"子どもを救って、僕は処分された" 第9話
文子は会の奥に座っていた。は以よりくようになったが、細いをく持つことは難しいという。
「来たんですね」
「案内をありがとうございました」
「あなたのための字ではありませんよ」
「分かっています」
文子はし笑った。
智也も受付にいた。蓮を見ても挨拶はせず、来者名簿を理していた。関係が良くなったわけではない。
「教は続けるんですか」
「に回だけ。本は昔のものを使います。子どもには、私の線をまねしすぎないように言いました」
文子は自分のを見た。
「事故のは、正しい線を教えるのが仕事だとっていました。今は、自分のでける線を見つける方が難しいとりました」
蓮は何と答えるべきか迷った。治ってよかったと言えば、治っていない部分を消してしまう。成したと言えば、けがにを与えてしまう。
「失ったものを、なかったことにはできません」
「そうですね」
「僕も、事故があってよかったとはいません」
文子はうなずいた。
「それでいいんです」
展示へ斗と母親が入ってきた。斗は以より背が伸び、黄い自転ではなく徒歩だった。蓮を見るとを止めた。
母親がさくをげたが、蓮はづかなかった。文子もに気づき、で招いた。
斗の作品は《止》だった。最の横線がく、の端ぎりぎりまで伸びている。
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「先が、止まるのは逃げることじゃないって言ったから」
斗は作品ので説した。
文子は蓮を見なかった。蓮も、事故の話をしなかった。
帰り際、智也が廊まで追ってきた。
「母から、あなたに礼を言えと言われました」
「礼を言われることはしていません」
「僕もそういます」
智也は正直だった。
「ただ、会社から届いた全対策の報告は読みました。事故が母の注だけで終わらなかったことは、よかったとっています」
「成瀬さんが、くつ理由を話してくださったからです」
「あなたを許したわけではありません」
「はい」
「でも、辞めろと言いにまでったことは、やりすぎでした」
謝罪というより、事実の訂正にかった。蓮にはそれで分だった。
「僕も、最初は子どもがびしたことだけ証できれば、自分は元に戻れるとっていました。成瀬さんののことを、結果としてしか見ていなかったといます」
は握をしなかった。智也は受付へ戻り、蓮は階段をりた。
ではがり始めていた。文化センターの留所には、ほどが並んでいる。やって来たバスは蓮の会社の両で、同僚が運転していた。
蓮は最に乗り、文子の案内状を鞄へしまった。
内放送が流れた。
《発します。おちのお客さまは、すりにつかまってください》
以と同じ言葉だったが、続きが増えていた。
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《おりの際は、してからおちください。扉は全を確認してから閉いたします》
たった文で、すべての転倒を防げるわけではない。それでも文子が話したことは、誰かの次の乗へ残っていた。
、蓮は運転士を続けていた。
無事故表彰には選ばれなかった。戒告の記録は定期、事資料に残る。事故以の経歴へ完全に戻ることはない。
その代わり、蓮は研修の補助をに回担当するようになった。教壇にって派な話をするのではなく、実際の映像を見ながら、危険認と乗客保護がぶつかる面をと検討した。
「この、正解は何ですか」
によく聞かれる。
蓮はつの答えを示さない。速度、距、位客、続、歩のき。何が見えていて、何を見落としたかを緒に分ける。
「事故のあとなら、正解はいくらでも作れます。でも運転に使えるのは、もっとで危険をさくする習慣です」
それは父のノートから借りた言葉だった。ただし、父が完璧な運転だったという話はしない。荷崩れを起こし、仕事をされ、それでも戻っただったと伝える。
結は専学を卒業し、方の映像制作会社へ就職した。をる夜、父の腕計を蓮へ返した。
「もう、お父さんに見張ってもらわなくても運転できるでしょ」
蓮は笑い、計を引きしへしまった。翌朝から、自分で買ったいデジタル計を使った。
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