"荷造りの日に消えた夫の行き先" 第3話
《自分では何も来ないみたいで嫌だった》
謝と満。
両方が同じノートのに残っている。
《織がいなければ、俺はここまで回復していない。それだけは絶対に忘れない》
次のページ。
《でも、今は織がいると、自分で来ることまで来なくなる》
織はそこでノートを閉じた。
腹がった。
しかった。
でも何より、自分のらない修が7、このノートのでずっと考えていたことが苦しかった。
帰宅した修には、すぐノートのことを話さなかった。
夕、いつもの習慣で薬を包ずつテーブルへ並べようとして、織はを止めた。
「薬」
修が言った。
「自分でして」
「何?」
「自分で来るでしょう」
夫はし驚いた顔をしたが、薬箱を自分でけた。
朝。
昼。
夜。
包ずつ確認する。
ったよりがかかった。
それでも来た。
織は、その姿を見ながら妙に腹がった。
来るなら、もっとくやればよかったのに。
でも同に。
やろうとしたに自分が横から取っていたのかもしれないとった。
どちらが先だったのか、もう分からない。
翌週。
幸恵が潟から来た。
兄が持っていく荷物を確認し、薬について織が説しようとすると、幸恵は首を横に振った。
「私じゃなくて、お兄ちゃんに説して」
「本だけだと忘れることあるよ」
「忘れるなら自分でメモすればいいでしょう」
広告
織はし苛った。
「そう簡単に言えるのは、7緒に暮らしてないからだよ。薬つ違えたら再発することだってあるんだから」
幸恵の顔が変わった。
織は言い過ぎたとった。
ところが幸恵は反論しなかった。
「そうだね。私は7やってない」
「……」
「織さんがどれだけ変だったか、全部分かるなんて言えない」
それだけ言って、幸恵は薬の説を兄へ聞き直した。
そのの夜。
織はで泣いた。
夫も。
息子も。
義妹も。
自分が夫を縛っていると言う。
でも7。
病院の廊で、
「今、で常活を送れない能性もあります」
と医師から告げられたのは自分だった。
夜。
修が眠っている。
呼吸しているかになり、胸がしているのを何度も確認した。
呂で滑りかけた。
ほんの数秒。
をしていた自分を責めた。
また同じことが起きる。
その恐怖が。
今も消えていなかった。
翌。
もう度ノートをいた。
今度は最の方から読んだ。
2ヶ。
見覚えのない病院名がいてある。
《関脳神経センター》
その。
《織には言わない》
さらに。
《もし今回の結果が悪かったら、婚を急ぐ》
織の指が止まった。
「関脳神経センターって何?」
翌朝。
朝をべていた修の箸が止まった。
「何でってる?」
「ノート見たから」
修はすぐにはらなかった。
広告
むしろ。
見つかったか、という顔になった。
「いつ病院へったの?」
「2ヶ」
修は、で買い物へった帰り、の指先にな痺れをじたという。5分ほどで治ったため織には言わず、次の定期診察で主治医へ相談した。
のため。
詳しい画像検査を受けることになった。
「結果は?」
「すぐ何かする状態じゃない」
「じゃあ丈夫なの?」
「丈夫って言い切れるなんかいないよ」
織は声をめた。
「あなたは回やってるでしょう!」
修も顔をげた。
「だから言わなかったんだ!」
とも。
瞬黙った。
病気のことで。
真正面から鳴りったのは初めてだった。
今までは織が説し、修が最には「分かった」と従った。
「私に言ったら何するとったの?」
修は即答した。
「でさせなくなる」
織は否定しようとして。
来なかった。
たぶん。
その通りだった。
「婚するのも、これが理由?」
「全部じゃない」
「じゃあ何が全部なの?」
修はしばらく黙り、やがてい声で言った。
「怖いんだよ」
「再発が?」
「違う」
夫は自分のを見た。
「ぬまで病としてきることが」
織は何も言えなかった。
「俺、ここまで戻ったんだよ」
修は続けた。
「完全じゃない。でもで歩ける。にも乗れる。簡単な料理だってできる」
「包丁は危ないって先も」
「ほら!」
修が珍しくテーブルを叩いた。
「またそれだよ」
部が静かになる。
「俺が何かやろうとすると、危ない、また倒れたら、先が。ずっと同じだ」
「配だからでしょう」
広告
おすすめ作品
-
完結第10話
隠し子を知っていた55歳妻
結婚30年。55歳の律子は、61歳の夫・正典から突然「好きな人がいる」と告げられる。相手は34歳の女性。そして2人の間には、3歳の男の子までいた。しかし律子は驚かなかった。「れん君でしょう? 1年前から知っていました」。夫の顔から血の気が引く。離婚届を差し出されても、律子は微笑んで「離婚しません」と拒否した。夫への愛が残っていたからではない。この1年間、弁護士への相談、財産や年金の確認、仕事探しまで、誰にも知られず自分の人生を立て直す準備をしていたからだ。30年間、自分の人生を夫の都合で決められてきた妻は、最後の別れの日だけは自分で選ぶと決めていた――夫婦|不倫1.4万字5 2091 -
完結第10話
「冷たい嫁」と書かれた分担表
義母の介護を一人で背負うことを断った佐和子に、夫は冷たく言い放った。 「介護をしないなら、遺産は弟夫婦に譲る」 これまで買い物も通院も掃除も、黙って引き受けてきたのは佐和子だった。それなのに、義母の家で現金が消え始めると、疑いの目は真っ先に彼女へ向けられる。 さらに見つかったのは、義母が書いたはずの《佐和子さんがしたこと》というノート。そこには、覚えのない失敗や盗みの記録が並んでいた。 本当に義母の思い込みなのか。 それとも、誰かが佐和子を“悪い嫁”に仕立てようとしているのか。 介護、遺産、家の売却、消えた薬――。 家族のために我慢し続けてきた妻が、ようやく自分の人生を取り戻すまでの物語。兄弟姉妹|嫁姑|相続|介護1.4万字5 1929 -
完結第11話
夫の娘は、私にだけ謝った
結婚34年目、夫は突然こう告げた。 「娘が見つかった。だから離婚してほしい」 夫には、結婚前に生まれていたもう一人の娘がいた。しかも夫は、その娘のために今の家庭を離れ、父親としてやり直したいと言う。 しかし、真由美が初めて会った“夫の娘”綾香は、なぜか彼女に頭を下げた。 「私のせいで離婚しないでください」 夫は本当に、最近になって娘の存在を知ったのか。なぜ綾香は、父親ではなく真由美に会おうとしたのか。 やがて明らかになるのは、36年前に封じられた手紙と、12年前から夫が隠し続けていた事実だった。 突然現れた娘は、家庭を壊しに来たのではなかった。 34年続いた夫婦の中で、誰も口にしなかった本当の問題を、静かに照らし出していく――。夫婦|親子関係1.6万字5 613 -
完結第13話
離婚後に生まれた息子
10年間の不妊治療の末、「子供もできなかった」と姑に責められ、夫・健一から離婚を告げられた38歳の由美。ところが離婚から2週間後、最後に受けた治療が実っていたことが判明する。由美は悩んだ末、元夫には知らせず、実家で1人の男の子を出産した。それから1か月。離婚から10か月後のある日、玄関に現れたのは健一と、彼が再婚する28歳の美香だった。「来月、結婚式をするんだ」と招待状を差し出そうとした健一。しかし、由美の腕に抱かれた赤ん坊を見た瞬間、その笑顔が消える。「その子……まさか俺の?」。10年間「子供を産めない妻」と責められ続けた由美の人生が、そこから大きく動き始める。夫婦|真相|修羅場2.0万字5 4137 -
完結第10話
ブラックカードを止めた10分後
結婚5年目、38歳の小百合は夫・拓也から離婚を突きつけられた。拓也が選んだのは、35歳の女医・玲子。「5年間も専業主婦で楽できたんだから十分だ」「これからは自分で稼げ」と笑う夫と義家族は、小百合を“1円も稼げない女”だと思い込んでいた。離婚届に判を押したその日、拓也は玲子を連れて両親との祝いの席へ向かう。小百合は何も言い返さず、玄関が閉まってから10分後、カード会社へ1本の電話をかけた。「家族カード3枚、すべて利用停止にしてください」。その夜、高級レストランで45万8000円の会計を前に、拓也一家が初めて知ることになる。自分たちが当然のように使っていた“豊かな生活”は、いったい誰のお金で成り立っていたのか――。人生逆転|夫婦|不倫1.5万字5 2242 -
完結第10話
父の葬儀の日_夫は愛人を車に乗せて去った
48歳の由美は、3年間ほぼ1人で父を介護し、78歳の父を見送った。ところが葬儀の帰り、20年連れ添った夫・浩司は、愛人と思われる女性を助手席に乗せたまま、喪服姿の由美を雨の駅前で車から降ろす。「俺だって1日付き合って疲れてるんだ」。由美は泣かず、父が亡くなる2日前に渡してくれた古い革鞄を開いた。中にあったのは、1通の手紙、弁護士の名刺、そして夫の会社に関する資料。手紙の最初には、「浩司君に、私の通帳も印鑑も渡してはいけない」と書かれていた。なぜ父は、娘の夫をそこまで警戒していたのか。由美は父が最後に残した手がかりを追い始める。夫婦|親不孝|金銭問題|修羅場|不倫1.5万字5 624 -
完結第6話
帰宅した夜、夫の嘘を知った
里帰り出産を終え、生後2ヶ月の息子を抱いてようやく自宅へ戻った美咲。夫・直人との3人暮らしが始まると思っていたその夜、隣人が突然玄関を叩いた。「毎晩毎晩、夜中までいい加減にしてください」。さらに「ご主人には前にも2回注意しました」と告げられ、美咲は耳を疑う。この2ヶ月、美咲は一度も家に帰っていない。では、隣人が何度も見かけた“妻らしき女性”は誰だったのか。問い詰められた直人は「会社の後輩が1度泊まっただけ」と説明するが、翌朝、隣人の証言によってその嘘も崩れ始める。出産のため家を離れていた2ヶ月間、自分の家庭で何が起きていたのか――美咲は静かに真実を確かめ始める。嫁姑|夫婦|不倫8.8千字5 2048 -
完結第13話
判を押さなかった妻
65歳の佳代は、38年間連れ添った夫・修司から突然、離婚届と一枚の写真を差し出される。 写真に写っていたのは、10歳になる男の子。夫が11年前から外で関係を続けていた女性との子どもだった。 「離婚して、残りの人生は好きに生きたい」 そう言いながら修司は、離婚後も佳代に家に残り、食事や洗濯、薬の管理まで続けるよう当然のように求めてくる。 しかし佳代は、すぐには判を押さなかった。 悲しくて離婚できなかったわけではない。夫が隠してきた金の流れ、削られていた義母の施設費、そして“新しい人生”の裏にある都合のいい計画を、すべて明らかにするためだった。 38年間尽くしてきた妻が、最後に守ろうとしたものとは――。人生逆転|夫婦|熟年離婚1.9万字5 2392 -
完結第11話
退職金より失ったもの
「退職金は俺が39年間働いて得た金だ。お前には1円も渡さない」 定年を迎えた夫の一言で、39年間家族を支えてきた妻・佳代の心は静かに壊れた。 夫は、家事も育児も介護も、妻がしてきた全てを「家にいただけ」と言い切った。 しかし翌朝、佳代が残した青いファイルを開いた夫は、初めて知らなかった事実を目にする。 そこには、39年間の家計の記録と、誰が何を支えてきたのかを示す証拠が残されていた。 「では、全部清算しましょう」 妻が選んだのは、夫の退職金を奪うことではなかった。 夫婦として積み重ねてきた時間、その価値をもう一度問い直すことだった。 2760万円の退職金よりも先に、夫が失った本当のものとは――。夫婦|退職金|金銭問題|熟年離婚1.7万字5 1793 -
完結第13話
余命半年からの再出発
余命を告げられた日、夫は離婚届を置き、息子も「必要なことがあったら連絡して」と距離を置いた。 58歳の桐谷佳代子は、病気だけでなく、33年間築いてきた家族まで同時に失った。 誰もいない台所で一人分の味噌汁を作りながら、絶望の中にいた佳代子だったが、病院で出会った人々との縁をきっかけに、少しずつ自分の人生を取り戻していく。 治療、離婚、家を失う危機。 それでも彼女は、針と糸を手に取り、病気と向き合う人のための帽子作りを始める。 家族に必要とされることでしか自分の価値を感じられなかった女性が、人生のどん底から見つけた本当の生き方とは――。人生逆転|夫婦|第二の人生2.0万字5 1300