"48歳の誕生日、母親をやめました" 第19話
震える指で、暗記している久美子の話番号を押す。
受話器をに当てると臓が破裂しそうなほどく打った。
プルル、プルル。
無質な呼びし音が暗い部に虚しく響き渡る。
「どうせないだろう」
着信拒否されているかもしれない。
そう諦めかけたそのだった。
話の向こうから、静かで落ち着いた久美子の声が聞こえた。
「はい」
彦は息が完全に止まりそうになった。
彦の声は涙と恐怖でひどく震えていた。
「久美子か、俺だ。彦だ」
話の向こうの久美子は何も言わない。
ガチャ切りされるかもしれないという恐怖で、彦の体は震えた。
彦は受話器を握りしめたままに崩れ落ちて座した。
「頼む。帰ってきてくれ」
見えない相に向かって何度も何度もをに擦り付けた。
「俺が悪かった。俺が全部違っていたんだ」
話の向こうにはい沈黙があった。
るわけでもなく泣くわけでもない。
ただ恐ろしいほど静かなが流れた。
そして久美子のたい声が響いた。
「どうして」
彦はそのく鋭い問いかけに言葉を完全に失った。
話の向こうから聞こえたたくて静かな言。
彦は臓をく握り潰されたような気がした。
今までなら彦がしい声をせば、久美子はすぐに謝っていた。
ごめんなさいと言って言うことを聞いていた。
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しかし今の久美子の声には、彦を恐れる響きは全くなかった。
りすら全くじられない。
ただめ切った氷のような声だった。
彦は震える声で必に言葉を絞りした。
「どうしてって、俺たちがおを必としているからだ」
彦は続けた。
「親父が倒れて入院することになったんだ。健太は学で問題を起こして学になった。美結のも台無しになってのはゴミだらけだ。おがいないとこのはめちゃくちゃなんだよ」
彦はすがるように涙声で訴え続けた。
自分がどれだけ困っているか、族がどれだけ幸な状況になっているか。
それを伝えれば、優しい久美子は必ず同してくれると信じていた。
「お願いだ。帰ってきて俺たちを助けてくれ」
しかし、話の向こうの久美子は全くじなかった。
静かなため息が聞こえた。
「それが私に帰ってきて欲しい理由なのね」
久美子は続けた。
「彦さんたちは本当に何も変わっていないわ」
そのたい言葉に、彦はハッとした。
久美子の言葉は鋭い矢のように彦の胸に突き刺さった。
「私が必なんじゃない。ご飯を作って掃除をして介護をするが必なだけでしょう」
その通りだった。
彦が最初ににしたのは、自分たちの便さだけだったのだ。
久美子の体を配する言葉は1つもなかった。
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彦は慌てて叫んだ。
「違うんだ。そうじゃない」
彦は続けた。
「俺はあのノートを見たんだ。隠されていたページを、おの気持ちを全部読んだんだよ」
話の向こうで、久美子の息を呑む音がさく聞こえた。
彦は話に向かって何度もをに擦り付けた。
「俺たちが悪かった。おの誕を忘れて本当にすまなかった。おがどれだけ傷ついていたか、やっと分かったんだ。だからもう1度だけやり直すチャンスをくれ」
ろで聞いていた健太と美結も、泣きながら話にづいてきた。
健太が声で泣き叫ぶ。
「お母さん、俺が悪かった。もう文句言わないから」
美結も話に向かって必にをわせている。
「お母さんごめんなさい。私が全部やるから帰ってきて」
族全員が声をあげて泣きながら謝罪していた。
普通ならここで母親のは揺らぐだろう。
する子供たちの涙声を聞けば許してしまうのが親のだ。
だが久美子のはもう完全に壊れてしまっていた。
15毎しずつ削られ続けたは、もう元には戻らない。
久美子の声はしいほど落ち着いていた。
「遅すぎるのよ」
久美子の言葉が静かにく部に響き渡る。
「私は15ずっと待っていたわ。いつか分かってくれる。いつかありがとうって言ってくれる。そう信じて自分のを全部捨てて尽くしてきたの」
久美子は続けた。
「でも誕の夜にはっきりと分かったの。
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