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"子どもを救って、僕は処分された" 第10話

片桐は全研修で、軽微事案の分類方法を作っていた。蓮とは今も見がわない。片桐は報告項目を減らして現負担を軽くしたいと言い、蓮は所と帯の記録を残すべきだと主張した。

は会議のたびに争ったが、片桐はもう「皆のために黙れ」とは言わなかった。蓮も、片桐を卑怯な管理職とだけは見なくなった。

文子の教回のまま続いている。は湯みを持てるまで回復したが、は難しい。賀状には毎文字だけかれて届いた。

最初のは《途》、次のは《歩》だった。

智也から連絡が来ることはない。斗の庭についても、蓮は何もらない。らないままでいいことがあると、事故のあとに覚えた。

あるの夕方、蓮は事故線の便を運転していた。交差点は改修され、留所はメートルへ移った。歩の角にはい柵が設置され、自転がそのままにくくなっている。

がりで、面がっていた。

留所から文子が乗ってきた。蓮がこの便を担当しているとはらなかったらしく、運転席を見て瞬止まった。

ろには乗客が並んでいる。文子は何も言わず、交通系カードを触れさせ、方の優先席へ座った。

蓮も通常どおり発案内をした。

つ目の留所がづき、ボタンが鳴った。

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ミラーを見ると、文子は座ったままだった。以ならたなければだったが、バスが止まるのを待っている。

蓮は交差点でアクセルを戻した。の歩に配達用の自転方には乗用。信号は青だったが、速度をキロまで落とした。

何もさなかった。

事故のあと、蓮は々、危険を予測して減速したのに何も起きなかった瞬を数えるようになった。乗客は気づかない。会社の記録にも残らない。全とは、くの、起きなかったことだからだ。

留所へ完全に止まり、扉をけた。

文子はすりを持ち、ゆっくりがった。りる、運転席の横でを止めた。

「今は、急がなくてもろしてくれましたね」

「はい。全を確認しました」

文子はうなずいた。

「あのも、あなたは全を確認したつもりだったんでしょう」

蓮はし迷い、答えた。

「つもりでは、りませんでした」

「今もりないはありますか」

「あるといます。だから、りないかもしれないとって運転しています」

文子はそれ以何も言わず、バスをりた。

許したとも、許さないとも言わなかった。

扉を閉めるに、蓮は文子が歩の内側へ入ったことを確認した。づいていたが、焦らなかった。

内には、仕事帰りの会社員、塾へ、眠っている幼児を抱いた父親がいた。

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それぞれに、蓮のらないがある。目へ着いたあとも続く暮らしがある。

蓮は発した。

事故の、運転とは決められたどおりにる仕事だとっていた。事故の直は、自分の正しさを証することが未来へ戻る唯だとった。

どちらも違った。

運転は、正しさだけではを守れない。謝ればすべてが戻るわけでもなく、責任を認めることと、誰かの罪にして終わらせることも同じではない。

蓮はをひかなかった。

に、文子のを傷つけた。

会社はく結論をそうとした。

に、遅れてでも仕組みを変えた。

片桐は蓮へ利なした。

に、自分の過を認め、記録へ残した。

つの来事には、きれいに分けられない事実がなっている。それを無理に善悪の列へ並べれば、見えなくなる危険がある。

次の留所を告げる放送が流れた。

の乗客がボタンを押し、別の乗客が鞄を持ち直した。蓮はミラーで内を確認し、方へ線を戻す。

の先で、ボールがつ転がった。

蓮はすぐにアクセルからした。ボールを追う子どもはまだ見えない。ろの乗客は、速度がし落ちたことにも気づかなかった。

数秒、植え込みのから女の子が現れ、歩の端で止まった。母親が追いつき、その肩を抱いた。

何も起きなかった。

蓮は静かに交差点を通過した。

誰にもられない度の減速が、誰かの帰宅を守ったかもしれない。確かめる方法はない。それでも、確かめられないから無なのではなかった。

バスは夕方の町をんでいく。

蓮はもう、事故のの運転士へ戻りたいとはわなかった。

戻れないからではない。

あのまでの自分が見ていなかったものを、今は見ようとしているからだった。

次の留所まで、あと百メートル。

蓮は急がず、遅れをごまかさず、目のった。

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