"消えた嫁と浅すぎる墓" 第7話
『のがたいって言っている』
「俺は、した妻を配してるんだとってました」
涙が落ちる。
「まさか……母の棺のにいたなんて」
傍聴席から声ががった。
「私の娘を返して!」
すみ子の母だった。
齢になった母親は、親族に支えられながらちがっていた。
「16も苦しめて……」
静の肩が震える。
「最はのに7も……」
裁判から静粛にするよう注されても、母親の涙は止まらなかった。
静は度も顔をげなかった。
やがて判決の。
裁判が主文を読みげた。
「被告を懲役12に処する」
静の体がわずかに揺れた。
錠をかけられ、刑務官に連れられていく。
正雄は傍聴席からその背を見ていた。
何も言えなかった。
松子はすでにんでいる。
静は刑務所へく。
すみ子は戻らない。
武田に残ったものは、ほとんどなかった。
事件。
松子の墓は事に伴い撤された。
遺骨を引き取ろうとする親族もほとんどおらず、松子はかられた所で供養されることになった。
方。
すみ子の遺骨は、実の母親のもとへ返された。
「すみ子」
母親はさな骨壺を抱いた。
「やっと帰ってきたね」
7。
誰にも別れを告げられず消えた娘。
ようやく族のもとへ戻った。
しい墓は、当たりの良い所に造られた。
母親は墓を何度も撫でた。
「もう寒くないよ」
広告
そして父親の墓の隣に。
すみ子は静かに眠った。
事件の、正雄はにいられなくなった。
先祖代々のとを放し、ほとんど夜逃げのようにっていった。
買いもなかなかつかず、武田の建物はい放置された。
庭は雑に覆われた。
根瓦が落ち。
窓ガラスが割れた。
がい夜には、古い柱が軋む音がまで聞こえた。
子供たちは怖がって寄らなかった。
「あそこには嫁の幽霊がる」
そんな噂まで流れた。
けれど。
本当に恐ろしかったのは幽霊ではない。
あので、きているたちが16続けたことだった。
夫は妻を守らなかった。
姑は嫁をのとして扱わなかった。
義妹は、自分の財産が奪われるとった瞬、それまで見ようともしなかった義姉の苦しみを「盗の言い訳」と切り捨てた。
そしてすみ子自も。
追い詰められた末、松子の実印を無断で使い、を売って逃げようとした。
誰かだけを善にし、誰かだけを悪にすれば説できる族ではなかった。
さな歪みが16かけて積みなり。
最には誰にも止められないところまで来てしまった。
野は事件記録を閉じたも、く悔を抱えた。
1993。
あの届を受けた。
「夫婦喧嘩だろう」
そう決めつけなければ。
墓参りのを度でも探していれば。
広告
松子や静の話を別々に聞いていれば。
結果を変えられたかは分からない。
けれど、なくとも7もたいのへ放置することはなかったかもしれない。
それからいが流れた。
拡張と周辺発によって、かつて共同墓のあった斜面は姿を変えた。
2026。
そこにはしい宅や舗装が並び、若い族がき交っている。
かつての武田をるもなくなった。
墓穴があった位置を正確に覚えている者も、もうほとんどいない。
けれど。
すみ子の母親が最まで切にした墓だけは、別のに残った。
墓には特別な言葉など刻まれていない。
ただ名と、きただけ。
38。
かった。
そのうち16を、逃げられないので過ごした。
族とは、本来、がして帰る所なのかもしれない。
しかし同に。
から見えないからこそ、違いがく隠れてしまう所でもある。
嫁だから。
母親だから。
夫だから。
族だから。
そんな言葉のろに「するのが当然」が付いた。
閉じたのでは、誰かの声が消えていく。
すみ子もそうだった。
鳴られても黙った。
夫に見放されても耐えた。
逃げる準備さえ、誰にもられないようでめた。
そして最にを爆発させたには、もう目のに逃げがなかった。
になると。
すみ子の墓には、さなが咲く。
母親がきていた頃に植えたものだった。
国のいが終わるたび。
たいから芽をす。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
病院へ行かない黒い車
「健一が事故に遭ったの。危篤よ。すぐ病院へ向かいなさい!」 義母からの電話を受けた由美子は、夫の安否を案じ、家の前に用意されていた黒いハイヤーへ飛び乗った。 しかし車は、病院とはまったく違う方向へ走り出す。やがて連れて行かれたのは、電波も届かない山奥の古びた宿だった。 問い詰める由美子に、運転手は申し訳なさそうに告げる。 「すみません……指示どおりです」 夫の事故、義母の悲鳴、そして病院へ向かうはずだった車。すべては、由美子を家から遠ざけるために仕組まれた罠だった。 その裏で、夫と義母は何を終わらせようとしていたのか。 25年間、黙って耐えてきた妻が、たった一言から家族の嘘を暴き始める――。因果応報|夫婦|真相1.7万字5 21 -
完結第13話
離婚後に生まれた息子
10年間の不妊治療の末、「子供もできなかった」と姑に責められ、夫・健一から離婚を告げられた38歳の由美。ところが離婚から2週間後、最後に受けた治療が実っていたことが判明する。由美は悩んだ末、元夫には知らせず、実家で1人の男の子を出産した。それから1か月。離婚から10か月後のある日、玄関に現れたのは健一と、彼が再婚する28歳の美香だった。「来月、結婚式をするんだ」と招待状を差し出そうとした健一。しかし、由美の腕に抱かれた赤ん坊を見た瞬間、その笑顔が消える。「その子……まさか俺の?」。10年間「子供を産めない妻」と責められ続けた由美の人生が、そこから大きく動き始める。夫婦|真相|修羅場2.0万字5 4143 -
完結第10話
清掃員が書いた設計図
倒産寸前の小さな町工場に、1人の若い清掃員がいた。 佐藤ゆい、21歳。学歴は中卒。従業員たちからは名前で呼ばれることもなく、ただ雑用係として扱われていた。 そんなある日、大企業から依頼された精密部品がすべて不良品となり、工場は2000万円の違約金を突きつけられる。誰もが技術不足だと責められ、工場長の竹夫も廃業を覚悟しかけていた。 その時、ずっと黙っていたゆいが静かに口を開く。 「設計が間違っています」 中卒の清掃員が、大企業の研究所の図面に誤りがあると言い出した――。 誰も信じなかったその言葉が、やがて町工場の運命を大きく変えていく。履歴書には書けなかった彼女の本当の力とは。人生逆転|真相1.4万字5 336 -
完結第12話
ただいまの裏にあった10年
1985年8月15日、新潟県長岡市で、23歳の佐藤健一はいつものように工場を出たまま姿を消した。 自転車も、持ち物も、行き先も分からない。両親の誠とかず子は必死に息子を捜し続けたが、手掛かりは何ひとつ見つからなかった。 それから2年後、痩せ細った1人の男が佐藤家の玄関に立つ。 「ただいま」 失われた息子が帰ってきた――そう信じた両親は、彼を再び家族として迎え入れる。記憶を失っていても、生きて戻ってくれたならそれでいい。そう思いながら、佐藤家は少しずつ穏やかな日々を取り戻していった。 しかし10年後、差出人不明の小包が届く。 中に入っていたのは、小さな遺骨と、父が本物の健一に贈ったはずの腕時計。そして一枚の紙には、こう書かれていた。 「本物の息子さんをお返しします」 8年間、家族として暮らしてきた男は誰だったのか。 そして本物の健一は、あの日どこで何を奪われたのか。 失踪、偽りの帰還、そして名前を越えて残った家族の形を描く物語。ミステリー|行方不明1.7万字5 260 -
完結第13話
変な家
住宅情報サイトの編集者・森川直人のもとに、ある中古住宅の間取り図が届いた。埼玉県にある築28年の4LDK。一見ごく普通の家だが、洗面室と書斎の間には、どこからも入れない幅1メートルほどの「空白」がある。さらに、家族の生活動線から切り離された第二玄関、外からしか入れない物置、道路から見えない窓。現地を訪れた森川は、誰かを閉じ込めるための家ではないかと疑う。だが調査を進めると、別々の県に建つ2軒の家にも、まったく同じ奇妙な構造が見つかった。なぜ3人の男は、同じ「空白」を家の中に作ったのか。そして物置の奥から現れた金属扉の先には、28年間隠されてきたものが残されていた。ミステリー|真相|遺體発見|行方不明1.9万字5 213 -
完結第13話
7年目に開いた薬袋
昭和48年、広島県北部の小さな町で、誰からも慕われていた薬剤師・中村幸子が突然姿を消した。 彼女は「銀行へ行く」と言って薬局を出たまま戻らなかった。手には200万円の入った黒い鞄。けれど銀行には行っておらず、町の誰もその後の姿を見ていなかった。 真面目で優しく、患者一人ひとりに寄り添ってきた幸子。夫の哲夫は涙ながらに妻の帰りを待ち、町の人々も彼女の無事を信じ続けた。 しかし7年後、ある高齢女性の家から見つかった大量の薬が、止まっていた事件を再び動かす。 信頼されていた医師。閉ざされたままの薬局。消えた200万円。 幸子はなぜ、あの日すべてを終わらせようとしていたのか。 町の誰も疑わなかった“優しい人たち”の裏側に、7年間隠され続けた真実が眠っていた――。ミステリー|行方不明1.9万字5 871 -
完結第8話
サービスエリアで消えた三人
大型サービスエリアで、36歳の母親と9歳の息子、6歳の娘が突然姿を消した。残された夫・修一はテレビに出演し続け、「妻と子供たちを見かけた人は連絡してください」と14年間訴え続けた。世間は彼を、家族の帰りを信じて待つ父親として記憶していた。ところが事件から14年後、100キロ近く離れた古い貸倉庫の床下から黒い旅行鞄が発見される。中に入っていたのは、失踪した妻の財布と、息子が旅行当日に履いていた片方のスニーカー。そして、その倉庫の過去を調べると、夫がかつて関係を持っていた女性の名前が浮かび上がる。14年間誰も疑わなかった「3人はサービスエリアで消えた」という前提が、そこから静かに崩れ始める。ミステリー|真相|遺體発見|行方不明1.1万字5 192 -
完結第11話
1億8400万円の夜逃げ
2016年、8000万円の借金を抱えていた28歳の高橋健人は、ロト1等・1億8400万円を受け取った直後、忽然と姿を消した。 部屋からはパスポートと衣類の一部がなくなり、本人名義でフィリピンへ出国した記録も残っていた。警察も家族も、彼は借金から逃れるため海外へ消えたのだと考えた。 しかし9年後、麻布の再開発工事中、かつて健人が暮らしていたアパートの地下から、コンクリートに埋められた旅行鞄が見つかる。 中にあったのは、ひとりの男性の骨と、黒縁眼鏡。 さらに、当時見過ごされていたノートパソコンから、不審な検索履歴が浮かび上がる。 本当にロト1等に当たったのは誰だったのか。 そして、9年前に海外へ消えたはずの男は、何を隠していたのか。 1枚の宝くじが、親友同士の運命を大きく狂わせていく――。ミステリー|行方不明1.6万字5 359