全員がきな声をあげて爆笑した。
健太がで笑いながら言う。
「何言ってんだよ。マジでっただけだろ」
美結もクスクスと笑いながらスマホを見ている。
誰も久美子の言葉を本気にしていない。
彦はあくびをしながら言った。
「疲れてるならく寝ろよ」
そう言って再びテレビに目を向けた。
だが久美子だけは、切笑っていなかった。
その夜、族が寝静まったのこと。
久美子はクローゼットから、さな鞄を取りした。
荷物は驚くほどなかった。
15自分のためのものを何も買ってこなかった証拠だ。
台所にき、引きしから1冊のノートを取りす。
それを蔵庫の扉に、マグネットでしっかりと貼り付けた。
そして音をてずに、玄関のドアをける。
久美子は振り返ることは1度もなかった。
翌朝、彦が目を覚ました、のは異常なほど静かだった。
台所からいつも聞こえる、包丁の音がしない。
議にい、彦はゆっくりと台所へ向かう。
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