"帰る家は、ちゃんとあった" 第5話
「順さんから聞いてませんか? しばらくお伝いに来ます」
「族でもないくせに」
胸が詰まった。
私は順の妻だ。
義母から見れば、なくとも戸籍は族のはずだった。
そこまで嫌われているのかとうとしくなった。
それでも私は、義母も介護活が始まったばかりで定なのだろうと考え直した。
掃除を始め、事を用した。
洗濯物も片づけた。
義母が必なものをの届く所へ移した。
ところが、義母の態度は柔らかくなるどころか悪化していった。
を拭いていれば、
「私が何もできないとって馬鹿にしてるの?」
と言われる。
料理をすれば、
「が濃い」
「切り方が雑」
「こんなものべられない」
と文句をつけられる。
私がし休憩しようと座ると、
「もう休むの? 宅の仕事しかしてないから体力がないのね」
と笑われた。
あるには、義母の元にあった聞がんできた。
別のにはリモコンがへ投げられた。
「危ないから物を投げるのはやめてください」
私が言っても、
「げさね。あなたに当ててないでしょう」
と返されるだけだった。
私は耐えた。
だが、へ帰る頃には毎回ぐったりしていた。
自分の仕事を終わらせるため、夜までパソコンへ向かうも増えた。
限界をじ、順へ相談した。
「お願い。しはあなたもお母さんのところへって」
広告
順はスマートフォンを見ながら答えた。
「俺、忙しいって言ってるだろ」
「私だって仕事があるの」
「でできる仕事じゃん」
「それでも仕事よ。それに、お母さんから毎ひどいことを言われてる」
そこで順はようやく顔をげた。
しかし私を配する表ではなかった。
「母さんに余計なストレスかけるなよ」
私はを疑った。
「え?」
「母さんがそういう態度を取るのは、お自にも問題があるんじゃないの?」
「私が悪いって言うの?」
わず声がきくなった。
「私は仕事を調してを作って、お母さんのお世話をしてるのよ。どうして私が責められないといけないの?」
順は瞬驚いた顔をした。
そして、馬鹿にするように笑った。
「あのな、おの仕事なんて調するまでもなく作れるだろ。何を偉そうに言ってるんだよ」
そのまま自へ入っていった。
私は閉まった扉へ向かって言った。
「あなた、伝うって言ったよね?」
返事はない。
「できることがあったらやるって言ったじゃない」
何度呼びかけても、順は答えなかった。
私はそのにち尽くした。
「もう無理……」
自分のからた言葉が、静かな廊に落ちた。
それから私は、義実へく回数をしずつ減らした。
けば暴言を浴びる。
何をしても否定される。
夫に相談しても、義母の方をされる。
これ以続ければ、自分のが壊れる。
広告
そうった。
そして、あの夜が来た。
順が義母をへ連れてきた。
私に相談もせず、「今から同居」と決めた。
さらに2揃って、私には親も実もないと笑った。
だから私は婚を選んだ。
「ありますよ。兄が守ってくれています」
そう告げた、私は荷物をまとめた。
順は寝まで追ってきた。
「おい、ちょっと待てって」
私はをバッグへ入れ続けた。
「何だよ、急に婚って。お、何ってんだよ」
「分からないなら、もう説しても無駄」
「母さんの介護が嫌だから逃げるのか?」
私はを止めた。
「あなた、今まで私が何をしてきたか、本当に何も見てなかったのね」
順は黙った。
私は必最限の荷物だけをまとめた。
残りはでどうにでもできる。
今はただ、このをることが先だった。
リビングへ戻ると、義母が嫌そうに私を見た。
「本当にていくつもり?」
「はい」
「悔するわよ」
私は靴を履いた。
「しないといます」
最まで順と義母は何か言っていた。
無責任だ。
妻として失格だ。
介護を投げすのか。
私はもう振り返らなかった。
へた瞬、夜の空気が頬に触れた。
議なほど息がしやすかった。
向かった所は、私がまれ、5歳まで両親と暮らしただった。
両親がくなったも、祖父母はそのを放さなかった。
私と兄のいがある所だからと、ずっと守ってくれていた。
その祖父母もすでにくなっている。
今は兄がの管理を引き継いでいた。
広告
おすすめ作品
-
完結第20話
家ごと消した母の反撃
七十一歳の美穂は、夫が入院している間、同居する長男夫婦から召使いのように扱われていた。生活費は一円も入れず、母の形見まで勝手に処分する二人。ある日、微熱で三分だけ横になった美穂に、長男嫁はワインを浴びせ、「帰るまでに掃除しておけ」と言い放つ。長男も笑うばかりだった。だが、黙って「はい」と答えた美穂には、二人の知らない計画があった。三日後、帰省先から戻った長男夫婦は、信じられない光景を目にする。嫁姑|親不孝|親子関係|金銭問題2.0万字5 983 -
完結第10話
すり替えた味噌汁
検事任官の最終面接を迎えた朝、神田玲奈は義母が自分の味噌汁に何かを混ぜる姿を目撃する。夫にも相談できないまま、玲奈は不審な味噌汁を密かに保管し、何食わぬ顔で食卓に戻った。同じ日、義妹の彩佳も三度目の教員採用試験に挑もうとしていた。玲奈が彩佳と味噌汁の椀を交換した瞬間、義母は血相を変えて叫び出す。嫁姑|第二の人生|金銭問題1.4万字5 60 -
完結第10話
七〇二号室の秘密
入籍12日目、初めて義実家を訪れた遥香は、豪華なすき焼きの陰で、義姉・真帆が水をかけた冷や飯だけを食べさせられている姿を目撃する。 真帆から託された住所を訪ねると、そこには夫・直樹がいた。彼は義姉の避難部屋を用意しながら、兄と母を恐れて救出を先延ばしにしていたのだ。兄弟姉妹|嫁姑|夫婦|真実|裡の顔|修羅場2.0万字5 364 -
完結第13話
三年前に署名させた離婚届
「息子は金髪美女と再婚するのよ」――玄関先で勝ち誇る義母が突きつけてきたのは、一方的な離婚届だった。大手商社勤務の夫に裏切られ、三ヶ月の海外出張中にも不貞の影に苦しめられていた妻のナナ。だが、見下され続けた妻は取り乱すどころか、冷ややかに微笑んだ。義母も夫も知らなかったのだ。三年前に署名させた一枚の用紙と、水面下で集められた決定的な証拠の存在を。鳴り止まない何十件もの着信を前に、彼女は静かに告げる。「離婚届なら、とっくに提出済みですよ」嫁姑|夫婦2.0万字5 198 -
完結第20話
「施設へ行け」と家を追われた七十五歳、亡き妻の山で見つけた宝
妻を亡くした七十五歳の佐伯源次郎は、一人息子の「一緒に暮らそう」という言葉を信じ、長年守ってきた自宅の名義を譲った。しかし、待っていたのは冷たい仕打ちと老人ホームへの入居命令だった。すべてを失った源次郎が向かったのは、亡き妻が幼い頃から愛した信州の山奥。荒れ果てた古民家を直し、畑を耕し、村人たちと心を通わせる日々の中で、妻が遺した「甘い水」に思いがけない価値が見つかる。相続|親不孝|親子関係|介護|金銭問題2.9万字5 0 -
完結第18話
箱詰めされた母の人生
義母のスマートフォンに届いた、夫・大輔からの一通のメッセージ。「歩美の母親のことは俺がうまく処理したよ(笑)」。不安に駆られた歩美が実家へ駆けつけると、母の幸子は一人で荷物を段ボールに詰めていた。しかも母は、娘に迷惑がられていると信じ込み、高齢者向け住宅への入居と自宅の売却を進めていたのだ。そんなことは一度も言っていない。夫はなぜ、母と娘の間に嘘を重ねたのか。書類に残された「1500万円」という数字から、九年間信じてきた夫の恐ろしい計画が明らかになっていく。裡切られた|怒り|嫁姑|絶縁2.2万字5 0 -
完結第10話
残高ゼロの通帳
経理主任として働く三十九歳のゆきは、同居する義母から突然、給与明細を突きつけられる。「月四十万円も稼いでいるなら、通帳は私が管理するわ」。勝手に給料の使い道を決められ、夫に助けを求めても返ってきたのは「母さんに任せれば楽だろ」という言葉だった。ついに「嫌なら出ていけ」と言い放たれたゆきは、抵抗するどころか、笑顔で通帳を差し出す。しかし、その夜、彼女は誰にも知られず一つの手続きを済ませていた。嫁姑|夫婦|第二の人生|金銭問題1.5万字5 1287 -
完結第20話
正月に八人で来る嫁へ、家は売りました
68歳の頼子は、毎年正月になると、息子の嫁から大人数の宿泊や豪華な料理、お年玉まで当然のように押しつけられていた。 さらに嫁は、留守中に合鍵で侵入して宴会を開き、頼子の家を将来の相続財産として勝手に査定していた。息子も「家族だから」と妻をかばうだけだった。嫁姑|親不孝|第二の人生|ATM扱い|親子関係|金銭問題2.6万字5 6635 -
完結第20話
昼寝ばかりの嫁が、潰れかけの餅屋を救うまで
借金四千三百万円を抱え、閉店寸前の老舗餅店。家族が寝る間も惜しんで働く中、嫁の美穂だけは店の隅で昼寝を続けていた。 ところが大口注文で二百万円を売り上げても、残ったのは六十万円の赤字。美穂は帳簿を分析し、赤字商品や無料配達、掛け売りを次々と整理していく。因果応報|人生逆転|嫁姑|親子関係|修羅場2.6万字5 377 -
完結第20話
愛人と帰国した夫、30分の猶予
「この後彼女が来るから早く出て行けよ」 南の島から愛人と帰国した夫と義母は、日焼けした顔で私に吐き捨てた。十六年間、生活費を一銭も入れず寄生してきた挙句、亡き両親が遺した百坪の豪邸を乗っ取り、私を追い出す算段だ。届いた内容証明郵便を「慰謝料の小切手」と勘違いし、ハイタッチで完全勝利を確信する二人。 だが、愚かな親子はまだ知らない。十六歳の息子が密かに仕掛けたボイスレコーダーと、十五年前のベビーモニターが捉えた戦慄の記録を。そして、迎えに来た黒塗りの高級車の正体を。 「あと三十分後に消えます、ご安心を」 私が冷たく微笑んだその時、玄関のインターホンが鳴り響いた――。嫁姑|夫婦3.0万字5 418