"48歳の誕生日、母親をやめました" 第7話
「あいつが帰ってこない理由が分かったぞ」
彦はカードを振って見せた。
「このカードでどこかに泊まっているんだ」
美結が呆れたようにで笑う。
「なんだ、お父さんのおで遊んでるわけ」
健太もスマートフォンを見ながら吐き捨てた。
「マジでふざけてる。く止めろよ」
彦はすぐにカード会社に話をかけた。
そして、族カードの利用を完全に止させたのだ。
彦は満そうにソファにく腰掛けた。
「これであいつは1円も使えなくなった」
彦は井を見げた。
「おがなくなれば、必ず泣きついてくるさ。今の夜には座して帰ってくるだろうな」
族全員がその言葉を信じて疑わなかった。
父親がおを握っている以、母親は逆らえない。
それがこのの絶対なルールだったからだ。
方その頃、久美子は古くて狭いアパートのにいた。
をたそのに、産を回って借りた部だ。
築40の隙が入り込む6畳。
もなく、古い毛布に包まって寒さを凌いでいた。
元には自分のパート代を貯めた古い通帳がある。
残は決してくはなかった。
敷と礼を払い、残ったおはわずかだった。
これからの活費、費、費。
計算すればするほど、が胸を押し潰しそうになる。
やっぱり無謀だったのかな。
48歳の女性が1できていくのは、簡単ではない。
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社会のは、像以にたかった。
今まで事という狭い世界だけできてきたのだ。
の世界では自分に何の価値もないようにえた。
パート先のにも、怪訝な顔をされた。
は眉をひそめて尋ねた。
「急に1暮らしなんて、何かあったの」
その言葉に、うまく答えることができなかった。
が折れそうになる瞬が何度もあった。
夜になると、孤独が真っ暗な波のように押し寄せてくる。
誰もいない部は、恐ろしいほど静かだった。
これが彦の狙いだった。
おのと孤独で、久美子を追い詰めようとしていたのだ。
スマートフォンがく震えた。
彦からのメッセージだった。
『カードは全て止めた。おはもう活できないだろう。今すぐ帰ってきて謝るならに入れてやる。』
久美子はそのたい画面をじっと見つめた。
指先が微かに震えていた。
今ならまだ元の活に戻れるかもしれない。
をげてまたあの台所にてば、温かい部で眠れる。
のご飯の配もしなくて済むのだ。
「帰りたい」
音がからこぼれそうになった。
そのだった。
久美子ののに、あの夜の景がはっきりと蘇ってきた。
勇気をして言ったあの言。
『今お母さん誕だったんだけど』
面倒臭そうに振り返った夫のたい顔。
誰1自分を見てくれなかったあの瞬。
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そしてノートにかれた、自分だけが真っなページ。
誰も私の好きなべ物をらない。
誰も私のをらない。
あのに戻るということは、自分を捨てるということだ。
ただのを回すための具に戻るということだ。
久美子は両で顔を覆った。
温かい涙が、指の隙からこぼれ落ちていく。
しかしその涙は、しみの涙ではなかった。
久美子は声にして呟いた。
「私は絶対に、もう戻らない」
久美子は静かにスマートフォンを伏せた。
彦の連絡先を、迷わずブロックリストに入れた。
たいで顔を洗い、鏡のの自分を見た。
目は赤く腫れていたが、その奥にあるはんでいなかった。
どんなに貧しくてもいい。
どんなに苦しくてもいい。
初めて自分ので、自分のを歩き始めたのだ。
もう誰かのための便利な具にはならない。
同じ頃、彦のでは。
彦は計を見ながら、ニヤニヤと笑っていた。
「そろそろ泣いて話してくる頃だな」
カードを止めてから、すでに数が経っている。
夕飯になれば、お腹を空かせてくるはずだ。
しかし、鳴ったのは久美子からの話ではなかった。
居の固定話が、けたたましく鳴り響いたのだ。
彦は舌打ちをして受話器を取った。
「はい。彦ですが」
話の向こうから、事務な声が聞こえた。
「あ、いつもお世話になっております。
役所の介護課です」
彦は議そうに首をかしげた。
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