"3万円を払った元タクシー運転手" 第4話
料相をらない齢者や旅客。
病院帰りで体調の悪い。
夜でろされたくない女性。
そういう反論しにくい相を選んでいるのだとしたら、私が黙れば蛭田はまた次の客を探すだけだ。
結子はしばらく考えてから、「会社に言う?」と尋ねた。
「まずはね」
「もし会社までグルだったら?」
その能性も、私は考えていた。
そこでいしたがいた。
き夫・邦夫の元同僚で、今もタクシー業界に関わっている真鍋隆之だった。
68歳になった真鍋は、現は業界団体の相談業務にも携わっており、域のタクシー会社の事にも詳しい。夫の回忌以来会っていなかったが、邦夫が最も信頼していた輩のだった。
私は話帳から真鍋の番号を探した。
計を見ると、午8をし過ぎている。
迷惑なではないだろう。
発信ボタンを押す直、私は仏へ目をやった。
邦夫の遺が、いつもの穏やかな表でこちらを見ていた。
「お父さん。あなたの輩、し借りるわね」
そう言って、私は話をかけた。
「笠原さんの奥さんですか。ご無汰しています」
話から聞こえた真鍋の声は、昔とほとんど変わっていなかった。事があると伝えると、彼は途でを挟まず、私が最まで話し終えるのを待った。
ところが《宮坂交通》という会社名を伝えた瞬、声の調子がわずかに変わった。
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「奥さん、その会社で違いないですか?」
「ええ。にもそういてあったし、配の話もそこへかけたわ」
「運転の名は?」
「蛭田誠さん」
数秒、沈黙があった。
「っている?」
私が尋ねると、真鍋は慎な調で答えた。
直接親しいわけではないが、宮坂交通については以から料に関する相談が何度か寄せられているという。特に蛭田の名は、曖昧な形ではあるものの、過の相談記録で見た覚えがあるらしい。
「ただね、奥さん。こういうケースは難しいんですよ」
「証拠が残らないから?」
「その通りです」
額な料を払った側が齢者の、数に族へ相談しても、両番号や運転の名を覚えていないことがい。会社側から「聞き違いではないか」「途で待したのではないか」などと説されれば、当事者自も自信をなくしてしまう。
には、族から「なぜそんなを払ったんだ」と責められ、度とにしなくなるもいるという。
「録音は最初から最まで残ってるんですね?」
「ええ。回りを指摘したところから、3万円を渡すところまで」
「両番号も?」
「帳にいたわ」
「乗務員番号は?」
「それも」
真鍋は話の向こうでさく息を吐いた。
「さすがですね」
「何が?」
「邦夫さんがよく言ってたんですよ。子さんは自分より現にいって」
私はわず笑った。
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「そんなこと言ってたの?」
「ええ。特に揉め事が起きたは、になるに証拠を取るだって」
そう言われると、懐かしさで胸の奥がし痛んだ。
邦夫とは同じ会社でりった。私は運転、邦夫は配や運管理を担当しており、結婚も仕事の話で何度も議論した。
私が客との揉め事を持ち帰ると、邦夫は決まって同じことを言った。
「誰が正しいかより、何が残っているかが事だ」
当はたい考え方だとったこともある。
しかし今なら分かる。
事実を守るためには、記録が必なのだ。
「奥さん、まず会社へ連絡してみましょう」
真鍋はそう提案した。
最初から政関へ持ち込むより、度会社へ事実確認の会を与えた方がいい。ただし、話した内容と相の対応をすべて残し、会社が適切に調査する姿勢を見せるかどうか確認するという。
「私も同席しましょうか?」
「最初は私だけでいいわ」
「丈夫ですか?」
「話ならね。それに、会社がどう答えるか自分で聞きたいの」
真鍋はし考えてから、「分かりました」と答えた。
話を切る直、彼がぽつりと言った。
「奥さん、これだけは覚えておいてください」
「何?」
「これは恥ずかしい目に遭った客と、態度の悪い運転の喧嘩じゃありません。客がして乗れるという、この仕事の台に関わる話です」
その言葉を聞いた、私は自分がなぜこれほど腹をてているのか、初めてはっきり理解した。
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