"48歳の誕生日、母親をやめました" 第16話
痛い」
のたいは、数分で指先の覚を完全に奪っていく。
お湯をそうとしてもガス代が払えず、昨の夜から止められていた。
健太も震えるで油汚れを擦り落とす。
「しろよ。俺たちがやらなきゃどうにもならないだろう」
しかしが経ってこびりついた汚れは、簡単には落ちない。
何度こすっても皿はぬるぬるしたままだ。
健太の目から悔しさと申し訳なさで涙がこぼれた。
「お母さん、毎こんなことしてたの」
自分たちは温かい居でテレビを見て、声で笑っていた。
その裏で母親は毎1で、このたいと戦っていたのだ。
美結も母親のひび割れたをいして泣きした。
「が荒れるっていつもいクリーム塗ってたよね」
美結はスポンジを握りしめた。
「私、お母さんのがガサガサで嫌だなんて言っちゃった。最だよね、私。本当に最だ」
台所に2の子供の泣き声が響き渡った。
今ならはっきりと分かる。
あの温かいご飯も、綺麗に洗われたも、決して当たりではなかった。
母親が自分のを削って与えてくれていた、そのものだったのだ。
彦は見らぬ線のにび乗った。
のの切れを何度も何度も見つめる。
誕の夜、自分が買っていた級な腕計の値段。
それはこのいアパートの賃の何ヶ分だっただろうか。
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それを首につけて、自分は偉そうにふんぞり返っていたのだ。
「俺はのを持っていなかった」
彦のは激しい悔と焦りで張り裂けそうだった。
呂もない、もない部で、久美子は1で凍えているかもしれない。
これまで自分が与えてきた苦痛をえば、どんな罰でも受ける覚悟だった。
ただ言、ごめんなさいと伝えたかった。
が目の駅に到着した。
彦は改札を抜け、たいが吹く古い並みをりした。
何軒もある古いアパートを、1軒ずつしらみつぶしに探すしかない。
彦の額からや汗が流れ落ちる。
「絶対に見つけす」
りながら、彦はノートの最のページをいしていた。
久美子の好きなものやが何もかれていなかった真っなページ。
あれはただの空ではなかった。
私たち族に、自分というを完全に消しられてしまった結果なのだ。
しかしこの、彦はまだらなかった。
真実は、彦が像しているよりもはるかに残酷であることに。
久美子がをた本当の理由は、ただの疲れやりではなかった。
あの真っなページには、もう1つの恐ろしいが隠されていたのだ。
彦がその最の事実に直面し、完全に崩壊するのはもうすぐのことだった。
彦はたいが吹きつける古いを歩き回っていた。
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図アプリを頼りに、やっとのいでそのアパートを見つけした。
切れにかれていた所は、違いなくここだった。
目のにあるのは、今にも崩れそうな造の2階建てアパートだ。
階段は錆びついており、歩くたびにギシギシと嫌な音をてる。
彦は2階の奥、角部のドアのにった。
表札には細い文字で、久美子とだけかれていた。
彦はきく呼吸をしてから、震えるでインターホンを押した。
しかし部のからは、何の音も聞こえてこない。
何度押しても、ドアをノックしても全く反応がないのだ。
彦はドアにすがりつくようにしてさな声で呼びかけた。
「久美子、いるんだろう。俺だ。けてくれ」
だがたいの音だけが、虚しく響くばかりだった。
鍵はしっかりとかかっており、の気配は全くない。
彦はドアのにへたり込み、たいコンクリートのに座り込んだ。
「ここで、あいつが帰ってくるまで待つしかない」
の夕暮れはく、容赦のない寒さが彦の体を芯からやしていく。
コートのポケットにを入れても、震えは全く止まらなかった。
空腹で胃が痛み、喉もカラカラに乾いている。
財布には1000円札が2枚しかないため、温かいみ物を買うことすらためらわれた。
彦は膝を抱えながらガタガタと震え続けた。
今自分がじているこの烈な寒さとひもじさ。
これが久美子がこの数1で耐えてきたものなのだ。
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