"48歳の誕生日、母親をやめました" 第8話
「介護課。何のご用でしょうか」
担当者は落ち着いた声で言った。
「お義父様のデイサービスの続きの件でお話しました」
担当者の言葉に、彦は全くが分からなかった。
「続き。何のことですか」
話の向こうの担当者は、し戸惑ったような声をした。
「奥様から先週付けで、全て解約の連絡をいただいております」
彦は驚いて聞き返した。
「え、解約」
担当者は確認するように言った。
「はい。今は彦様が全てご自宅で介護されると伺っています」
彦の背筋にたい汗がスッと流れた。
彦は焦って遮った。
「ちょっと待ってください。そんな話聞いていません」
担当者は事務に答えた。
「ですが、類には彦様のサインと印鑑もございました」
彦は必に叫んだ。
「それはあいつが勝にやったんです」
だが担当者の声は静だった。
「すでに続きは完しております。の朝からお迎えのは伺いません」
彦は声を震わせた。
「んないきなり言われても困ります」
担当者はたく話を切る準備をした。
「ご族での介護、変だとはいますが頑張ってください」
話は無にも方に切られてしまった。
彦は受話器を持ったまま呆然とち尽くした。
久美子は衝にをびしたわけではなかったのだ。
をるから、着々と準備をめていた。
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自分がいないとこのがどうなるか、彦たちがどれだけ困るか。
全て計算したでっていったのだ。
忍がソファからげに声をかけた。
「おい、どうしたんだ」
美結もスマートフォンの画面から目をげて尋ねる。
「お父さん、何かあったの」
彦は震える声でようやく答えた。
「親父の介護サービス、から全部なくなったらしい」
その言葉に、のの空気が気に凍りついた。
忍が杖を振り回して、きな声で鳴り始めた。
「どういうことだ。わしはどうなるんだ。わしは1で呂にも入れないんだぞ」
彦もパニックになり、父親に向かって鳴り返した。
「るかよ。俺だって仕事があるんだ」
美結が無責任なことを言う。
「お兄ちゃんがで面倒見ればいいじゃん」
健太が激して叫んだ。
「ふざけんな。俺は部活があるんだよ。おがやれ」
美結は肩をすくめた。
「はあ。私には関係ないし」
誰もが自分の活を守ることしか考えていない。
今までその面倒なことの全てを、久美子に押し付けていたのだ。
その圧が今度は、自分たちにのしかかってきた。
おで久美子を追い詰めたつもりだった。
しかし本当に追い詰められていたのは、自分たちの方だったのだ。
彦はテーブルのの族運営マニュアルを見た。
そこにかれている膨な作業。
それをから自分たちだけでやらなければならない。
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絶望という言葉が、初めて彦のに浮かんだ。
翌朝、彦は烈な悪臭で目を覚ました。
計を見ると、まだ朝の5だった。
隣の部から、忍のくぐもった声が聞こえてくる。
彦は嫌な予を抱えながら、急いで父親の部へ向かった。
ドアをけた瞬、わずをつまんで顔を背けた。
彦は鳴った。
「おい親父、何やってんだよ」
忍はベッドから起きがれず、布団ので粗相をしていた。
忍は悪びれる様子もなく、当然のようにそう言い放った。
「わしのせいじゃない。いつもなら久美子が、夜に1度トイレに連れてってくれたんだ」
忍は顔をしかめて指示した。
「く着替えさせてくれ。気持ちが悪い」
彦はりで声を震わせながら、忍の体にを伸ばした。
しかしの体を1で持ちげるのは、像以にかった。
腰に鋭い痛みがり、彦は顔を歪めた。
汚れたパジャマを脱がせるだけでも苦労だ。
シーツを取り替え、体を拭き、しいを着せる。
たったそれだけのことで、彦は全汗だくになっていた。
計を見ると、すでに1が経過している。
彦は息を切らしながらに座り込んだ。
「これ、あいつは毎やってたのか」
デイサービスが解約された以、これを毎自分たちでやらなければならない。
そんなことは絶対に能だった。
彦はちがった。
「仕方ない。で解決するしかない」
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