"家族じゃないなら、援助も終わり" 第3話
自分はそうならないとっていた。
けれど、いつのにか私は、息子夫婦にとって「頼めばしてくれる」になっていたのかもしれない。
私が保証を断ると、慎太郎は急に態度を変えた。先ほどまで「お願い」と言っていたのに、今度は机にを乗りし、なぜ断るのか説しろと迫ってきた。私はすでに理由を話していたが、彼が求めているのは説ではなく、私が考えを変えるための言葉なのだと分かった。
「もう物件には申し込んでるんだよ」
慎太郎が言った。
私はを疑った。
「申し込んだ?」
「うん。いい部はすぐなくなるから」
「私が保証になると決まるに?」
「なるとってたから」
あまりにも当然のように答える息子を見て、私は言葉を失った。
美咲はさらに、「来週には正式な続きをめるので、今サインしてもらえればにいます」と鞄から類の入ったクリアファイルまで取りした。
本当に、最初から断られることなど考えていなかったのだ。
「待って。私は何も聞いていないわ」
「だから今説してるだろ」
「順番が逆でしょう。保証が必なら、物件を決めるに相談するべきじゃないの?」
慎太郎はきく息を吐いた。
「母さんって昔からそうだよな。何でも配しすぎなんだよ」
美咲も腕計を確認し、「私たち、この予定があるので」と苛ちを隠さなくなった。
広告
私はクリアファイルをに取らなかった。
「サインはしません」
慎太郎が勢いよくちがった。
「じゃあいいよ」
「慎太郎」
「保証にすらなれないなら、もう族じゃないから」
その言葉は、っていた以に静かに胸へ入ってきた。
32育てた息子だった。
をせば夜までそばにいた。受験のには弁当を作り、学の格通が届いたには彦とで泣いてんだ。
それでも8500万円の保証を断っただけで、族ではなくなるらしい。
美咲もちがった。
「それなら、これから悠真にも会わせません。族じゃないに会わせる必ありませんから」
さすがに彦がった。
「いい加減にしなさい。子どもを取引に使うような言い方をするな」
「父さんも母さんの方するなら同じだよ」
慎太郎は吐き捨てるように言った。
私はしばらく息子の顔を見ていた。
しい。
腹たしい。
けない。
いくつものがあった。
けれど議なことに、最に残ったのは静けさだった。
「分かったわ」
私が言うと、慎太郎の顔がし緩んだ。
「じゃあサインを――」
「違うの」
私は首を横に振った。
「あなたたちの気持ちが分かったというよ」
慎太郎の表が止まった。
「保証にはなりません。族じゃないと言うなら、それもあなたたちが決めたことでしょう。今は帰ってください」
広告
美咲が「悔してもりませんよ」と言ったが、私は返事をしなかった。
玄関の扉が乱暴に閉まり、のに静けさが戻った。
彦はい黙った、「本当にこれでよかったのか」と聞いた。
「よかったかどうかは、まだ分からない。でも、あそこでサインすることだけはできなかった」
私はそう答えた。
その夜、気持ちを理するために、私は斎から通帳やこれまでの計記録をしてきた。教育費、結婚費用、具、孫への援助、毎3万円の振り込み。改めて計算すると、慎太郎が成してからだけでも500万円を超えるを援助していた。
「こんなにしてたのか」
彦も驚いていた。
私は苦笑した。
「しずつだったから、私も覚が麻痺してたのかもしれない」
午9を過ぎた頃だった。
らない番号から話がかかってきた。
「藤由美子様のお話でしょうか」
男性の声だった。
「はい」
「私、慎太郎様がご相談されております宅ローンについて、確認を担当しております者です」
私は背筋を伸ばした。
どうして関係者が、私の携帯番号をっているのだろう。
男性は丁寧な調のまま続けた。
「連帯保証予定者としてお名をいただいておりますので、確認をさせていただきたくご連絡しました」
「私は承していません」
話の向こうで沈黙があった。
「……そうなのですか?」
「今初めて頼まれて、断りました」
男性の声がらかに変わった。
「々お待ちください。こちらでは、親御様から1000万円程度の資援助も予定されていると伺っておりますが」
広告
おすすめ作品
-
完結第24話
十三通の退職届と百七回の着信
「この店もこれで終わりだな」――父の葬儀からわずか数日、84年続く料亭「花の屋」を継いだ私・綾乃に、32年間店を支えた板長・黒田が突きつけたのは、従業員13人分の退職届だった。料理のできない私を「素人」と嘲り、常連客も仲間も自分についてくると豪語して、新しい店を開くという。父を失った直後に板場まで空になり、予約46件を断るしかなくなった私は、町から「娘では無理だった」と囁かれても黒田たちを引き止めなかった。腕の落ちる料理人を急いで入れれば、守るべき店の名まで失うからだ。そんな中、父が30年間、従業員が辞めるたびに記していた一冊の大学ノートが残されていた。そこに並ぶ名前を追い始めた時、私は黒田が信じていた「花の屋を支えるもの」と、父が本当に守ろうとしていたものの違いに気づき始める――。親子関係3.6万字5 22474 -
完結第20話
婿との温泉旅行で、仲居から渡された「逃げて」のメモ
七十歳の元大工・桐山正三は、婿の達也に誘われ、信州の温泉旅館を訪れる。亡き妻との思い出に浸るはずだった夜、仲居から渡された一枚のメモには、「その酒を飲まず、裏階段から逃げてください」と書かれていた。達也が狙っていたのは、正三が妻と築き上げた家と土地だった。必死に逃げ帰った正三を待っていたのは、娘の貯金六百八十万円の行方と、身に覚えのない不動産売買契約書。なぜ仲居は危険を冒してまで彼を助けたのか。家族の財産と娘の人生を守るため、老大工の静かな反撃が始まる。怒り|親不孝|真実|親子関係|修羅場2.8万字5 835 -
完結第18話
父の一周忌、兄が追い出そうとした母子の契約書
父の一周忌を終えた翌朝、45歳の西村綾子は、空き家のはずの実家で見知らぬ母娘に出会う。兄の正人は「不法占拠だ」と警察を呼ぶが、12歳の少女が差し出したのは、亡き父の署名が入った三年間の賃貸借契約書だった。さらに兄は、綾子に無断で実家の売却を進めていたことが判明する。父はなぜ、家族にも知らせず母娘を住まわせたのか。そして、兄がそこまでして家を売ろうとする本当の理由とは。父の遺した一枚の契約書から、家族が隠してきた秘密が次々と明らかになっていく――。怒り|真実|絶縁|親子関係|修羅場2.2万字5 178 -
完結第10話
出張先で娘が「物置で寝てる」と泣いた夜
札幌へ出張中の宮崎亮平に、深夜十一時、八歳の娘・美和から一本の電話がかかってきた。 「パパ、ママと物置で寝かされてるの。寒いよ……」 半年前から同居を始めた母の貴子は、妻の早苗と娘を冷遇していた。しかし亮平は、妻の訴えを「母さんに悪気はない」と聞き流し続けていた。 翌朝、急いで帰宅した亮平が見つけたのは、外から扉を固定された物置で震える妻と娘。そして早苗が隠し持っていた一枚の契約書だった。 そこには、妻の不動産持分を妹へ無償譲渡するという信じがたい内容が記されていた。 家族を守るはずの家で、母と妹はいったい何を企んでいたのか――。祖父母と孫|真実|裡の顔|真相|親子関係1.5万字5 421 -
完結第18話
出産の日に捨てられた私の逆転
身分を隠し、愛する夫との平凡な幸せを選んだスー・ジーイェン。 しかし出産を目前にした日、夫のティンフォンは別の妊婦に付き添い、破水した妻を病院で見捨てた。 「俺が戻るまで勝手に産むな」 助けを求めても冷たく突き放され、絶望の中で彼女が押したのは、七年前に父から渡された銀色のペンダントだった。 その五分後、病院の空気が一変する。 身寄りのない女だと見下されていた彼女には、誰も知らない秘密があった。 夫の裏切りから始まった悲劇は、やがて病院全体を揺るがす巨大な不正へとつながっていく――。夫婦|第二の人生|親子関係|修羅場|不倫2.1万字5 1104 -
完結第20話
正月に八人で来る嫁へ、家は売りました
68歳の頼子は、毎年正月になると、息子の嫁から大人数の宿泊や豪華な料理、お年玉まで当然のように押しつけられていた。 さらに嫁は、留守中に合鍵で侵入して宴会を開き、頼子の家を将来の相続財産として勝手に査定していた。息子も「家族だから」と妻をかばうだけだった。嫁姑|親不孝|第二の人生|ATM扱い|親子関係|金銭問題2.6万字5 4202 -
完結第20話
昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで
借金四千三百万円を抱え、閉店寸前の老舗餅店。家族が寝る間も惜しんで働く中、嫁の美穂だけは店の隅で昼寝を続けていた。 ところが大口注文で二百万円を売り上げても、残ったのは六十万円の赤字。美穂は帳簿を分析し、赤字商品や無料配達、掛け売りを次々と整理していく。因果応報|人生逆転|嫁姑|親子関係|修羅場2.6万字5 294 -
完結第13話
母の遺品と千万円の組紐
「これをどこで手に入れたんですか?」――家賃三ヶ月を滞納し、退去通告を突きつけられた三十九歳のシングルファーザー・大輔。六歳の娘を抱えて困窮する彼は、七十歳で逝った母の遺品である反物と組紐を売ろうとするが、店員に数百円のゴミ扱いされる。だが路地裏の老舗呉服店へ持ち込んだ瞬間、女主人は青ざめ指を震わせた。生前「古臭い」と見下していた母の手仕事。仏壇の奥から見つかった桐箱と、三十年分の手帳に記された数千万円に及ぶ謎の記録。母は何者だったのか? 箱の底に残された「困った時の支えにしなさい」というメモの真意とは――。親子関係|金銭問題1.9万字5 241 -
完結第20話
妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘
事故で下半身不随になった妻を前に、夫・大介は「僕が君の足になる」と誓う。ところが五歳の娘・春だけは冷たく「帰る」と言い、父に病室の毛布の下を見るよう促した。 そこに隠れていたのは、事故当時に妻と一緒にいた浮気相手。家族を置いて密会していた妻は、事故の賠償や介護まで夫に押しつけようとする。 幼い娘の一言で裏切りを知った父が、離婚と親権確保を決断し、娘と二人で新しい生活を始める物語。夫婦|真実|真相|親子関係2.0万字5 1458