"靴磨きの少年と会長の時計" 第4話
「違います。これは個なメモのためで」
「禁止事項を破った事実は変わらない」
健はそので会議を止し、交渉資料をすべて回収させた。の調査で、担当者が競会社と接触していたことも判した。
蓮が気づかなければ、買収価格も事業計画も部へ流れていた能性がある。
「あのは何者だ」
会議をた役員たちの態度は変わった。骨に見す者は減り、代わりに警戒する者が増えた。
健は皆ので蓮に礼を言った。
「おのおかげで損失を防げた。よくやった」
その言葉は蓮を守る盾になった方で、誰かにとってはできないものだった。
夕方、警備の岸が蓮の机を訪れた。
「随分と活躍しているそうだな」
「仕事をしただけです」
「がいいからって、何でも聞いていいわけじゃない。会社には、らない方が幸せなこともある」
「僕は会から頼まれた音しか聞いていません」
岸はく笑い、机の端に置かれた靴箱を指で叩いた。
「それ、毎持ち歩いているな。事なものでも入っているのか」
「仕事具です」
「会社へ入りするなら、いずれ検査が必になる」
岸がった、蓮は靴箱を膝のへ移した。会の計から取りした送信は鑑定にしている。だが発見の写真、受領の写し、音の特徴をいたノートは箱の底に入れてあった。
広告
それを岸がっているとはえない。それでも、靴箱へ向けた線が妙に気になった。
仕事を終えて施設へ戻ると、蓮宛ての封筒が届いていた。差はない。
には数枚の類が入っていた。
5歳で母親と別れた記録。里親委託が3度解除された経緯。学で聴覚過敏をからかわれ、問題を起こしたとする古い報告。
本来なら、児童相談所と施設の限られた職員しか見られない記録だった。
最のに、赤い文字で1だけ印刷されていた。
『4度目に捨てられたくなければ、会のそばから消えろ』
第4話 会特別補佐の正体
蓮は脅迫状を健に見せなかった。
見せれば、会は自分を守るために仕事からすかもしれない。それこそ相の狙いだとった。
代わりに封筒へ触れた職員を確認し、届いた刻を記録した。施設の野寺にも原本を保管してもらい、自分は写真だけをスマートフォンへ残した。
「警察へ相談した方がいい」
野寺は配したが、蓮は首を横に振った。
「もうし待ってください。会の件とつながっている証拠がありません」
「だが、個記録まで漏れている。相は君の居所をっているんだぞ」
「だからこそ、今逃げたら終わりです」
翌朝も、蓮は普段どおり本社へ向かった。
いつものに入館証をかざしたが、ゲートは赤いを点滅させた。
広告
もう度試しても同じだった。
受付係が端末を確認し、急に表をくした。
「佐藤さん、こちらでお待ちください」
警備員が2づいてきた。そのろには岸がいる。
「入館権限は今朝6に止した」
「理由を教えてください」
「これから説がある。靴箱とスマートフォンを預けろ」
「会の許を確認してください」
「会は今から検査入院だ。連絡は取れない」
蓮は初めてそれをった。昨まで健は何も言っていなかった。
「急に決まったんですか」
岸は答えず、警備員へ顎をしゃくった。
靴箱を渡すことだけは拒んだ。すると岸は蓮の体検査を命じ、スマートフォンと入館証だけを取りげた。靴箱は会議の入で預かるという条件で、ようやく入館を認めた。
連れてかれたのは、コンプライアンス委員会が使用する会議だった。
いテーブルには浩、法務責任者、事担当役員、監査役など12が座っていた。真理子も末席にいたが、蓮と目をわせようとしない。
浩が穏やかな声で切りした。
「佐藤君。君にはな報漏洩の疑いがかかっている」
「僕がですか」
「昨夜2318分、君の入館証で資料管理へ入った記録がある。今朝、君に割り当てたロッカーから、買収計画を保したUSBメモリーも見つかった」
岸が透な袋をテーブルへ置いた。
には、蓮が見たこともないのUSBメモリーが入っていた。
「昨夜は施設にいました。23には消灯確認があります。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
車いすの恋人に請求された三万三千円の「迷惑料」
交通事故で車いす生活となった恋人・明菜と、もう一度穏やかな日常を取り戻そうとしていた聡。明菜の誕生日、二人は思い出のフレンチレストランを訪れる。しかし待っていたのは、食事時間の一方的な短縮と、三万三千円もの「迷惑料」だった。因果応報|人生逆転|真相|修羅場2.8万字5 851 -
完結第20話
四十九日の絶縁
夫を突然亡くした三十七歳の裕子。悲しみに暮れる間もなく迎えた四十九日法要の日、帰宅した彼女を待っていたのは、ゴミ捨て場に放り出された自分の荷物だった。「息子が死んだら嫁は赤の他人よ!」そう言い放つ姑は、さらに幼い二人の子供まで裕子から引き離そうとする。だが、姑が三歳の息子だけを異常に可愛がる裏には、恐ろしい計画が隠されていた。子供たちを守るため、裕子は静かに反撃の準備を始める。そして数か月後、助けを求めて電話してきた姑に、裕子が告げた言葉とは――。人生逆転|裡切られた|嫁姑|夫婦|相続|裡の顔|介護2.3万字5 178 -
完結第13話
俺を睨む「氷の女」が、双子の前で笑った日
妹を事故で亡くし、遺された六歳の双子を男手一つで育てる伊吹公平。仕事と育児に追われる毎日の中、彼が最も苦手としていたのは、職場で「氷の女」と恐れられる経理主任・桐谷エリカだった。ところがある日、保育園へ迎えに行った公平は、娘たちに囲まれて優しく微笑むエリカの姿を目撃する。しかも、誰にも甘えようとしなかった内気な妹・りこが、彼女の服を握って離さない。冷たい視線の裏に隠されていた意外な素顔。そして、少しずつ変わり始める三人の暮らし。孤独を抱えた大人たちと、小さな双子が紡ぐ、温かな家族の物語。人生逆転|兄弟姉妹|裡の顔|親子関係|金銭問題1.9万字5 109 -
完結第18話
離婚翌日に6億円当選、実家で弟に「居場所はない」と拒絶された私
十五年間の結婚生活を終え、四十二歳で一人になった沙耶。途方に暮れていた彼女に、突然、六億円を超える宝くじの当選という奇跡が訪れる。両親を助け、人生をやり直そうと実家へ帰った沙耶だったが、弟の健太は「この家に姉ちゃんの居場所はない」と冷たく言い放った。理由も分からず傷つく沙耶。しかし、弟夫婦が十二年間背負ってきた現実を知り、彼女の考えは大きく揺らぎ始める。さらに当選を打ち明けた夜、健太が突きつけた一言が、家族の隠してきた本音を浮かび上がらせる。六億円があっても取り戻せないものとは――。人生逆転|兄弟姉妹|親子関係|金銭問題1.8万字5 201 -
完結第10話
泥の作業着と誇り
高校卒業から十七年ぶりの同窓会。咲は、夫が農家だと話した途端、華やかな暮らしを自慢する同級生のレナから大勢の前で笑いものにされてしまう。「泥だらけの旦那なんて恥ずかしくないの?」心ない言葉に傷つきながらも、咲は「世界一自慢の夫よ」と言い返した。やがて、仕事帰りの夫・大地が泥のついた作業着で迎えに現れると、再び嘲笑が巻き起こる。しかし次の瞬間、幹事の西村が顔色を変え、夫に向かって深々と頭を下げた。誰も知らなかった大地の本当の姿が、少しずつ明らかになっていく。人生逆転|夫婦|真相|第二の人生|修羅場1.7万字5 544 -
完結第23話
昭和53年、満員の始発を止めた運転手――その後、坂道で起きた悲劇
昭和53年7月30日。沖縄の交通が右側通行から左側通行へ切り替わった朝、55歳のバス運転手・新垣清徳は、32人の乗客を前に始発の発車を拒んだ。用意された旧型バスは、乗降口が車道側に開く危険な車両だったのだ。しかし欠便を恐れる主任は、若い運転手にその車を出すよう命じてしまう。やがて坂下から届いたのは、一人の少年が負傷したという知らせ。なぜ危険だと分かっていたバスが走ったのか。清徳は息子や同僚たちとともに、事故の責任と、誰も気づかなかった道路の危険に向き合っていく。職場逆転|時代|歴史|昭和|裡の顔3.0万字5 262 -
完結第10話
亡霊の専属運転手
かつて海外の特殊部隊で「ファントム」と恐れられた神代美央は、戦場を離れ、平穏な人生を求めて大企業の会長専属運転手に応募した。しかし最終面接で待っていたのは、「女に会長を守れるわけがない」と嘲笑する副社長と、十一人の屈強な男たち。美央だけが、彼らのスーツの下に隠された拳銃に気づいていた。やがて現れた鷹司会長は、美央の履歴書を見た途端、激しく震え始める。職場逆転|真実|真相|第二の人生1.5万字5 203 -
完結第20話
消された十六番目の席
六十二歳の高田かず子は、亡き夫と二人で建てた家で、息子夫婦と暮らしていた。家事も生活費も負担し、家の中で自分の居場所を失いながらも、家族のために我慢を重ねてきた。ところが正月、十五人の親戚をもてなした末に、息子から「母さんの席はないから留守番で」と告げられる。嫁には「身内だけで楽しみたい」と笑われ、帰宅後の布団の準備まで押し付けられた。そんなかず子に、老舗寿司屋の大将から一本の電話が入る。因果応報|人生逆転|裡切られた|夫婦|親不孝|親子関係|修羅場2.6万字5 819 -
完結第20話
花嫁のいない結婚式
結婚式を翌日に控えた長谷川由衣は、胃痛を訴える婚約者・黒田瞬のために、心を込めて雑炊を作っていた。ところが彼の部屋の前で耳にしたのは、「あいつはただの身代わりだ」という残酷な本音。三年間の愛情も、婚約指輪も、純白のドレスも、すべて元婚約者の代わりだったと知った由衣は、誰にも告げず空港へ向かう。翌朝、二百人の招待客が待つ式場に花嫁は現れなかった。人生逆転|真実|裡の顔|第二の人生|修羅場2.9万字5 613 -
完結第23話
孫に「ここに居たければ黙れ」と言われた私が、翌朝家を出た理由
七十二歳の幸子は、亡き夫と建てた家で息子夫婦と孫の蓮斗と暮らしていた。学費も生活費も援助し、家事まで引き受けてきたのに、いつしか家族から「居候」のように扱われるようになる。ある夜、孫に胸ぐらをつかまれても、息子は助けてくれなかった。翌朝、幸子は弁当も朝食も作らず、黙って家を出る。しかし家族はまだ知らなかった。人生逆転|祖父母と孫|第二の人生|ATM扱い|絶縁3.1万字5 1184