"祖父を迎えた家に福が来た" 第2話
けれど今になって、祖父のった顔や兄の言葉が、そのの記憶とつながり始めていた。
祖父は、私たちが実を訪ねても兄夫婦の悪をほとんど言わなかった。
「元気にしとるよ」
いつもそう笑っていた。
ただ、あのはそれほど広くない。
リビングと祖父の部は廊を挟んでく、兄夫婦が宅しているに本音を話せば、聞かれてしまう能性がある。
私が悩んでいると、匠がつ提案した。
「見守りカメラ、置いてみるか?」
「カメラ?」
「ペット用とか介護用のやつ。おじいさんの様子を確認できれば、なくとも普段どう暮らしてるか分かる」
私はすぐには賛成できなかった。
兄夫婦に無断でのを撮することには抵抗があるし、祖父にまで黙って設置するのも苦しい。
それでも、何もしないまま祖父を放っておく方が怖かった。
結局、次に実を訪れた、祖父の活状況を確認する目で型の見守りカメラを設置した。
映る範囲は祖父の部だけに限定した。
数だけ様子を確認し、何もなければそう。
そう決めていた。
ところが、最初に映ったものだけで私は言葉を失った。
夕方。
幼稚園から帰ってきた甥が、祖父の部へ勢いよく入ってきた。
「おい、じじい。今帰ったぞ」
祖父が顔をげる。
甥は笑いながら、さらに言った。
「まだきてたか」
広告
私は画面ので固まった。
5歳の子供が、自分でそんな言い方を覚えるだろうか。
隣にいた匠がい声で言った。
「親が言ってるんだろうな」
私はすぐ実へ乗り込みたくなった。
だが、もうしだけ様子を見ることにした。
やがて兄嫁が部へ入ってきた。
普段、私たちに見せている穏やかな顔とはまるで違う。
画質が良いわけではないのに、苛っていることは声だけで分分かった。
「自分の洗濯くらいしなさいって言ったでしょう!」
祖父がさな声で何か答えた。
以、祖父は私に「洗濯は義姉さんがしてくれる」と言っていた。
それも嘘だったらしい。
「何でやってないのよ。この暇!」
「すまんのう。今はし腰が痛くて」
「言い訳しない!」
兄嫁の鳴り声が響いた。
「罰としては族全員の洗濯もしなさいよ。ただし、あんたの汚いと私たちのは緒に洗わないで」
祖父は何度もをげていた。
私は拳を握った。
匠はさらにっていた。
「ここまでひどいとはわなかった」
その夜。
夕のになると、さらに胸が痛くなる景が映った。
兄嫁が盆を持って祖父の部へ入ってくる。
「さっさとべて、終わったら台所に持ってきてよ」
乱暴に置かれた盆には、茶碗にしのご飯と噌汁しかないように見えた。
おかずは見当たらない。
祖父は族と緒に卓を囲むことさえ許されていないようだった。
広告
で。
さな部で。
ほんのしの事をに運んでいる。
私は画面を見ていられなくなった。
「匠」
「うん」
「、く」
夫はすぐ頷いた。
「おじいさんを連れてこよう」
「いいの?」
「何言ってるんだよ」
匠は本気でっていた。
「俺たちのには部もある。こんな活させておく方が嫌だよ」
自分の祖父のために、ここまでってくれる。
それがありがたくて、私は泣きそうになった。
翌。
私たちは朝から実へ向かった。
兄と兄嫁をにして、私は単刀直入に言った。
「おじいちゃん、うちで暮らしてもらうから」
兄が目を丸くした。
「急に何だよ」
「に言ったよね。おじいちゃんの世話を押しつけられて迷惑だって」
兄は言葉に詰まった。
「だったら、私たちが引き取る」
兄は瞬、ほっとしたような顔をした。
だが。
「駄目よ」
兄嫁がすぐを挟んだ。
「おじいさんはここにんでもらいます」
私はわず聞き返した。
「どうして?」
祖父を邪魔者のように扱っている。
事もまともにさない。
それなのに、からすことだけは頑なに拒む。
兄嫁の目に、妙な焦りが浮かんでいた。
「本に聞けばいいでしょ」
私がそう言うと、兄嫁の表が瞬張った。
「おじいさんは環境が変わると混乱するのよ。寄りなんだから」
「それを決めるのはお義姉さんじゃないよ」
兄は黙ったままだった。
兄嫁に逆らえないのだろう。
私はそのまま祖父の部へ向かった。
匠もろからついてくる。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
貧乏人と呼ばれた食卓
長男夫婦が3連休に帰省し、久しぶりに家族で食卓を囲むはずだった。 母の真紀子は、息子夫婦のために煮物や豚汁を用意し、昔と変わらない温かい夕飯を作ろうとしていた。ところが、台所で2人きりになった瞬間、長男嫁の美沙は笑いながら言い放つ。 「あんたの手作りとか無理だから、高級寿司出せよ、貧乏人」 その一言で、これまで見過ごしてきた違和感が一気に表へ出る。人を持ち物や育ちで見下す美沙の本性。そして、真紀子の過去まで侮辱された時、普段は温厚な夫・隆志が静かに立ち上がった。 「今日限りで絶縁だ」 さらに隆志が呼び出した“ある男”の登場によって、美沙の家庭に隠されていた価値観と金の問題まで明らかになっていく。 古い皿、手作りの料理、そして家族として本当に大切なものとは何か。 一度壊れた食卓から、それぞれの人生が大きく動き出す――。絶縁|親子関係1.7万字5 2 -
完結第13話
古い工場を渡された嫁
食品会社を一代で守ってきた山代会長は、ある夜、庭で長男夫婦の会話を偶然聞いてしまう。 「お母様、これから先どれだけ生きられるかしら」 信じていた嫁が、自分の命も会社も、すでに財産として数えている――。その一言をきっかけに、会長はある決断をする。 自分は重い病にかかり、会社も危機にある。そう家族に告げ、2人の嫁に後継者を決めるための試練を与えたのだ。 華やかな長男の嫁・彩佳には会社を。 不器用で人の良すぎる次男の嫁・ユナには、地方にある廃業寸前の古い工場を。 誰もが、勝者と敗者は決まったと思っていた。 しかし3か月後、会社を手に入れた嫁と、古い工場へ送られた嫁の運命は、誰も予想しなかった形で逆転していく――。兄弟姉妹|嫁姑|相続|親子関係2.0万字5 0 -
完結第9話
家族じゃないなら、援助も終わり
63歳の遠藤由美子は、ある日突然、息子夫婦から8500万円のタワーマンション購入の連帯保証人になってほしいと頼まれる。 「形式的なものだから」 「親なら普通、協力するでしょう」 そう言われても、由美子は簡単に頷けなかった。退職後の老後資金まで巻き込む大きすぎる借金。しかも息子夫婦は、すでに物件を申し込み、由美子が保証人になる前提で話を進めていた。 断った瞬間、息子は言い放つ。 「保証人にならないなら、もう家族じゃない」 さらにその夜、銀行からの確認電話で、由美子は信じられない事実を知る。自分たちの預貯金額が勝手に書類へ記載され、1000万円の援助まで予定されていたのだ。 誰が、いつ、なぜそこまで知っていたのか。 親の愛情を当然の権利だと思い込んだ息子夫婦と、初めて「援助しない」と決めた母。 家族という言葉の裏に隠れていた歪みが、静かに崩れ始める――。絶縁|親子関係1.4万字5 4 -
完結第11話
夫の娘は、私にだけ謝った
結婚34年目、夫は突然こう告げた。 「娘が見つかった。だから離婚してほしい」 夫には、結婚前に生まれていたもう一人の娘がいた。しかも夫は、その娘のために今の家庭を離れ、父親としてやり直したいと言う。 しかし、真由美が初めて会った“夫の娘”綾香は、なぜか彼女に頭を下げた。 「私のせいで離婚しないでください」 夫は本当に、最近になって娘の存在を知ったのか。なぜ綾香は、父親ではなく真由美に会おうとしたのか。 やがて明らかになるのは、36年前に封じられた手紙と、12年前から夫が隠し続けていた事実だった。 突然現れた娘は、家庭を壊しに来たのではなかった。 34年続いた夫婦の中で、誰も口にしなかった本当の問題を、静かに照らし出していく――。夫婦|親子関係1.6万字5 174 -
完結第11話
席次表から消された母
25年間、血のつながらない息子・亮を育ててきた奈津子。 幼い頃の発熱、不登校、受験、就職、そして結婚。どんな時もそばにいて、亮からはずっと「母さん」と呼ばれてきた。 しかし結婚式を目前にしたある日、夫は奈津子に告げる。 「本当の母親へ席を譲ってくれ」 突然現れた亮の実母・真理子。奈津子は自分の25年間が否定されたような痛みを抱えるが、式の3日前、真理子から思いがけない連絡が届く。 「私は、あなたの席を奪いたいなんて一度も言っていません」 さらに明かされたのは、亮に毎年送られていたはずの手紙の存在だった。 なぜ手紙は届かなかったのか。 誰が、二人の母親と一人の息子の時間を止めていたのか。 結婚式直前、25年間隠されてきた家族の嘘が静かにほどけ始める――。絶縁|親子関係1.7万字5 167 -
完結第13話
閉じ込められた臨月の妻
妊娠38週、予定日まであと12日の加奈。夫が海外出張へ出た2日後、突然訪ねてきた義両親は「様子を見に来た」と言いながら、家事や学歴を責め続けた。そして義母に促され、家庭用サウナの中を確認しようと入った瞬間、背後で扉が閉まる。外側には南京錠。スマートフォンまで奪われた。「私たちから息子を奪った罰よ」。そう言い残し、義両親は5泊7日の温泉旅行へ出発した。水もなく、いつ陣痛が始まってもおかしくない密室。しかし加奈には、義両親が知らないことがあった。このサウナは、かつて一級建築士だった加奈自身が安全設計に関わった機種だった――。嫁姑|親子関係|修羅場2.0万字5 640 -
完結第12話
ゆで卵ひとつで嫁をやめた朝
夜勤明けの朝9時、16時間働いて帰宅した千明の前に置かれたのは、冷たいゆで卵が1つだけだった。 食卓には夫と義母のための朝食が並んでいる。炊きたてのご飯、味噌汁、焼き魚、小鉢。けれど、千明の分だけはなかった。 「食べられるだけ感謝しろ」 義母のその一言で、千明の中で8年間張りつめていたものが静かに切れる。 同居する義母の生活費、光熱費、食費、固定資産税まで支え続けてきたのは誰だったのか。夫は本当に何も知らなかったのか。そして、毎月の明細に隠れていた“もう一つの家族”とは――。 家を出て3日後、義母からの着信は100件に達した。 たった1つのゆで卵から始まった決別が、8年間隠されてきた家族の金と嘘を暴いていく。嫁姑|絶縁1.9万字5 1297