"尋ね人が呼んだ母の旧姓" 第7話
子の顔。
恵子を抱くの癖。
具が悪いのに、娘のでは平気なふりをしていたこと。
ある夜、い声で、
「もし私に何かあったら、この子だけは本へ」
と頼まれたこと。
恵子も、自分の記憶のに残る断片を話した。
になった今では、それが本当の記憶なのか、から聞いた話が混ざっているのか分からないものもあった。
それでも、2は諦めなかった。
清も協力した。
最初こそ突然現れた過に戸惑っていたが、文子の話を聞いてからは、恵子を疑うような態度を取らなくなった。
ある夜、夫が茶のへ入ると、清が古いへ何かをき写していた。
「父さん、それ何?」
「子さんの掛かりになりそうなことを理してる」
夫はし驚いた。
「父さん、ってないの?」
清は鉛を置いた。
「ってないと言ったら嘘になる」
夫は黙った。
「でも、母さんが昔に子どもを隠してたのとは話が違う」
清は文子がいる台所の方を見た。
「あのの母さんも、どうしていいか分からんで、子ども1を連れて帰ったんだろ」
それ以は言わなかった。
夫には、父も自分なりに理解しようとしているのが分かった。
数かが過ぎた。
が終わり、しずつがくなった頃。
ようやく1つの記録が見つかった。
引き揚げの途で残された名簿のに、子の名があった。
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文子はそのらせを受け、恵子とともに記録を確認した。
子は、文子と恵子がれたもきていた。
文子はその事実をった瞬、両で元を押さえた。
「きてたの……」
あの、自分が探しきれなかった所のどこかで、子も娘を探していたのかもしれない。
しかし記録には続きがあった。
子はその、本へ戻る途で病気になった。
そして帰国を目にしてくなっていた。
恵子はから目をせなかった。
ようやく本当の母親の方が分かった。
だが、会うことはできない。
自分が19りたかった答えの1つは、決して望んでいた形ではなかった。
文子は何も言えず、恵子の隣に座っていた。
記録の最に、い言葉が残されていた。
「娘・恵子は文子と」
恵子は、その文を何度も読んだ。
指で文字をなぞるように見つめた。
子は最まで、娘が文子と緒にいることをっていた。
なくとも、娘が1ではないことをったままを終えていた。
恵子の目から涙が落ちた。
「お母さん、ってたんですね」
文子も泣いていた。
「あの、ってたんだね……私と緒だって」
もし子が娘の方を全くらないままくなっていたなら、文子は自分を責め続けたかもしれない。
だが、最の記録には文子の名があった。
「文子と」
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子が文子を信じていた証のようにも見えた。
い、文子の胸のに残っていた罪悪が、その文でわずかにほどけた。
その帰り。
恵子は何度も黙り込み、々にした記録の写しを確認した。
岡田へ戻り、茶のへ入ってからも、しばらく何も言わなかった。
そして突然、文子に尋ねた。
「お母さんって呼んでもいいですか」
文子は驚いて顔をげた。
「あなたのお母さんは、子さんよ」
文子はすぐにそう答えた。
それは、13からずっとのにあった言葉だった。
自分は恵子の本当の母親ではない。
どれほど緒に歩いても、どれほどべ物を分けても、どれほどを握っていても、子の代わりになることはできない。
恵子は静かに頷いた。
「分かっています」
「だったら……」
「でも、あのの私には、お母さんが2いたんだといます」
文子は何も言えなくなった。
「私を産んでくれた子さん」
恵子は元の記録へ線を落とした。
「それから、本まで連れて帰ってくれた文子さん」
血を分けた母。
そして、き延びるためにをさなかった母。
どちらか1を選ばなければならない理由はない。
恵子にとっては、2とも自分ののに確かにする「母」だった。
「私は子さんを忘れたくありません」
恵子は続けた。
「会えなかったけど、本当のお母さんだったって分かりました。
最まで私のことを気にしてくれていたことも」
文子は黙って聞いていた。
「でも文子さんのことも、らないとはえません」
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